いつだったか、母親と長距離ドライブをした時の事。
カーステでスピッツを聞いたらさりげなくボリュームを下げたのに、
電気グルーヴを掛けるとこれまたさりげなくボリュームを上げやがった。
いつだったか、たまたま部屋で石野卓球の「ポリネイジア」のビデオを
見ていると、母が何かの用事でやって来た。部屋を出て行く時、振り返り
ざまに「この音楽聞いてるとハワイで見たファイヤーダンス思い出して
なんだかお母さん踊りたくなっちゃうわ」と笑った。
いつだったか、実家の地下室でレコードをいじっていると、おもむろに
掃除にやって来た母。それまで無表情に片付けをしていた母が、レッド
プラネットの「ファイヤーキーパー」を掛けた途端に手を止め、
「お母さん、これは好きだわ」と言って頷いた。
クラブに行くときは決まって「今日もコンサートかい?」という。
微妙に間違えている。「滅多に日本に来ない人なの」と言ってみると、
「あらそう。楽しんでおいで」と、おそらく何も分っちゃいないがとりあえず
快く送り出してくれる。
これが私を産んだ母である。
ちなみに普段は舟木和夫を愛聴している。