昨年末にBSで「鳥谷敬×青木宣親 同級生 初めて本音で話しました」と題された番組が放送された。スワローズファン、タイガースファンを中心に、プロ野球ファンで見た向きも多いのではないだろうか。


両選手が早稲田大学の同級生であることは有名だが、個人的には両選手が互いの印象を語っている報道を殆ど目にしたことがなかった。その為、同番組を興味深く観た次第である。



個人的に最初に思い浮かんだ点として、番組タイトルに対する「違和感」が挙げられる。


それは「鳥谷敬×青木宣親」という部分である。


名字の50音順であれば、「青木宣親×鳥谷敬」でもおかしくない筈である。更に記せば、番組内でも紹介されていた通り、プロ入り後の成績は首位打者3回、年間200安打を2回達成した青木選手の方が上回っている。


たかが番組名とは言えども、芸能事務所などでは拘る向きもある。基本的には前に出る名前、先に出る名前が格上的な印象を与えるからである。


都銀メガバンクである三井住友銀行は、国内では三井の名を先にしているものの、英語ではSumitomo Mitsuiと表記しており、住友主導である旨を示唆している。日韓共催のサッカーワールドカップも、アルファベット順ならJapan Koreaとなるものを韓国の強い要求に応える形でKorea Japanとしたこともある。



今回の番組名の決定にあたり、プロデューサーが当初からこのタイトルに決めていたのか、阪神球団or鳥谷選手から水面下で要望があったのかは定かではない。だが、個人的にはこの点に興味を持った。そして、番組内容も大リーグ挑戦までは、鳥谷選手の次に青木選手を取り上げるという流れが続いた。


個人的にはこの番組を観て、両選手の違いが浮き彫りになったように感じられた。


青木選手は、鳥谷選手も語っていたように自己中心的な部分があるのかもしれないが、それ故に自らが興味を持つものには深く追求する傾向があるように感じられた。これは、スワローズファンとして、ある程度は想像した通りである。打撃には高い関心があれども、守備に対してはそこまでではないといった点は、スワローズ在籍中から高田繁元監督らに指摘されていた。


鳥谷選手は、誇り高き優等生というイメージに加え、自らを客観視できる視点があるという印象である。大学に入るまで、家では自主練をしないまま、大学入学後からレギュラーに定着して、東京六大学野球で三冠王を獲得するのだからセンスの塊である。



そして、両選手の相手に対する印象、性格の一面も感じられるシーンがあった。


鳥谷選手は、ドラフトの目玉として去就が注目される中、タイガースを逆指名して入団した。その年のナンバーワン選手という評価だった。



青木選手はスワローズの4位指名だったが、ドラフトの時には一般に知られているとは言い難い選手だった。


鳥谷選手はルーキーイヤーから、遊撃手のレギュラーとして順風満帆なプロ生活が始まった印象がある。


青木選手のルーキーイヤーは、個人的には打撃が非力な印象を受けた。だが、2年目からは一変して、セ・リーグ初の年間200安打を達成するなど、同期の中では鳥谷選手を上回るだけではなく、抜きん出た安打数を叩き出す選手となった。


今回の番組を観ていて、学生時代からの関係というものは余り変わらないものかもしれないと感じられた。


プロ入り後は、鳥谷選手を上回る結果を残しているにも関わらず、青木選手は鳥谷選手の存在を強く意識していたことを語っていた。鳥谷選手の動画までチェックすると言ったのは稀なケースかもしれないが、鳥谷選手の打撃成績などもチェックしていたのは、個人的には驚きだった。大学時代の鳥谷選手はドラフトの目玉選手とも称されていたのだから、青木選手にとっては一番近くにいる目標だったのかもしれない。


他方、鳥谷選手は青木選手程には相手を意識してはいなかったのかもしれない。だが、青木選手の秀でた部分に気付いていたというのは、個人的には興味深い見立てだった。そして、青木選手が2年目に大ブレイクして首位打者や盗塁王という結果を出す中で、鳥谷選手は攻走守トータルプレイヤーとしてスキルアップしていこうと意識するようになったのであれば、青木選手の存在が鳥谷選手のプレースタイルに少なからず影響を及ぼしていたのかもしれないとも感じられた。


大リーグ挑戦の項では、両選手の違いが際立ったように感じられた。青木選手は夢に対してチャレンジする資質があり、鳥谷選手は夢はあれども、夢の成就と現実との兼ね合いを考えて進路を決めた感がある。上記に記した両選手の違いが、この項では顕になった。


スワローズファンの1人としては、青木選手が語っていた2010年から2011年にかけての気持ちの在り方に興味が惹かれた。


当時は青木選手は打撃では結果を出せども、監督からは守備に対する姿勢を指摘され、一部のスワローズファンからは青木選手がいるからチームが勝てないといった意見も聞かれた時期である。高田監督、宮本選手との関係も微妙とされ、青木選手なりに色々思うところがあったのだろう。


青木選手からは、NPB復帰の可能性はあるという一方で、3年程度はMLBでプレーしたいという思いが発せられた。


 ヤクルト球団、スワローズファンにとっては、青木選手の復帰を期待する部分もあるのかもしれないが、青木選手にとっては現在のスワローズに復帰する理由を見出せないだろう。個人的には番組内で率直な思いを語ったように思う。


今回「同級生 初めて本音で話しました」と題されたように、メディアを介して両選手で対談するといったシーンは、これまでなかった。今後も余りあるようには思えない。今回の番組を通じて、両選手が「同志」である一方、両選手の違いも強く感じられたからである。

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