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今日はワイルドエリアにて、キバナとキャンプデートすることに。
「おぉ~、ワイルドエリアだ! 初めて入った〜!」
「あ、そっか。ライラはポケモンを持ってなかったもんな」
キバナの問いかけに、うんと答える。
実は私はガラル地方出身ではなく、
自然豊かに溢れるキタカミの里出身なんだ。
父方の方になるんだけど、
私より、4つ年下の従妹と8つ年下の従弟がいるの。
二人とも、元気にしているかな?
私がキタカミの里を出る時、
大泣きしていた従弟の姿が記憶に残っている。
何だか、従妹弟達のことを考えていたら、
無性に会いたくなってきちゃったな。
従妹に彼氏のキバナを会わせてあげたいし。
後で都合のいい日を聞いてみようっと。
「ライラがキャンプ初心者って言っていたからさ、
場所も慎重に選んで良かったぜ」
下手すると、
野生のポケモンに襲われるからな、と言うキバナの言葉に感謝だ。
成程、と頷いていると、
キバナは連れて来たポケモン達を外に出そうと
宙に向けてボールを投げる。
『ヌメ〜!』
私をキバナに引き合わせてくれた
恋のキューピットであるヌメちゃんが元気良く飛び出してきた。
ヌメちゃんも私と同じく、キャンプデビューなんだ。
まだ生まれて間もないベビーポケモンだけど、
バトルに興味を持ってくれたら、育成するが、
今は自由に育って欲しいってキバナが言っていた。
こんな可愛いヌメちゃんがバトルするのかな、と首を傾げたけど、
そこはヌメちゃんが決めることだからね。
「うふふ、一緒に楽しもうね!」
『ヌメ!』
足元にやって来たヌメちゃんを優しく腕の中に抱えて、
笑みを浮かべていると、
「すっかり、懐いちまったな……。
な、ライラ。この際だから、ヌメラを育ててみたらどうだ?」
「ヌメちゃんを? 私が?」
キバナに言われて、ヌメちゃんにじっと目を向ける。
育てると言うことは、
私もキバナみたいにポケモンバトルしないといけないのかな?
でも、私、ジムバッジ持っていないし、ポケモンを育てたことがない。
それに人から頂いたポケモンは
言う事を聞かないって聞いたことがあるし……。どうしよう……?
困惑な表情をしている私の気持ちを察したキバナは
大丈夫だ、と優しい声で話しかけてきた。
「別にバトルをしろとは言ってねぇんだ。
ただ、ライラの側に居たいってヌメラが喚くからさ」
「ヌメちゃんが……?」
『ヌメっ!』
腕の中にいるヌメちゃんがそうだと言わんばかりに
元気よく返事をした。
「……ヌメちゃん、ほんとにいいの?
お母さんのヌメルゴンと離れ離れになるけど……」
それでもいいの? と再度訊ねると、
ヌメちゃんは私の側に居たい、と
すりすりと甘えるように擦り寄せてきた。
ゔ〜、可愛い〜。
こうなった以上、私も覚悟を決めないといけない。
「ヌメちゃん、これから宜しくね」
『ヌメメ!』
これで私も、
キバナと同じくポケモントレーナーになれた、と喜んでいたけど、
此処で重要なことを思い出した。
「あ、そう言えば……
私のマンション、ポケモンを買ったらダメな所だったんだ……」
『ヌメっ!?』
あわあわ、どうしようっ!
ヌメちゃんが泣きそうな表情になっているよっ!
泣かないで、とヌメちゃんをあやしていると、
「それなら……、いっそのこと同棲始めるか?」
キバナのとんでも無い発言に
私はただ、驚きの声を上げてしまった。
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「私と同棲したら、キバナの自由時間がなくなっちゃうよ?」
「俺様はライラと毎日一緒に居られる方が嬉しいんだけどな〜」
ヌメラもその方がいいよな? と私の腕の中にいるヌメちゃんに訊ねる。
『ヌメ〜!』
私がキバナと同棲したら、毎日一緒に居られると理解したのか、
嬉しそうに鳴き声を上げた。
完全に外堀を埋められちゃったよ。これは。
「……でも、料理作るの下手だし……」
何を隠そう、私は料理を作るのが大の苦手。
簡単なものを作ろうとしても、
何故か、黒焦げのものになってしまうんだ。
キバナと付き合う前は、スーパーのお惣菜を買って、
レンジでチンしていたぐらい。
ま、一人暮らしだったのも、理由の一つだけどね。
一応、キバナには料理を作るのが
苦手であることを話してはいるんだけど……
これまで、過去に同棲の話を何度もされてきたけど、
女子力がない私なんかと一緒に暮らしても、
キバナには何の特にもならない。
そう言う理由で毎回断り続けてきた訳なのだが、
「心配すんなって、俺様が簡単な料理を教えてやるからさ」
「え、キバナはチャンピオンカップ戦で忙しくなるのに……」
今回のジムチャレで勝ち残ったトレーナーは
現チャンピオンが推薦した実弟のホップ君、
新人トレーナーのユウリちゃん。
スパイクジムのジムリーダーの兄を持つマリィちゃんだ。
今年のチャレンジャーは見所があるとか、
ニュースでもよく取り上げられていたし、
何より、チャンピオンカップ戦に出場するジムリーダー達にも
かなりの気合いが入る筈だ。
「そこは上手く調整するから、大丈夫だって」
「でも……キバナに負担をかけてしまうし」
迷惑になるから、同棲はやめよう、と言葉に出そうとするが、
まるで、私の言葉を遮るかのように
キバナの人差し指が唇に押し当ててきた。
「そうやって、何でも一人で抱え込むのはダメだって、
いつも、言ってるだろ?」
それはそうだけど、と声を出したかったけど、
未だに人差し指が唇に押し当てられている為、喋れない。
「ライラは俺様の大切な恋人なんだから、
もっと、甘えてもいいんだぜ?」
いつも、甘えてばかりなのに。
これ以上甘えてしまったら、
私はきっとキバナ無しでは生きられないよ。
もじもじしながら、そう伝えると、
キバナは私の言葉に嬉しそうにニヤリと笑った。
「ホント、可愛いよな。ライラは」
こりゃ、夜になるのが楽しみだわ、と耳元で囁くキバナの言葉に
ドキッと一際鼓動させつつも、
夕ご飯であるカレーを一緒に作ろうぜ、と誘われたので、
苦手な料理が少しでも作れるようになりたい一心で
一生懸命カレー作りに励むのであった。