2012山陰10 神話博しまね | 楢丁(YOUTEI) 旅の話

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趣味で書きためた旅日記が、膨大な量になりました。2020秋に脳出血、2023には食道癌を発症と、様々なことが起こりますが、克服してまた旅に出たいという気持ちは変わりません。
お付き合い頂けたらありがたいです。どうぞよろしく。

 

8/11(土)②
 出雲大社の駐車場に着いたのが9時頃、「神話博しまね」は古事記編纂1300年を記念して、という開催の趣旨だそうだが、まだ時刻が早い。

 

 車から降ろした自転車にまたがり、まずは大社の西側へ向かう。こちらには太いしめ縄の懸かる、巨大な神楽殿があるが、ここでは朝も早くから結婚式が執り行われている最中だった。土曜日の今日は予定が立て込んでいることを窺わせる。脇からその様子が見えたが、神主が祝詞を上げている最中とあって、皆さん神妙な面持ちだ。

 

こちらでは朝も早くから結婚式が執り行われていた

 

 本殿をはじめ大社の建物は未だ工事中、周囲にシートが掛かる様は、まことに味気ない。その中を一応は参拝してきたが、参拝所の隅にある手水鉢に、雨蛙がいた。

 

社殿は式年遷宮に当たっていて?工事中

 


手水鉢にいたアマガエル

 

 「古代出雲歴史博物館」へ回る。何百本とディスプレイされた銅剣は圧巻。荒神谷遺跡からの出土という。銅鐸の展示も、もの凄い数で、かつてこの周辺に本拠を置いた王権の、その勢力を物語っているものと看て取った。

 

荒神谷遺跡から出土した銅剣の展示(出雲観光ガイドより転載)              


 「神話博しまね」の主会場は博物館脇の広場、いくつものテントが張られ、舞台やグルメコーナーなど、特設会場が造られている。10時から外の舞台で伝統芸能の公演があるため、開演までの時間、会場をぶらぶら見て回ったが、すでにオロチもスサノオもステージに出ているから、始まるまで椅子で日記でも書こうかと、早めに座っていた。すると、ちょうどテレビ放映のため、お神楽のクライマックスを演じるというではないか。ラッキー、しかしお盆直前の土曜とあって、さぞかし混むだろうと思いきや、開演が迫る時刻になってもまだ席が空いている。首都圏での催しを思うと、なんとゆったりしていることか。近くの売店でミルクシェークを買ってきて、飲みながら開演を待った。

 

神話博しまねの特設ステージ


 舞台はハイライトを20分ほどに縮めて上演、オロチが次々と八匹、よく舞台に乗るものと思うほど登場し、これをスサノオが退治するという皆さんご存じのストーリー、スローテンポながら見応えのある神楽。今回上演されたのは大田神楽の演目という。


 11時からは博物館内で「初心者でも分かる」と副題のつくミニ講座。章子のメモには「しばらく待つと○○○のような女の先生、いきなり話が難しい。どこが『初心者でも分かる』だ!聴衆は常連のよう。時間をかなりオーバーしてどこが『ミニ』だ!」と手厳しい。


 「オオクニヌシの遠距離恋愛」などとキャッチーなテーマを掲げていたが、その実、内容はマニアックなもの、かなりの予備知識がベースになければ理解不能だろう。


 ざっとメモに取った講演内容を記しておく。


 沖の島(沖津宮)の姫とも婚姻関係にあるオオクニヌシだが、求婚に行ったヌナガワヒメは越中、越後国境付近の出身、ゆかりの史跡があるという「能生」の「ノ」は「ヌナガワヒメ」の「ヌ」とも繋がる。その手前(西)に流れる「姫川」の名はこの姫を指すといい、そもそも、出雲から海流に乗って日本海を東進すると能登半島に行き着く。その付け根に当たる羽咋には「気多大社」があり、「コタ」(ケタとの関連だろうが、この地名がどこから出てきたのか聞き漏らした)という地名がどこだったか?(能生かも知れない)。そして東進し、糸魚川から姫川を遡っていくと諏訪に行き着く。国譲りの際、オオクニヌシの息子、タケミナカタが負けて諏訪に退くという話が古事記にあるが、そのような経路から考えると、出雲と諏訪はちゃんと結びつきがあったと考えられる。講師の先生は諏訪や能生、気多あたりを実踏して出雲と関連する痕跡を研究しているらしく、その成果を披露しているようだ。出雲大社にヌナガワヒメは単独で祀られていないが、美保神社に祀られているのは微妙なバランス、と表現していた。


 連続講座だったから、前から聴講している人にはすんなり入る内容だったかも知れないが、何も予備知識のない場合は、チンプンカンプンだったことも考えられた。少なくとも「初心者でも分かる」ことはなさそうだった。

 


※古代出雲歴史博物館で聴いた講座は後で調べたところ、以下のとおり。
  出雲のミニ講座7◆オオクニヌシの遠距離恋愛 ヌナガワヒメとミホススミ
    初心者でも気軽に学べる「出雲のミニ講座」第7弾。
    講師は、川島芙美子氏(風土記を訪ねる会代表・NPO法人出雲学研究所会員)
    
    関連して、後に、偶々能生の「神道山公園」に野宿で一泊したことがあった。この公園の神道山には、ヌナガワヒメへ求婚するためにオオクニヌシが通ったところ、という説明があったように思う。講師の話で、能生に史跡がある、というのはここも含まれるはず。というわけで、講座を聞いたことは無駄じゃなかった。

 

 

 

2012夏 山陰の旅第2弾 11につづく