「こんなにクルクル回れたらいいね」

義母の言葉に振り返ると、そこにはまだ少女だった浅田真央さん

が華麗な演技をして、テレビにうつっていました。

そして義母がいつになく真剣な顔でそれを観ていたのでした。

 

そのころの私は、フィギユアスケートにあまり興味がなかったの

ですが、さすがに ”真央ちゃん” のことは知っていました。

 

 義母はもともと腎臓がわるく、脳疾患で倒れてからは、認知症

も少しづつ進んでいました。

 

身体も心も思うように動かない状態の中で観た”真央ちゃんの姿“

は、かわいさを通り越して、何か特別のものに見えていたのだと

思います。

その時の”真央ちゃん”は、まるで妖精のように可愛らしかったこ

とを記憶しています。 

介護されていた義母にはもう、若いときの強さや厳しさは全く感

じられませんでした。ただただ”かわいいおばあちゃん”になって

いました。

いいのか悪いのか、病気はこんなにも人を変えるのだと思ったも

のです。

 

 今心に浮かんでくるのは、若かったころの厳しい義母でなく、

”真央ちゃん”の演技を観ていた 優しくてかわいい姿です。

 

おかあさん、つたない私を厳しく導いてくださってありがとうご

ざいます!

そして、”少女だった真央ちゃん”、おかあさんと私に勇気と元気

をありがとう!