トロとパズル 二次創作
『天つ空 夢追人』
♯5想い出のソラ色
井戸を直したお礼にソラが飲み物をご馳走してくれると言うのだ。
お言葉に甘えようとソラの後をついていくトロとボク。
「天つ空町の名物屋台なのじャ。でもしばらく使ってないから汚れてるのじャ……」
「キレイにしよう」
「キレイにするのニャ~」
リペアのスキルを使ってきれいにする。
まぁ、こうなることはわかっていたような。
まぁ、それはおいといて。
「おー、まるで昔みたいにピカピカなのじャ~」
電飾が灯され、「天」という暖簾と赤いテーブルクロスが特徴的な名物屋台。
ふらっと立ち寄って、
店主とその場に居合わせた人たちと談笑したり、愚痴を吐いたり……
そんな楽しくも、しんみりとした光景が脳裏に浮かぶ。
「クロ、ありがとうなのじャ~」
「さぁさぁ、お礼にごちそうするのじャ。ご注文をどうぞなのじャ?」
注文を促され、少し考えた末に出した答え。
「タピオカミルクティー」
流行りの飲み物を飲みたいと思ったから。
そんな好奇心だけの単純な理由。
「わー、トロもタピオカミルクティー飲みたいニャ~」
「おまかせなのじャ~」
トロのリアクションは無邪気で、
それでいてボクをあたたかな気持ちにさせる。
この気持ちは何だろう。
「じャじャーん!天つ空町名物の青いタピオカミルクティーなのじャ、えっへん!」
「わー、青いタピオカミルクティーなんてあるんだニャ~。ソラのカラダと同じ色だニャ」
たしかにソラのカラダと同じ色で、
青い飲み物は珍しい。
「……」
目線を右上に向けて考え込むソラ。
「……昔もこうやって、飼い主のお姉ちゃんと青いタピオカミルクティーを飲んだのじャ」
「お姉ちゃんも「ソラのカラダと同じ色ね」と言ってくれたのじャ、ここは思い出の屋台なのじャ」
「何で忘れていたんじャろ……?」
「おいしいタピオカミルクティーは、思い出を呼び起こしてくれる味なのニャ」
「そっか。そうじャな~。この町にはお姉ちゃんとの大切な思い出がいっぱいあるはずなのじャ」
青いタピオカミルクティーから想起されるソラの大切な思い出。
「いただきます」
それを飲んで想起されるボクの大切な思い出。
……昔は、シロといろいろな場所へ出かけて、めずらしいものを見つけては好奇心だけで……
シロが青いタピオカミルクティーなんて見たら、目をキラキラさせながら飛びついていくに違いない
何でずっととなりにいてくれないのだろう……
人は当たり前を当たり前のように享受し、
当たり前だからと言い訳をする。
時にそれを他人に押しつけたりもする。
置かれた現状の中で
それに惑わされず、
自らを保つために行動する力。
「大丈夫。クロならきっとできるよ」
シロはそう言ってくれるに違いない。
でも……
形が無くても、
人は想い出だけで生きていけるのかな?
「おいしかったよ。ソラ」
「ありがとう」
ここ天つ空町で夢を叶えるためには、時間がかかりそうだ。
飲み終えたボクらは、
ソラがお部屋を貸してくれるというので、
準備ができるまでフルーツ収穫へ向かう。
「そういえばお部屋を借りるときって、手ぶらでいいのかにャ……?」
「大丈夫。なんとかなるよ。トロ」