「あまりの崩落の激しさに、日本のトンネル技術が敗退」

20年ほど前、カーナビはまだ庶民の手に届かないものだった。当時免許取り立てだった私のドライブに欠かせない相棒・マップルに書かれたこの一文に衝撃を受けたのを、今でもよく覚えている。
破砕帯にぶち当ろうが(関電トンネル)、泥火山をぶち抜こうが(鍋立山トンネル)、火山帯をぶち抜いた挙げ句水蒸気爆発を起こそうが(安房トンネル)、籾糠山という字面からして明らかにやばいのがわかる山相手だろうが(飛騨トンネル)、何があってもトンネルを完成させてきた日本の土木技術でも、中央構造線によりグチャグチャになった断層が作る脆い地盤を有する青崩峠には勝てなかったのだ。

この地盤のせいで、長野県から直接静岡県に行くという行為はハードルが高くなっていた。全く行けれないわけではないが、電車でも車でも直接行くにはコンビニどころか家もない細い山道を駆け抜ける覚悟と忍耐力が求められるし、山梨や愛知を経由した方が時間も手間もかからない。

飯田と浜松を繋ぐ三遠南信道は徐々に延伸しているというが、路線計画に含まれている青崩峠をなんとかしない限り全線開通は夢のまた夢、私が生きているうちには無理だろうと思っていた。何せ一度トンネルを作ったものの、再調査でルートから外さざるを得なくなってしまい、一般道に格下げした前科がある(草木トンネル)。
しかし何十年越しに日本のトンネル技術は青崩峠に勝ったため、20年以内に全線開通もワンチャンあるのでは? と思った。
青崩峠トンネルの完成と共用開始は順調に進められたとしても2年くらい先になるだろうが、開通したら走りに行きたい。

余談だが、リニア工事に環境がどうのこうと反対している川勝静岡県知事は、何故同じところを貫いている青崩峠トンネルの工事に対しては何も言わないのだろう。縦だろうが横だろうが、トンネルを作ればそれなりの影響は出るはずなのだが……。