あらすじ

  源氏は京から須磨へ退去することを決意した。政敵の右大臣

 一派の圧迫が次第に強まり、朧月夜との密会を発見された以上、

 何らかの処分は覚悟しなければならなかった。

 

  藤壺の宮、東宮、舅の前左大臣(さきのさだいじん)、紫の

 上、花散里、朧月夜(尚侍の君ーかんのきみ)などに、密かに

 別れを告げて、三月二十日過ぎ、少数の従者とともに須磨へ下

 って行った。

 

      

 

  こうして、須磨・明石での、およそ一年半のわび住まいが始

 まった。須磨の閑居は、都の華やかな日常とはうって変わり、

 うらさびしい限りである。京に残してきた女性たちとの文通だ

 けが、わずかに傷心の源氏を慰めた。

 

  一方、明石の入道(もと播磨の守。桐壺の更衣のいとこ)は、

 源氏の須磨下向を聞いて、娘明石の君に結婚の好機がめぐって

 きたことを喜んだ。妻(母君)の懸念をよそに、宿願の実現に

 踏み出す。

 

          

  

  翌年の二月、はるばる京から、宰相(頭の中将)が源氏を見舞

 いに訪れた。

 

  三月、海辺で開運のための禊ぎ(みそぎ)を始めると、突然、

 暴風雨となり雷鳴が轟いた。あまりの異常気象に、人々は世の終

 わりかとうろたえた。明け方、源氏は怪しい夢を見た。

 

 

         角川ソフィア文庫ビギナーズクラシックス

                  日本の古典 源氏物語より