島崎藤村 初恋
まだあげ初めし前髪の まだあげそめし まえがみの
林檎のもとに見えしとき りんごのもとに みえしとき
前にさしたる花櫛の まえにさしたる はなぐしの
花ある君と思ひけり はなあるきみと おもいけり
やさしく白き手をのべて やさしくしろき てをのべて
林檎をわれにあたへしは りんごをわれに あたえしは
薄紅の秋の実に うすくれないの あきのみに
人こひ初めしはじめなり ひとこいそめし はじめなり
わがこころなきためいきの わがこころなき ためいきの
その髪の毛にかかるとき そのかみのけに かかるとき
たのしき恋の盃を たのしきこいの さかずきを
君が情に酌みしかな きみがなさけに くみしかな
林檎畑の樹の下に りんごばたけの このもとに
おのづからなる細道は おのずからなる ほそみちは
誰が踏みそめしかたみぞと たがふみそめし かたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ といたもうこそ こいしけれ
七五調がたまらない 好きな詩のひとつです
むかし暗記しました
