小雨。
折り畳み傘を持つようになったのは、大人になった証拠だ。カバンには無駄なものを入れない。
雨は人に文章を書かせる。

最近は電車に乗るのにハマっていて、久しぶりに山手線に乗った。
高田馬場の戸山口でおりてしまい、5年住んだはずの町はもうだいぶ変わっていて、でも古本屋の匂いと秋の匂いが混じって、相当な郷愁を感じるとともに、高田馬場特有の文化の香りが、打ち合わせ前30分、ただただ自分を散歩させました。
かわいい空き家を見つけたり、為替の話を立ち話している変わった奥様とすれ違ったり。


たくさんバイトをした学生時代。
当時もやることに追われていたなあ。
でも暇な日は確かにあって、昼まで寝て、古本屋に行って映画を観て帰って、夜はふらっとご近所集会してビールとウィスキーをよく飲んだ。
掃除した部屋で音楽をかけて雑誌を読んだり。
あの生活がとても懐かしくて、あの時の自分をずっと考えながら歩いた。
彼女は随分いなくて、昔付き合っていた人を忘れられず、その相当な思い込みも愛しつつ、何か世に自分の生きた証を残さねばならないと、息巻いていた。
自分は天才でないことを悟った時期でもあります。
決して恥ずかしい歴史ではない、と言い張る。
全部必要なことだったのだと思って、帰りには油そばを食べた。

通りすがりの早稲田の学生はおしゃれで、コートを着ていた。
当時は自分もものすごく服へのこだわりがあった。
余裕ができたら気分の上がる良い服を買いたいなと、久しぶりに思った。ありがとうおしゃれ学生。

サークルとかコミュニティとか、カタカナばかりに出会ったあの18、19、20歳の頃、確実に僕は人生の帰路にいて、作品をたくさんインプットした。
これから、さらに変わっていきたい。なんか引越ししたい。