あらすじ

  橘の花が咲き、ほととぎすの鳴く五月のこと。

右大臣の圧力が強まり、失意の底にあった源氏だが、心休まる女性が

いないわけではない。

亡き父桐壺院の妃であった麗景殿の女御(れいけいでんのにょうご)

の妹にあたる三の君(花散里と呼ばれる)である。

彼女とは、かつて宮中でかりそめの逢う瀬を重ねた間柄だった。

五月雨の晴れ間、源氏は麗景殿の女御の邸を訪れることにする。

 

 道の途中、中川のあたりで、以前に一度逢ったことのある女の家に

気づく。折から、ほととぎすが鳴き、源氏は歌を届けさせるが、女は

知らんふりをして、迎え入れようとはしなかった。

 

               

 

 女御邸は訪れる人もなく、ひっそりしていたが、女御は気品を失っ

ていない。二人は桐壺院の思い出にふける。その後、源氏は妹花散里

の部屋をさりげなく訪れ、なつかしく語らう。

 

           角川ソフィア文庫ビギナーズクラシックス

                   日本の古典源氏物語より