※)私が三橋貴明氏に強く影響を受けたきっかけとなったお話を自分なりにまとめてみました。詳細が知りたい方は同氏のブログ・書籍・出演TV番組などをご覧ください。
2017年上半期の報道で多く取り上げられたもので『国の借金』というトピックが挙げられます。以下は2017年2月10日の日本経済新聞の記事です。見出しには『国の借金、過去最高の1066兆円 16年末』と題されています(有料会員記事であるため全文の表示は避けます)。さらに、人口推計(1億2686万人)で単純計算すると国民一人あたり約840万円の借金を抱えていることになる、というように続きます。
この表現に関しては、まったく違和感を感じない人やなぜ身に覚えのない約840万もの借金を抱えなくてはいけないのかと感じる人など様々でしょう。しかし正確にはどちらの反応も不適切です。なぜならば、そもそも前提としてこの表現に誤りがあるからです。
『国の借金』と呼ばれるものの残高の9割は国債です。国債とは、国が発行し国民が買うものです。つまり国が債務者、国民が債権者なのです。ここまでは現段階においても理解している人が多いように思いますが、どういうわけか報道にて『国の借金』のお話が出てくると、「日本は借金まみれ」「日本財政破綻」などのロジックに陥ります。思考の罠であると言わざるを得ません。
そもそも本来の国の借金という言葉は自国が他国からお金を借りている場合に使われるものです。しかい日本の国債保有者比率は大部分が中央銀行と民間銀行によって構成されています。海外保有率はわずか5.5%にすぎません。
加えて、以下の図は主要国の対外純資産額のグラフです。日本は海外における純資産額が世界で一番多いです。つまり世界で一番お金持ちであるといえます。これを先ほどのように国民一人当たりで割ってみると約3,000ドルです(約30万円)。とても借金による財政破綻が起こるとは考えられません。
つまり、日本で言われている『国の借金』とはほとんどが国内保有の国債によるものであるため、返そうと思えば日本銀行が紙幣を増刷することでいつでも返せるということです(とてつもないインフレ率になりますが借金の額自体は変わらないので返済可能)。よく日本の財政状況とギリシアの財政破綻した事例を比較する人がいますが全く違うものであるということです。
さらに日銀による量的金融緩和策として大規模国債買い入れが進んでいるため、構図として政府という親会社の発行した国債(債務)を日銀という子会社が買い取っているということになります。つまり財務的には連結決算により債務は帳消しになります。以下の図の国債発行残高の内、赤い枠が日銀保有の国債残高、青い枠が日銀以外保有(返済すべき)の国債残高となります。アベノミクス大規模な金融緩和の始まった2012年から返済すべき国債残高が減少していることになります。
以上により『国の借金』という表現が誤ったロジックであると理解していただけたかと思います。しかしTV放送を見る機会が多く、選挙に関心のつよい、財務トピックに敏感な人口比率の多い高齢者層は扇動的な『国の借金』という報道に誤った社会情勢観を植え付けられてしまいます。するとデフレであるにもかかわらず消費税増税をするべきだという方向に進んでしまいます。
少子高齢化である以上若者より高齢者の方が選挙で力を持つことは必然ですが、若者も高齢者も将来を見据えた経済成長のできる選挙選択ができることを祈ります。
ご読了ありがとうございました。
若干政治思想の出る内容になってしまいました。不快に思われた方すみません。