先日デザインした照明のための特殊な部材が中国から朝一に届いた。
佐川急便の男性の肩まくりは綺麗にめくられているタイプのものだった。
でも髪はボサボサだった。
僕の髪もボサボサだった。

その後事務所に行き図面を書き、昼過ぎに電話が鳴り現場に行った。
いろんな業者さんが汗だくで作業をしてくれているありがたさ。

みんな、暑いねーって言ってた。でもなんか楽しそうだった。きっと皆さん、モノづくりが大好きでこんな汚れる仕事をしているんだろうなぁ、と思い、
なんだか嬉しくなってやる気が出た。

もちろんお金を払っているわけなんだけど、
それでもこちらのことを考えて、色々工夫してくれたり、提案してくれる業者さんが好きだ。
現場のライブ感のあるクリエイティブが好き。

漫画でいうとザシェフ、ブラックジャック、サバイバルとか
その場にあるものだけで作る、みたいなのは自分の根源的なテーマになっている。


やる気が出たので、自分は下の階で友人に頼まれている美術制作をしながら、業者さんの作業を見守った。
見守るというのはおこがましいくらい音を出しながらジグソーという工具でひたすら合板を切った。

1820×910(サブロクと言います)の合板を6枚、送られてきたデータ通りに有機的に切る。
一体なんなんだよこの形、と言いながら。


そういえば、
芸大の一年生の伝統課題で椅子を制作する課題がある。

僕はアルヴァ・アアルトという天才の作品をモチーフに制作したのだけど、そのときにアアルトの有機的な線についてたくさん調べた。
あの有機的な線はどのように決定されたのか。

↑これとか


これは自分のデザインにとってすごく大事な出会いだった。

建築の世界では、概ね、行ったデザインに理由がいる。
なぜここに壁が必要なのか、とか
なぜ床が斜めなのか、とか
なぜこの寸法なのか、とか

それは現代の社会が影響しているところもある。現代社会は論理社会であり、(これはある種の流行り)
意味の無いものにお金はかけられないこともある。
単純に、デザイナーとして説明できないものを作るのも変な話だ。デザイナーは意味をプレゼンするのだから。

壁がこんな位置にあるから家族の生活の動線が必然的に交わります、とか

庇がこんなだから熱効率がどうとか、コミュニティがどうとか、サーキュレーションやらバウンダリー、コンテクストにボイドに云々カンヌン。

呪文が出てきます。

でも、それが建築家の仕事でもある。これはこれですごく楽しいんだけど、建築畑にしか通じない言語ですね。


まぁ、それを前提に、先ほどのアアルトの花瓶を見てほしいのだけど、あの形はどんな意味を持って決定されたのだろうか?ということである。

意味性に迷っていた僕は、このことを3年間考えることになるが、
アアルトの答えはこうだった。
「自分の中にあった水たまりのイメージ」
たしかこんな感じだった。(違っていたらすみません)

え、そんなんでいいの?!
と思いさらに悩んだ半田一年生は、
アクリル板に霧吹きで水玉をいくつも吹きかけ、その無数の水玉を全てデータ化し、近似値を取ることで、椅子の座面を決定した。

さらにこねだし始め、そのデータ上のいくつかのパターンでパズル的に座面を組み合わせ、さまざまな使い方ができるパターンを作ろうと考え、椅子群を作成したのであった。



今思うと、あの時の自分が愛おしく感じるくらいダサいし分かっていないのだが、一方で自分の成長を感じる。

今だったらもっと違うものになるだろう。
でも、一番大切なことは、生み出されたものがどうか、だと思っている。

この作品はこれで良かった。

分かっていないからこそ生まれる力技だった。
今までの人生で一番木材を削ったと思う。
いつか塗り替えたいとも思う。
それも全て、未熟だった自分だから得られた夢だ。


これがその椅子


デザインプロセスは仮説の域を出ない。
実証なのか、再発見なのか、現実に存在することになったモノをどう評価するかが、大事だと今は思う。
それがあってこその仮説なのだということ。

例えば、ザハハディドは、車が時速30キロで曲がり切れる曲線を使う。
でもあれは大体嘘だと思っている。

現実には、その曲線が自分の中で美しいということをザハは知っていた。であると思っている。

彼女は数学の天才でもあったのだけど、でもやはり、アーティストだったのだと信じている。
でなければ、あんな絵は描かない。

昔を振り返ってみるのもたまには良いものだね。

今は、意味の無いものを作りたい。



まあそんなこんなで本日は、有機的な線にとらわれながら、
またも汗だくの中、死ぬ寸前で、
NEWエアコンが試運転を終え、ようやく稼働した。これからは汗疹君、さよならだね

そして銭湯に行ってから事務所に戻りローソンの麻婆豆腐を食べ、図面をまた書き、メールを待つ間なぜかキッチンにタイルを貼り出し、今に至ります。
こんな毎日です。最高に楽しいです。