誕生日を迎えたヒヨコはお祝いにニワトリの毛皮を貰いました。

大人の毛が生えそろってニワトリになるまで毛皮を着て過ごします。

その毛皮は大人の仲間入りの証でもあるためヒヨコは大喜びで毛皮を身に纏いました。
ヒヨコにはまだまだ大きくサイズはブカブカでしたが毛皮を貰ったことが嬉しいヒヨコはそんな事は気にもしませんでした。

誇らしげに街を歩くヒヨコ。
ある日、人混みの中へ行きました。
人が凄く多くて歩くたびに誰かとぶつかりそうになります。
うっかりぶつかってしまい毛皮が何度もはだけました。
上手く着こなしているヒヨコもいます。
身体が自分よりもずっと大きいヒヨコもいました。
はだけた毛皮を笑うニワトリもいれば、気遣ってくれるニワトリもいましたがヒヨコには両方とも何故かわかりませんが腹ただしさと悔しさと恥ずかしさがありました。
その度にヒヨコは早く大きくなりたいなぁと思いました。
胸を張ったり肘を張ったり、大きく歩いたり…色々試しましたが身体はすぐには大きくなりません。
大きくなるのは動作ばかり。

やがて毛皮をもらった日から5年ほど経ち、ヒヨコの体も大きくなり毛皮もなんとか着れるサイズに追いつきました。

だけど5年前はそんな事気にもしなかった袖や裾はまだまだ長くうまく着こなせずに気になるようになります。
ヒヨコはどうしたら上手に着こなせるかを考えました。
ある友人に着こなし方を聞いたり、大人のニワトリに知恵を仰ぎました。

すると自分では思いもつかなかったアイデアや知恵をたくさんもらう事ができました。

それからまた5年。
やっと自分の身体にニワトリになるための産毛が生えてきました。

産毛と毛皮が絡み合って前よりもしっくりきます。

だけどまだ完全じゃないので、急いでいて何かに引っかけたり袖を引っ張られるとはだけてしまう時もあります。

前までと違って自分の毛と一体になっている部分があるため引っかかると痛いので、その度にヒヨコはひっかけないように気をつけて過ごすことを頭におくようになりました。

そしてまた5年。
やっと全身に毛が生え揃いました。
まだ新しい毛なので毛皮がないと寒い時期もあります。
急に毛皮を脱ぐと凄く毛が薄く感じなんだか頼りなく不安に思うこともありました。

毛皮を脱げるという選択肢ができて、はじめてヒヨコは毛皮の重さや役割を知りました。

それから10年。
ツヤツヤだった毛には味がでて身体に馴染んだだけでなく身もしっかりと引き締まりました。
毛も簡単には抜けません。

どこへ行っても誰が見ても立派なニワトリです。
ニワトリになった今、大きくみせる必要はどこにもありません。

今までを振り返ってこれからをどう過ごすか、自分自身を見据えしっかり考えられるようになりました。

そしてニワトリになったヒヨコは毛皮を着たヒヨコに「日が経てばちゃんと身体に馴染むよ」と優しく伝えるのでした。