この土日は連休ですが今日はヒカゲノカズラの小群落へ。


その小群落では美しいヒカゲノカズラに出会えました。



すっかり山吹色の針葉を落としたカラマツ越しでも駒ケ岳なら絵になりますね。



さて、ヒカゲノカズラ(日陰葛、日影葛)です。



ヒカゲノカズラは種子ではなく胞子で増えるシダ植物で山地などの明るい林床に生える多年生の常緑草本ですが主茎を軸に左右交互に枝分かれし、長さ約5ミリくらいの小葉が密生します。


最大の特徴は何と言っても地面を長く這う姿でその長さは150センチくらいになるものもあり、茎を伸ばしながら所々で根を下ろしていきます。



また胞子嚢穂(ほうしのうすい)から出た胞子は地中で発芽して葉緑素を欠く配合体となりますが自ら光合成が出来ないので養分は共生する菌類から供給されることが研究により明らかにされ、さらにその配合体が受精に必要となる器官へと成熟するまでに約10年前後かかると言われています。



ところでヒカゲノカズラの祖先は今から約3億年以上も前に誕生したとも言われ、古事記の天の石屋戸の一節にある「天之日影(あめのひかげ)」とはこのヒカゲノカズラのことを指しています。


天の石屋戸伝説では岩戸にお隠れになったアマテラスが閉じこもったことで世界は暗黒の闇となりますがそれに一計を案じた神々が何とかアマテラスに岩戸から出てもらおうと岩戸の前で騒ぎたて、そこで胸を露わにしながら踊ったのがアメノウズメと書かれています。


そのアメノウズメが胸元にたすきとして懸けていたのがヒカゲノカズラで、そうした言い伝えから全国各地にある神社ではむかしから神事に使われるほどです。



それは神聖であり。


そして若返りの象徴でもあり。



古代から人々は冬枯れしたこんな季節でもみずみずしい緑を保つヒカゲノカズラに神聖な生命力を感じていたのかもしれませんね。



そんなヒカゲノカズラは特に日なたを好み、今日、出かけた小群落も森林限界を越えた明るい場所にありますがその和名の由来が気になるところです。



色んな書物やネットで探してみてもヒカゲノカズラの由来は不明と書かれたものばかりですが日陰葛の文字を充てずに日影葛の文字のみを充てるなら日影の本来の意味合いが太陽の光りや日脚を示したものなので日なたに生じる蔓性植物がその名の由来ではないでしょうか?


古事記の中でもアマテラスが岩戸から出てきたことでふたたび光りを取り戻したこの世界。


そこにはヒカゲノカズラの存在も書かれてますがそもそも「ヒカゲ」という音から考えればどうしても物体の陰になって出来る暗がりの日陰を想像してしまいがちです。


日陰と日影では読みは同じでも意味合いがまるで正反対ということになりますね。



こちらはスギを思わせるようなヒカゲノカズラのアップ。


見た目はチクチクして痛そうですが実際に触れてみるとやわらかい印象があります。



そしてこちらは七支刀のような?ヒカゲノカズラです。



今日はこの小群落でどのヒカゲノカズラを撮ろうか迷うほどたくさん出会えました。