自分が応援している東京ヤクルトスワローズを運営している、ヤクルト球団の2021年度(第73期)決算が公表された。2021年度は、当期純利益が3億2259万円となり、2年ぶりの黒字となった。


自分はヤクルト球団の決算に対し、ツイッター(@tokyoyuujin)で以下のツイートをした。



ヤクルト球団は、球団経営に参画してから赤字決算が続いていた。前身の国鉄、サンケイ(産業経済新聞社)が運営していた時期も赤字決算だった。かつては、年間で30億円以上の赤字とも報じられていた。



だが、2019年(第71期)決算で、ヤクルト球団は初の黒字決算を実現した。観客動員数は195万5578人で、1試合平均の観客動員数が2万7937人だった、神宮球場の満員時の約9割に達したことが大きな要因だろう。



しかし、コロナ禍となった2020年の観客動員数は36万593人で、前年比で8割以上も激減。1試合観客動員数は7839人に止まった。その結果、2020年(第72期)決算は、再び赤字決算となった。



コロナ禍の長期化に伴い、2021年は観客動員数は増加したものの、観客定員数の5割減が要求された。年間観客動員数は67万5258人で、2020年比では9割程度増加したが、実数値を採用後では最多動員数を記録した2019年比では7割程度少ない。



だが、ヤクルト球団は2021年度(第73期)決算で、2年ぶりの黒字決算を成し遂げた。個人的には贔屓チームの運営主体が黒字となった喜びはあるが、それ以上にNPBではコロナ禍の球団運営が理想と乖離しているという複雑な思いを抱いた。



ヤクルト球団の2021年(第73期)決算が黒字決算となったのは、皮肉にもコロナ禍の状況がプラスに働いた故だと思う。



球団運営の理想として、球団と球場の一体運営が挙げられる。球団の入場料収入に加え、球場に掲出される広告や飲食関連の収益も得ることで、利益の最大化が可能となるアプローチである。昨年東京ドームのTOBが成立したことで、NPBでは11球団が球団と球場の一体運営を可能とする体制にシフトした。言い方を変えれば、NPBの11球団が自前の球場を保有している。



自前の球場がないのは、明治神宮から神宮球場を借りているヤクルト球団(東京ヤクルトスワローズ)のみである。この状況は、ヤクルト球団が神宮球場の収益を全額得ることができない為、本来であれば球団経営のあるべき姿という意味では良い状況とは言い難い。



だが、コロナ禍の長期化により、球団運営の理想とされた球団と球場の一体運営が、皮肉にも収益を悪化させる状況となっている。観客数が減り、飲食関連の収益も大幅に減少。球場の整備スタッフの人件費なども発生する。その結果として、コロナ禍では球場の運営が経営の足枷となる。過去記事に記したが、日本経済新聞の報道によれば福岡ソフトバンク球団は、2020年に1日あたり数千万円単位の経費が発生していると報じられていた。



ヤクルト球団は、球場運営に携わっていない為、球場運営費などが発生しない。球団と球場の一体運営を行なっていないことが、コロナ禍においてはリスクヘッジ(リスクを分散)する形となり、球場運営で発生する筈の赤字額を背負わずに済んだ。



2021年は前年比で観客動員数が9割程度増加したことに加え、20年ぶりのリーグ優勝を果たしたことで、1試合あたり1億円から2億円程度の収益を期待できる神宮球場でのCS(クライマックスシリーズ)主催試合を3試合開催できた。そして、日本シリーズは東京ドームで代替開催したことにより、NPBのシリーズ収益に貢献し、日本一を達成したことによる分配金なども計上できた。チケット料金の値上げ、リーグ優勝及び日本一のグッズ販売などもプラス要因となったのではないだろうか。



ヤクルト球団の決算発表を受け、個人的には1試合あたりの平均観客動員数が1万人以下でも、リーグ優勝・日本一となることで、黒字決算が可能となることは興味深いものである。



そして、球団運営の理想とされる球団と球場の一体運営を実現できていないヤクルト球団が、黒字化を達成したことを通じて、(一時的な要因かもしれないが)コロナ禍により運営のあり方が変わってしまったことも感じられ、複雑な思いも抱いている。