2012山陰14 大森の街 | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。


8/12(日)② 大森の街

 石見銀山を大方見終わり、そろそろおなかも空いてきた。銀山に隣接して「大森」という集落がある。ここにあるブッフェの「山桜」は営業まであと30分ほどもあり、見送らざるを得なかった。

 

大森の歴史的建造物、渡辺住宅前でパチリ

 

 おそば屋さんらしい「咄々庵」がよさそう、と思っていくと、まだ誰も座っていないカウンターに通された。観光ガイドに載る店だけに、もしかしたら待つようかも、と思っていただけにラッキー、ここは天ぷらが大変おいしかった。

 

天ぷらが絶品!


 空模様は芳しくなく、いつ雨が落ちてきても不思議はない。車に戻って、一旦は出した自転車をたたんで格納し、用心のために傘を持って大森の街並みへ。


 銀山の小径とは打って変わって、賑わいが楽しい。レンタルの自転車で回っている人も多いが、この規模なら歩いた方がいい。

 

 「中部電力」の暖簾の懸かる古民家は、元々の良さを残しつつ、エコ電化に改装したリフォームのモデル住宅だ。地方でこのニーズはかなりありそうと感じる。章子のメモにはこんなものが残っている。「簾をはめ込んだ障子に感動!外から見えないのに、中からは外が見える、人の行き交う様子がなぜか美しい」。

 

リフォームされた古民家のモデルハウス

 

和の雰囲気を残したまま現代の住宅へと改装


 場所柄、銀製品を扱う店も多いが、銀は手入れが大変、という章子はハナから本気で見ていない。


 「理容室アラタ」は、昭和、それも戦前の雰囲気を濃厚に残す店構え。レトロもここまで徹底していると逆に価値が感じられる。そう思うのは、何も俺だけではないようで、何かの文化遺産に指定されていたみたいだ。ここではセピア調の写真を撮ってみた。

 

レトロな理容室


 最後に「城上神社」に行き着いた。境内に生える木が大きく、太いしめ縄が印象的な社殿。極彩色の天井絵には龍が描かれ、この天井絵で有名な神社という。直下で手を打つと、反響して、いわゆる「鳴き龍」の現象が起こる。

 

城上神社

 

天井絵が凄い


 こうしてみると街道筋に栄えた宿場のようだが、実は、結構な山の中。「銀山」という産業がなければこの街はあり得ず、かつての炭鉱を中心に開けた町なども、きっとこのような賑わいを見せていたことだろう。炭鉱の町の場合、閉山後の寂しい話ばかりが耳に入って来るが、そこに暮らした当事者の思い出は、苦しかったことばかりではないはずだ。


 このほかにも山門が立派な「勝源寺」、お堂の鏝絵が凄い「西性寺」等に寄ったメモと写真が残るが、この地域にある寺や神社は相当の数に上る。

 

山門の立派な「勝源寺」

 

お堂の鏝絵が凄い「西性寺」


 雨が降ったり晴れたりを繰り返す、変な天気。旧裁判所は、明治、大正期頃の建築だが、裁判所まで設置されていたのか、という驚きがあった。現在は町並み交流センターとなって、観光案内所としての機能を持つ。ここで石見銀山と、それで栄えた周辺の町を紹介したビデオを見た。俺は途中で意識を失ったようだが、章子は5本も見て、かなり知識を得た、とメモが残る。

 

旧大森裁判所(しまね観光ナビより転載)


 ビデオによれば、大森の街並みは、往時の景観に復元されているという。考えてみれば、閉山後にもずっと人が住み続けていることは考えづらく、まして当時の雰囲気を残したそのままの町が存続していたはずはない。世界遺産に指定されるまでの間、ここがどんな風に活用されていたのかは知らないが、観光で人を呼ぶ努力は続けられてきたのだろう。

 

良く保存された大森の街並み


 「群言堂」まで急ぐ。この店はここが本店、正式な社名は「大森文化研究所」という。シンプルな色合いとスタイルの洋服と雑貨が主力の店、たとえるなら「ヨーガンレール」のような感じと言えばいいか、自然派とでも呼べそうな商品が並んでいる。店内の広さには驚くが、カフェのスペースもある。

 

「群言堂」入り口にて


 黒板に何か書かれているので読んでみたら、「幼稚園」の窮状を訴えているものだった。いくつかの商品を買うと一部が支援金として幼稚園に寄付されるというので、気分に流され、Tシャツを一枚買ってしまった。

 

群言堂内にある黒板


 カフェスペースでお茶にしたのは、雨止みを待つ、という意味もあった。しかし、皮肉なことに雨はだんだんひどくなり、傘があっても、出るのに躊躇するほどの降りになってしまう。困ったことにイヤホンガイド返却の刻限も迫ってきた。そこで、お店からセンターに連絡を入れておいてもらい、若干遅くなってもお咎めなしとの安心を得た。

 

雨宿りを兼ねて


 幸いなことに雨はまもなく小降りになり、16:30の刻限に遅れることなく、イヤホンガイドを返却。結局、丸1日、石見銀山を堪能させてもらった。


 

 

2012夏 山陰の旅第2弾 15につづく