飯田橋ギンレイの今週の映画は、誕生以来まだ60本しか映画が作られていない国・ウルグアイで制作された“ウィスキー”。といっても、ウィスキー、つまり酒にまつわる話では全くありません(私が見るものだから…って先入観を持っちゃだめっす)。主人公ハコボは靴下工場のオーナー。毎朝決まった時間に出勤し、決まった時間に退社する。工場のシャッターをあけるのも、蛍光灯や機械のスイッチを入れる作法もいつも同じ。そこで彼の片腕として働く中年女性マルタは、いつも彼が出勤するのを工場の前で待ち、シャッターが開けられたら上着を着て、ハコボにお茶を入れる。これも同じ順番、同じ作法。これ、もしかしたら1回撮った映像を繰り返してるのでは?と疑いたくもなるぐらい、同じなんですね(残念ながら間違い探しはできませんでしたが…)。ま、こんな二人の同じ毎日の繰り返しに一石を投じ、二人の心に波紋を生じさせたのは…? っていう映画です。


 とにかく、この主人公の二人は、変わり映えのない毎日を(たぶん)延々と過ごしてきたわけで、これからもそれは変わりなく、たぶん死ぬまで続くことが予想される…となれば、なおさらこの二人の抑揚のない表情がやるせない…。しかし、どうしてどうして(ここからは少々ネタバレになりますが)、この無表情に徐々に表情が宿るようになるわけです。一見それは見過ごしがちだけど、たとえば口紅の色が変わるとか、そういう些細な事柄に現れるわけですよ。それがとっても面白かった。あとに残る余韻が何ともいえない映画でした。