「親父、冒険に出たいんだ。」

カースが言い出した。

このような事はギルドが活発なこの大陸では当たり前の事。

本当に危ない時はそこら中に冒険者がいて助けてくれるため、簡単な依頼を受けて暮らしていくぶんには怪我をする事はあっても、死ぬ確率は決して高くは無い。

しかし父親、トフィスは

「ダメだ、冒険者なんてろくなもんじゃねぇ。んな事言ってる暇があったら、木でも切って来い。」

「まぁまぁ、親父、落ちつけって。」

アイルーサは話を聞こうともしない親の正面に立ち、こう言った。

「俺もついていくよ。それならいいだろ?」

「…全然よくねぇよ、このドァホ!お前がついていきたいだけだろうが。」

「おいおい、その言い方はねぇだろ。これでも俺は町一番のマテリアル使いなんだぜ?」

(…同じだな、あの時と。)

トフィスは自分が冒険に出た時の事を思い出していた。

住んでいた環境こそ違えど、あの時もこんな感じだった。「あいつ」と俺と親父のやり取りは…

そして自分たちは世界を変えた。そのお陰で人々は平穏を手にすることが出来たのだ、しかし…

だからこそ自分を親だと思っている「あいつ」と、自分の息子を冒険者にはさせたくなかった。

きっとあいつらは世界の命運を握る事になるかもしれない。それが嫌だったのだ。

(…やはり血は争えん、か。)