大阪へ行った息子は、取り敢えず住居と仕事を探した。

 

やりたかった仕事とは程遠い配送の仕事。

 

大阪へ行って半年後の昨年の7月、消え入りそうな声で電話が来た。

「もう…どうしていいか分からない…」

 

話を聞くと、やりたい仕事があって大阪へ来たはずなのに

今の仕事が忙し過ぎて就活する時間も元気もない…と。

今の仕事も無断欠勤してると。

 

病んでるな…とすごく心配になった。

 

無断欠勤は何の解決にもならないから

ちゃんと対応するように伝えた。

 

「分かった。新潟に帰ろうかな…」

 

私はそれが本心だとその時は思わなかった。

 

本当は大阪で希望の職に就きたいはずと思っていたから。

息子の夢を諦めさせたくないと思った。

 

「このまま帰って来て本当にいいの?

ダメ元と思っていくつか応募してみたら?

お母さん、応援してるから」と言った。

 

今となってはそう言ったことを死ぬほど後悔している。

 

「帰ろうかな…」は「帰りたい!」という

息子の本心だったんだと今は思う。

 

それに今帰ってきたら、夫に「やっぱりダメだったじゃないか」

と罵られるに決まってる…と思ってしまった。

 

あんな罵声は息子に浴びさせたくない。

 

夫が大反対している分、何があっても私だけは

息子の夢を応援してあげなくては…と思っていた。

 

そんな私を気遣って、本当は帰って来たかったのに

帰りたい!と言えなかったんじゃないか…

 

どうして気付いてあげられなかったんだろう?

あれは息子からのサインだったのに。

 

あの時、一言「帰っておいで」と言っていたら

息子は自死を選ばずに済んだかもしれない。