「認知症の人」という言い方に私は違和感を感じます。


例えば、街中や電車の中で松葉杖をついて歩いている人や腕にギブスをはめている人を見て「あ、骨折の人だ」と思うでしょうか?


たいてい「あの人、骨折してるのかな」と“人”が先にくるはずです。


病院の待合室で咳をしながら辛そうな人を見て「あ、風邪の人だ」とか「インフルエンザの人だ」と思うでしょうか?


普通は「あの人、風邪なのかな」とか「あの人、インフルエンザなのかな」と、人が先にくるはずです。


ところが、認知症となると“認知症”が“人”よりも先にくるのはなぜでしょうか?


それは認知症に対する少なからず心のどこかにある先入観や偏見といった潜在意識の表れなのだと思います。


認知症になると何もできない、認知症になったら人生おしまい、まだまだそんなイメージが社会の根底にある感は否めません。


介護の考え方の一つにパーソンセンタードケアという考え方があります。


簡単に言えば、目の前にいる人が抱えている疾病や障害に焦点をあてるのではなく、その人に焦点をあててケアをしましょうという考え方です。


認知症介護でも認知症ではなく、その人に焦点をあて、その人がやりたいことやできること、望むことを探り、その人らしい生活や生き方を最期の最期まで実現できるよう支えていく、それこそが認知症介護に携わるすべての人が目指すべき理想像だと思います。