六大将軍伝説

 

 

【293 第二次西部攻略戦(二十七) ~ビーアベイユとコキシネル~】

 

 

〔本編〕

「おお!」ビーアベイユは一緒に走りながら感嘆の声を上げる。

「コキシネル殿。貴方の考えをチグレ大将軍が最後まで聞いていれば、チグレ軍も北東に進軍するという選択はなされなかったでありましょう。ちなみにコキシネル殿の次善の策というものもご教授いただけますでしょうか?」

「それは構わないが、俺のことは呼び捨てで構わないのだぞ」

 それに対し、ビーアベイユはニッコリと笑う。

「いえいえ、これほどの洞察力をお持ちのコキシネル殿を呼び捨てなど、申し訳ない。……それに不甲斐ないことではありますが、ここまでコキシネル殿の考察を拝聴させていただきながら、私にはコキシネル殿が次善の策とおっしゃられた策が全く見当もつきません。さらに言いますと、チグレ軍が敵軍を追って最短ルートの北東に進路を変更したことが、最悪手であることにも未だ考え至っておりません。今後のためご教授いただけますでしょうか?」

 

「むろんそれをお前(ビーアベイユ)に語ることはやぶさかではない。しかし、少し駆けながら話し続けることが負担になってきたようだ。許されよ」

「いえいえ、それは失礼いたしました。気付かずに申し訳ない。よろしければ私が常備している薬湯なぞ一服いかがでしょうか? 私が自ら薬草などを煎じて作った薬湯で、身体の疲れを軽減し、さらなる潜在能力を引き出すことが出来ます。実は私は少し前に飲みました」

 そう言うと、ビーアベイユは懐から小さな小瓶を取り出した。その小瓶には青緑色の液体が三分の一程度入っていた。

「ほんの二、三滴程度で効果が現れますので……。私も少し口に含みましょう」そう言うと、ビーアベイユは小瓶から少しばかり青緑色の液体を口に含み、その後、小瓶をコキシネルに渡した。

 コキシネルは渡された小瓶を眺め一瞬戸惑ったが、小瓶に液体が三分の一しか入っておらず既に飲みかけの状態や、自分の目の前でその小瓶を持っていたビーアベイユが口に含んだのを見て、彼も二、三滴その液体を口に含んだ。液体を口に含んだ瞬間、鼻孔をほのかな香りがくすぐったが、味は全くなかった。

 コキシネルは小瓶の蓋を締め、ビーアベイユに返す。

「ほんの数分で効果が現れます。その後ご教授いただければと……。その間にこの不肖私(わたくし)ビーアベイユもたった今ですが、浅知恵が閃きましたので、その間に少しお聞きいただければ……。コキシネル殿から及第点を頂けるとは思っておりませんが、自分も少しは愚考を披露(ひろう)したほうがよろしいかと思いまして……」そう言いなが、ビーアベイユは話し始める。

「先ずコキシネル殿が、チグレ軍が敵軍を追って北東に進軍ルートを変えたことが、最も悪い手と言われたのは、既に罠などにかかってロボ軍が負けていた場合、チグレ軍が向かう先に既に敵軍がいないからだと気付きました。敵軍がいないだけであればただの空振りで済み、後手に回った悪手であるに違いはないのですが、それだけでは最悪手ではありません。しかし、敵軍はロボ軍を破った後、必ず移動し、今度はこのチグレ軍を焦点(ターゲット)にするのではないかと考えました。なぜなら、北方のレアオン軍より我がチグレ軍の方が千少ない七千であるため……。チグレ軍が、陣形が整っていない強行軍として進んでいる、その致命的な隙を突くことができるからであります。おそらくは強行しているチグレ軍の横っ腹を敵が狙って強襲するでありましょう。そしてその強襲する敵の方が、チグレ軍より人数が多い。これはコキシネル殿のおっしゃる通り、最悪手をチグレ大将軍は選択したということでありましょう」

「……」

「そして今となっては手遅れではありますが、コキシネル殿がおっしゃられた次善の策というのは、レアオン軍にすぐさま伝令を送り、レアオン軍にはそのまま南西のルートの進軍を維持させるよう要請する。そしてチグレ軍もそのまま北西のルートを進軍し続け、ツィカーデ城においてレアオン軍と合流します。これでツィカーデ城にチグレ、レアオン連合軍一万五千が集結し、敵の一万よりも多勢で敵と相対することが出来ます。これが次善の策ではないでしょうか? この策について及第点をいただけますでしょうか? コキシネル殿」

「……お前は誰だ!」コキシネルはその場で足を止め、腰に履いていた剣を抜く。

 コキシネルは瞬時に、ビーアベイユを先ほどまで一緒に話しながら走っていた味方ではなく、敵として認識したのであった。

 

「お前は誰だ!」コキシネルは剣先をビーアベイユの方に向けながら、厳しい口調で再度そう問いかける。

「誰と申しましても……、先ほど名乗りました通り、ビーアベイユであります」コキシネルが足を止めたので、ビーアベイユも同じく足を止め、コキシネルに向かい合った。

 二人の距離は一メートル程度。コキシネルが剣を抜いているのに対し、ビーアベイユは両手を広げ、別に戦う素振(そぶ)りはないといった表情で、首をすくめた。首をすくめたビーアベイユの表情は涼しげであり、全く慌てた様子はなかった。

「そうか。……ではビーアベイユは本名として、どこに所属している兵だ! 少なくともチグレ軍ではないな」

「はい。チグレ軍所属ではありません」ビーアベイユは、コキシネルの問いかけに、あっさりとチグレ軍でないことを認める。

「フルーメス王国所属の兵でもないな」

「はい」コキシネルのさらなる問いかけに、フルーメス王国の兵でもないことも、ビーアベイユはあっさりと白状する。

「……では、どこの者だ!」コキシネルは、油断なく剣先をビーアベイユに向けながら尋ねる。

「フルーメス王国でなければ、答えは一つと思われますが……」ビーアベイユは、やはり涼しげな表情で、若干の微笑を口元のたたえながら、そう答える。

「敵である聖王国の者か!」

「はい、改めて自己紹介させていただきます。ソルトルムンク聖王国最年少将軍クーロ様の麾下の一人で、ビーアベイユと申します。今、フォルミーカ地方に侵攻している敵方であるクーロ軍の諜報部門に所属する魔兵です。今回の任務は、フルーメス王国五獣将の一人チグレ大将軍の軍の中に潜み、その動きをクーロ様に伝えると同時に、チグレ軍の動きをある程度牽制、又はこちらの都合の良いように誘導するというものであります。チグレ大将軍の為人(ひととなり)はある程度把握しておりましたが、そのような軍にあっても、たまに我が軍(クーロ軍)の策を看過するような智者が混じっていないとも限りませんので、そのような方の意見に従わないよう見張り、牽制するなどの役割を担っております。……そうコキシネル殿、貴殿のような方の存在を牽制するためです」

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 コキシネル(チグレ将軍の家臣)

 チグレ(フルーメス王国五獣将の一人。虎将(こしょう)の別称をもつ)

 ビーアベイユ(チグレ将軍の家臣)

 レアオン(フルーメス王国五獣将の一人。獅子将(しししょう)の別称をもつ)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。クーロの矢を眉間に受けて絶命)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 ツィカーデ城(フォルミーカ地方最東端の城)

 フォルミーカ地方(フルーメス王国領)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 

 六大将軍伝説

 

 

【292 第二次西部攻略戦(二十六) ~コキシネルとビーアベイユ~】

 

 

〔本編〕

 顎を砕かれ、口中が血まみれとなった部下はそのままそこに置き去りにされる。

 ただ一人だけ、血まみれの彼を心配して残った兵がいた。その兵は砕かれた顎に治癒の呪文をかけ、彼を介抱する。

「おお、顎が元通りだ。助かった、礼をいう」残った兵の呪文により、チグレの部下の砕かれた顎は完全に元に戻った。

「いえいえ、貴方の勇気ある進言に心を動かされただけであります」介抱した兵が静かにそう呟く。

「いいや、君こそ。ここに残っては後でチグレ将軍から叱責を蒙(こうむ)るのではないかな。将軍の意に沿わない部下を介抱して、ここに残ったのであるから……」その言葉に対し、介抱した兵はニコニコと笑い、あまりそのことについて気にしている様子はなかった。

 

「俺はコキシネルという。君の名前は……」

「私はビーアベイユと申します」

「ビーアベイユ殿、助けてくれてありがとう」

「いえいえ、礼には及びません。それにビーアベイユと呼び捨てで構いません」

「そうか、ならば俺のこともコキシネルと呼び捨てでよいぞ」二人はそれぞれ名乗りあった。

「それでコキシネルは、何故チグレ大将軍の行動が最悪だと言われたのですか? それが気になって、私はここに残ってしまいました」

「そうだったのか」コキシネルはそう言うと立ち上がる。既に彼の乗っていたホースは、誰か他が乗っていってしまったようで、そこにはいなかった。

「……とりあえず、チグレ大将軍の後を追いながら話そう。途中でホースが調達出来るやも知れない。とにかく手遅れにならないうちに……」

「分かりました。共に向かいましょう」

そう言うと、コキシネルとビーアベイユの二人は、チグレが向かった北東に向けて走り出した。

「チグレ大将軍の選択された行動が最悪ということを知りたいということだな」走りながらコキシネルが、ビーアベイユに話しかける。

「はい。私はロボ大将軍の軍が戦っている敵軍の背後からチグレ大将軍の軍が攻めるのは、挟撃になるので、手としては次善の手段と思っておりますので……」

「ビーアベイユと同じことを考えているからチグレ大将軍は、北東に進路をとったのであろうが、俺は既に敵はロボ大将軍の軍との交戦を終わらせていると考えている」

「そうお考えなのですね。交戦が終わっているということは、その勝敗も決しているということですか?」

「ああ、残念ながらロボ大将軍の負けだ。おそらくは大敗しているであろう」

「そんなまさか。五獣将のお一人であられるロボ大将軍が、短時間のうちに大敗しているとは考えにくいのですが……」ビーアベイユが首をかしげながら、コキシネルにそう尋ねた。

「通常の戦いであれば、ロボ大将軍とその軍勢は精強なので、そんな簡単には負けないであろう。しかし今回はこちらが三軍で包囲しようとした敵が、あろうことか我らが包囲を完成する前に動き出し、ロボ大将軍が向かってくる東に軍を動かしたのだ。先にこの地に到着していた敵軍だ。既にこの辺りの地理は調べつくしているはずであろうし、ロボ大将軍の入城したシュメッター城から敵の駐屯していたツィカーデ城に至る最短のルートには、いくつか狭路や森などの敵が前もって抑えておけば優位な地がいくつもある。それらに伏兵を潜ませるなどの準備をしていたとすればと俺は考えたのだ。シュメッター城に入ったロボ大将軍の軍がツィカーデ城に向かうとなると、自ずと進軍ルートは一つに絞られるからな」

「成程、それにしてもコキシネルはこの辺りの土地については随分とお詳しいようですね」

「ああ、元々はフォルミーカ地方出身者だからな」

「成程」ビーアベイユは納得したように深く頷く。

「さらにそのような状況下で、ロボ大将軍の軍は総勢八千。それに対して聖王国の軍は一万。兵数として二千も多い。三方向からの包囲戦であれば、我らは八千、八千、七千の計二万三千の軍勢で一万の敵を包囲することになるが、各個撃破となれば敵の方が準備出来ている状態で、さらに少数の敵を討つことになる。これではロボ大将軍の軍がどれほど精強であっても、短時間での大敗は火を見るよりも明らかであろう」

 

「しかしコキシネル。それは貴方の推測でありますよね。敵がこの地方を調査して、我らを迎え撃つ準備が出来ていると信じて疑わないのは、何故なのですか?」

「敵軍がツィカーデ城に入ったのが十日前の五月二〇日。それから十日間、全く軍としての大きな動きが無かったのが一点。そしてもう一点は、今回の三方向からの包囲戦が始まるやすぐに軍を動かし、その軍をロボ大将軍の軍に向けたということからだ」

「しかし、敵軍はツィカーデ城に入城後、ロボ大将軍を始めとする我らの動きを知り、そこから全く動けなくなっただけなのではありませんか?」

「むろん俺もその可能性はあると考えた。しかしもう一点の、我らの三方向からの包囲戦に対し、ロボ大将軍の軍に向けて進軍をしたことで、敵軍にロボ軍撃破の準備が出来ていると勘づいたのだ」

「どういうことですか? ロボ大将軍の軍に向けて進軍したのは、ただの偶然なだけではないのですか?」

「いや、もし敵軍が本当にツィカーデ城に入城した後、進軍出来なくなっていたのであれば、今回の我らの包囲戦に対してツィカーデ城で籠城するか、それとも撤退するかの二手。まあ仮に、この状況について各個撃破のチャンスとその場で思いつき、進軍を始めたと仮定するなら三つの軍のうち、狙うのは我らチグレ大将軍の軍であるはず。なぜなら、ロボ軍と北方のレアオン軍は共に八千の軍。それに対し、我がチグレ軍はその二軍より千少ない七千。この戦況において各個撃破に気付いた軍であれば、三軍のうち最も兵が少ないところから狙うのが常道。それなのに、我らより千多いロボ軍に先ず狙いをつけた、何故か。南方の我らチグレ軍や北方のレアオン軍は、どこの地点からツィカーデ城に向けて進軍するか、そのルートがギリギリまで確定できない。それに対し、シュメッター城という明確な拠点である城に入城したロボ軍がツィカーデ城に向けて進軍するルートは簡単に予測できる。つまりは、前もって調査した地に罠を仕掛ける準備が事前に出来るということだ!」

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 コキシネル(チグレ将軍の家臣)

 チグレ(フルーメス王国五獣将の一人。虎将(こしょう)の別称をもつ)

 ビーアベイユ(チグレ将軍の家臣)

 レアオン(フルーメス王国五獣将の一人。獅子将(しししょう)の別称をもつ)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。クーロの矢を眉間に受けて絶命)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 シュメッター城(ミュッケ地方に建っている城。フルーメス王国西部地域における重要拠点)

 ツィカーデ城(フォルミーカ地方最東端の城)

 フォルミーカ地方(フルーメス王国領)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 ホース(馬のこと。現存する馬より巨大だと思われる)

 

 六大将軍伝説

 

 

【291 第二次西部攻略戦(二十五) ~吠える虎将(チグレ)~】

 

 

〔本編〕

 さて、クーロの射た矢は、ロボを即死に至らしめた眉間(みけん)への一射のみでなかった。

 ロボの死体には、喉元にも矢が突き刺さっていた。この矢は彼の喉を刺し貫くように刺さっていた。

 おそらくはクーロによるロボの眉間への矢に続く二射目の矢であろうと思われるが、こちらは眉間とは違い、ロボの喉元に矢が残っている。

 しかし、これは二射目の矢が一射目より威力が落ちているわけではなく、……これは後に分かったことではあるが、ロボが騎乗しているホースの頭が射抜かれ、かつロボが左手で握っていた剣の先が欠けていることから察するに、この二射目の矢は、ロボの騎乗しているホースの頭部を貫き、さらに身体の中心部を守っていた彼の左手が握っていた剣の先っぽを欠けさせた後、ロボの喉元を貫いたのであろう。

 クーロの、一射目に勝るとも劣らない二射目の矢の威力であった。

 ロボが落馬の際に手を差し伸べ、最初にロボの死に気付いたロボの部下は、あまりにロボの眉間から噴き出る血に目と心を奪われ、彼の喉元に突き刺さっていた矢は映像としては視覚で捉えていたとしても、脳がその二射目の矢の存在を処理するゆとりがなかったのであろう。

 さらに言うと、クーロがこの一瞬で射た矢の合計は四本。三射目と四射目の矢は、ロボの両隣を駆けていた騎兵の眉間をそれぞれ正確に射抜いていた。

 クーロ以外の敵兵による、ロボに対する矢のけん制に目を光らせていたはずのロボの両隣を駆ける騎兵までも、クーロはこの一瞬で仕留めていた。

 

 クーロとロボによる奇妙な一騎打ちは、一瞬にして終わった。

 クーロがロボと両隣の二騎兵を四射の連射技術によって仕留めた次の瞬間、小型竜(ドラゴネット)に騎乗した二体の竜騎兵(ドラゴンナイト)が、クーロより前に出る。

 これはロボを仕留めた後の一連の約束された行動であり、これによって他のロボ軍騎兵がクーロを仕留めるという機会が全く無くなってしまったのである。

 クーロはというと、そのまま得物の弓を持ったまま二体の竜騎兵に前を守られながら前進を続ける。クーロの両隣にも竜騎兵が一体ずつ付き、ロボの仇を取るべく攻め寄せてくるであろう敵騎兵からクーロの脇を守る形を整えた。

 しかしそれは全くの杞憂であった。ロボが落馬し、彼の死が誰の目にも明らかになった瞬間、それまで将軍と共に駆けていたロボ軍の騎兵たちは、自分たちに向かってくるクーロ主力軍の行く方向から逃れ、そのまま四散したのであった。

 元々、兵数と兵種の差からロボが一騎打ちによってクーロを仕留めない限り、彼らに勝つ見込みが全くなかった。そういった事情であったロボの二百の騎兵たちにとって、クーロによって一瞬でロボが倒された今、彼らが将軍の仇としてクーロを討ち取るという選択肢は全く無く、この場から自分たちがいかに生き延びるかが最大の目的となっていたのであった。

 結果として、クーロ主力軍の行く手に立ちふさがるどころか、自分だけはその場から逃げ出そうという気持ちに支配されたが故の敵前での四散逃亡となった。

 クーロとしてもロボ大将軍を彼自身の手で直接倒したことで、ここでの目的の全てを達したわけで、これ以上逃げるロボ軍残党を追撃する意味は全くない。

 そのため、先行しているクーロ軍本隊を追うように、この戦場から離脱する。

 さて、クーロ軍に攻め寄せる三つのフルーメス王国五獣将の軍の一つ――ロボ軍はここに文字通り消滅した。ロボ軍を消滅させたクーロ軍は、そのままシュメッター城のある東方向に移動し、その結果、フルーメス王国側はクーロ軍の行方を完全に見失った。

 

 

「報告いたします!」一人の伝令兵が、フルーメス王国五獣将の一人、虎将(こしょう)こと、チグレ大将軍の前にひれ伏す。

「フォルミーカ地方ツィカーデ城に駐屯しておりました敵軍が、東に向かって進軍いたしました。今頃は、ミュッケ地方シュメッター城から西進されたロボ将軍の軍と交戦中と思われます!」

「何だと!!」大柄なチグレが唸る。

 自分たちの軍が進む先に敵クーロ軍が既に居ないということは、この五獣将の一人、チグレ大将軍にとっては想定外の出来事であった。

 彼の軍は総勢七千。ツィカーデ城を三方向から包囲すべく軍の一つで、目標のツィカーデ城の南方に位置している軍であった。

 

「まさか、敵が動いているとは……」チグレは低くグルルと唸る。

「このまま、ツィカーデ城に向かっても意味がない! すぐさま、敵が向かった北東方面に進路を変更する!」

「お待ちください! チグレ大将軍」チグレの進路変更の命に、一人の部下が待ったをかける。

「何だ!」その部下の言葉に、チグレは不快そうに吠えた。

「我がチグレ軍は、ツィカーデ城に籠っている敵軍に対し、南方に位置し、現在北上中であります。これは、我が軍とは別に北方にレアオン大将軍の軍、そして東方にロボ大将軍の軍があり、それぞれがツィカーデ城に向かうことにより、三方向からの敵軍を包囲しようとしているところであります」

「そうだ! そんなこと分かりきっている!」部下の説明に、イライラが募ったチグレが再び吠える。

「……しかしです。こちらの思惑に反し、敵はツィカーデ城に籠ることなく、東進いたしました。こちらの三方向包囲が未だ整わないうちにであります。これでこちらの三方向からの包囲策は不首尾に終わり、敵軍はこちらを各個撃破が出来る絶好の形となってしまいました。それに対し、すぐに次善の策が必要な時であります」

「だから俺は、すぐに進軍の方向を変更し、東へ向かった敵軍の背後をつこうとしているのではないか!」

「チグレ大将軍! それは次善の策ではございません。恐れながら申し上げれば、それは最悪の一手であります!」

「貴様! 俺を愚弄するか!!」チグレは顔を真っ赤にし、そう進言した部下を拳で殴りつける。

 その部下は顎を砕かれ、口の辺りを血まみれにして落馬する。

「ここで俺の意思に逆らい、貴重な時間を潰すような発言をする者は、誰であろうと叩きのめす。今、敵はロボと交戦中だ! 一刻も早く、その戦場にたどり着かなければ、ロボの奴に全ての手柄を持っていかれてしまう。全軍、北東へ急行だ! 足の速い兵からとにかく戦場へ急げ。足の遅い兵も最大限早く戦場に到着するよう、各々努力せよ!!」こう叫ぶと、チグレは自身の騎馬(ホース)に鞭を入れる。

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 チグレ(フルーメス王国五獣将の一人。虎将(こしょう)の別称をもつ)

 レアオン(フルーメス王国五獣将の一人。獅子将(しししょう)の別称をもつ)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。クーロの矢を眉間に受けて絶命)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 シュメッター城(ミュッケ地方に建っている城。フルーメス王国西部地域における重要拠点)

 ツィカーデ城(フォルミーカ地方最東端の城)

 フォルミーカ地方(フルーメス王国領)

 ミュッケ地方(フルーメス王国領)

 

(兵種名)

 ドラゴンナイト(最終段階の小型竜に騎乗する騎兵。竜騎兵とも言う)

 

(竜名)

 ドラゴネット(十六竜の一種。人が神から乗用を許された竜。『小型竜』とも言う)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 ホース(馬のこと。現存する馬より巨大だと思われる)

 

 六大将軍伝説

 

 

【290 第二次西部攻略戦(二十四) ~狼将(ロボ)射抜く~】

 

 

〔本編〕

「よしお前の申し出、受けよう」ロボはそう言うと、自身の得物の長槍を放り捨て、腰に差している二本の剣を抜き放った。二刀流の構えである。

 そしてロボは左右の家臣に目配せをし、クーロ目がけて一気にホースを駆る。そのロボと共に二百のロボ軍騎馬部隊も、ロボに遅れじと一気に駆けた。

“成程! ロボ大将軍は、國の大将軍としては些(いささ)か以上に器量不足ではあろうが、一武将としての器量は、数多(あまた)の戦場を経験しているだけあって、十分な能力である。僕がクーロであることの確証も、僕の一騎打ちへの承諾からの、間髪入れずの行動。そして得物である長物(長槍)を捨てての二刀流への変化。あれで僕の射かける矢への対策としては、武器が短くなった分、優位となった。その上、一騎打ちと言いながらも、こちらがロボ大将軍へ一斉に矢を射かけることも想定し、それを極力防ぐため、部下にその矢の対処を委ねると同時に、一気に全軍でホースを駆ったところは実に見事だ! しかし……”

 クーロは落ち着きを払い、そこまで分析をしながら、さらに弓を深く引き絞る。

 ロボは右手の剣を大きく上段に振り上げ、左手は剣と一緒にホースの手綱を掴み、左手の剣は自身の胸辺りに真っすぐ添えた。

 これによって左手の剣は、ロボの鳩尾(みぞおち)から喉元までのラインを塞ぐ。この左手を動かさない限り、ロボの鳩尾から喉元は自然と剣が邪魔して直接狙えない。

 むろん、喉元より上の頭部についてはむき出しのままではあるが、それは大きく上段に振り上げた右手の剣で、射抜かれる矢を打ち払うつもりでいる。それにロボはクーロと違い兜を被っているので眉間(みけん)の部分などは最初の一射を兜で守ることが出来る。

 もちろん射られた矢の強度にもよるが、一射目の矢で兜は衝撃で打ち割られるかもしれない。それでも一射目は剣による防御が間に合わなかったにしても、ロボの眉間は兜によって守られる。

 クーロとロボの距離は約八十メートル。数秒でクーロにロボの剣が届く距離だ。

 場合によっては、クーロの矢がロボの身体の中心を外れ、ロボのわき腹などに刺さる可能性もある。それでもその傷ではロボを即死させることは不可能なので、ロボがクーロに近づく行動を止めることは出来ない。

 むろんロボは、クーロの射る矢を二本の剣で全て打ち払うつもりでいる。実際にロボはそれだけの力量、技量を備えている。

 さらに動体視力も運動神経も敵の矢を打ち払う、あるいは躱せるぐらいの実力をロボは持っている。

 その上での一つの懸念は、クーロの弓兵としての実力、その中でも速射の能力であるが、それも自国の上位弓兵の実力から推し量るに、八十メートルの距離であれば、ホースが駆け抜ける間に二回が限界であろう。

 つまり既にホースで駆けているロボにクーロの矢が届くのは、最初の一射を入れて計三射。そのうち三射目をクーロが射る時には、ロボの剣がクーロの首を飛ばす時であり、それに併せて弓の弦(つる)も切ることが可能なので、実質三射目の矢は数に入れなくていい。

 つまりは二射分の矢だけ警戒する必要があるが、一射目の矢だけでは、この形の今のロボを完全に止めるような即死に至る傷を与えることは出来ない。

 距離が狭まる分、本当の意味で脅威なのは二射目の矢ではあるが、これさえ完全とはいえないまでも即死に至る致命傷にまでならないよう、ロボが対処すれば、その瞬間、ロボの勝ちが確定する。

 

 瞬時にそこまで答えを導き出したロボはニヤリと笑う。ギリギリのところの命の駆け引きに、戦人(いくさびと)としての血が沸き立ったせいでもあるが、このようなギリギリの状況下で、将軍になったばかりの若いクーロが、冷静さを保っていられるであろうか。

 クーロの一射目の矢で、ロボの馬脚が止められなかった場合、目前に迫ってくるロボに対し、クーロが冷静さを保ちながら正確に二射目の矢を射れるとは、到底思えなかった。経験の差がここで出るはず。

 クーロは余裕で勝つつもりで一騎打ちを挑んだのかもしれないが、それが非常に甘かったことに、この若輩の将は死ぬ間際に気付くであろう。

 ロボは、勝利への高揚感から思わず不敵な笑いがククッと漏れたが、それが彼の最後の記憶となった。

 

 ロボの兜をつけた頭がグッと後ろに大きく動き、彼の上体もそれに合わせて、思いっきり仰(の)け反(ぞ)る。

 周りにいる味方の騎兵たちには、まるで後ろから見えない糸か何かでロボの兜が引っ張られたように見えたが、奇妙なことに、その現象に対し、当のロボが手綱を引っ張って上体を戻そうとすることなどせず、そのまま後方へ落馬したのであった。

 ロボ軍の騎兵たちには何が起こったか――それはロボが見えない糸に後ろから引っ張られるように上体をのけぞったことも含めて理解が及ばなかったが、落馬したロボに一人の部下が手を差し伸べようとしたその時、その部下は全てを察する。

 ロボが死んだ。

 ロボの眉間に穴が穿たれ、そこから一筋の血が噴き出ていた。眉間を守っていた兜は、そのまま彼の頭に被されたままであったが、その兜にも眉間の部分に一つの穴が開いていた。

 この状況から分析するに、おそらくはロボの眉間にクーロの射た矢が命中したのであろう。

 そのクーロの一射目の矢は、ロボの想定を遥かに超えた速度と強度で、ロボが上段に振り上げた剣を振り下ろす間を一切与えず、彼の眉間を兜ごと貫いたのであった。

 貫いたと表現した通り、ロボの頭部にクーロの矢は突き刺さっていない。クーロの射た矢は、兜を被ったロボの眉間に突き刺さり、そのまま彼の頭部を貫通させた。

 一射目の矢を兜で防げると考えたロボの思惑を遥かに超越する強度。そしてロボが自身の眉間に向かって射られた矢に何の対応も出来なかったという、ロボの思惑を遥かに凌駕する速度。

 既に亡くなったロボに確認する術は何もないが、ロボは自らの眉間に射られたクーロの矢への対処が間に合わなかったどころか、おそらくはクーロの射た矢が、眉間に突き刺さり、頭部を貫通したことに全く気付かずに亡くなったのであろう。

 ロボの頭部がまるで見えない糸で後ろに引っ張られたように周りの味方から見えたのも、そのクーロが射た矢が、ロボの頭部を貫通する際の威力によるものであった。

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。狼将(ろうしょう)の別称をもつ)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 ホース(馬のこと。現存する馬より巨大だと思われる)

 

 六大将軍伝説

 

 

【289 第二次西部攻略戦(二十三) ~新生クーロ軍Ⅴ~】

 

 

〔本編〕

 クーロ軍における精鋭部隊。それはクーロ将軍を中心とする、文字通り精鋭兵のみで編成されている親衛隊のことをいう。

 五百の兵のうち、半数近くの二百が騎乗しているのが、一般的なホース(馬)ではなく、小型の竜種である小型竜(ドラゴネット)。ホースの機動力には及ばないが、攻撃力や防御力はホースの比ではない。

 それに機動力でホースに劣るとは言っても、それは平原などの整った平地などにおいてであって、山岳地や沼地といった悪路においてはむしろドラゴネットの方が機動力は高い。

 ドラゴネットに騎乗する兵種として、竜騎兵(ドラゴンナイト)や竜弓兵(ドラゴンスナイパー)があるが、いずれも攻守共に陸上兵士としては最強である。

 小型竜(ドラゴネット)は、ホースに比べて非常に希少価値が高く、それに騎乗が許されるドラゴンナイト並びにドラゴンスナイパーは、いずれも兵種としては最高ランクである最終段階(トップランク)に位置する兵種である。

 陸上兵士として最強のこの二兵種は、いずれの軍においても主力として用いられ、基本敵を撃滅する部隊として編成されている場合が多い。

 しかしクーロ軍においては、これらの兵種をあえて指揮官を守る親衛部隊として編制したのであった。

 クーロ自身が弓兵であり、正面切って敵陣に攻め入る猛将タイプでないためではあるが、それでも最強の陸上兵で本陣を編成するというのは、あまり一般的な軍編成とはいえない。

 これは新生クーロ軍の性質が、指揮官のクーロとその本陣を敵の格好の目標物と思わせることを強く意識させるといった特殊な軍であるということに起因する。

 むろん敵からすれば、相手の将を倒すということは、最優先すべき重大な目標である。この時代、敵将を倒すことが、その軍を破ることと同義と捉えられていた。

 しかし……いやだからこそ、そのような目標(ターゲット)を討ち取るということは非常に困難である。敵から最も離れた場所に将がいる本陣は配置されるものであるし、逆に猛将が指揮官の場合は、指揮官が真っ先に攻め寄せてはくるが、そのような猛将と精鋭部隊を討ち取るのは、後方に配備される本陣を攻めるのと同等以上に非常に困難であるのが常である。

 そのため戦いとは、最初は先鋒同士がぶつかり合い、そのような中で策を巡らし、場合によっては強行突破などの力業も用いながら、敵将と敵本陣に近づいたり、或いは敵陣を削ったりしながら徐々に敵兵を減らしていくというのが常道である。

 しかしクーロ軍はそれらの一般的な軍とは一線を画している。

 弓兵を中心としている軍という間接攻撃、或いは奇襲などを得意としている軍の性格として、敵が食いつきそうな囮(おとり)があることが必須である。

 囮が魅力的であればあるほど、間接攻撃や奇襲攻撃などにおける効果が大きくなる。そして軍隊における最も魅力的な囮(おとり)は何か。

 その軍隊の指揮官以上に魅力的な囮はない。それをとことん突き詰めたのが、新生クーロ軍の特徴といえた。

 今、まさに平原のロボ軍騎兵部隊の前に現れたクーロ軍主力部隊がそれであった。

 五百を数えるクーロ主力部隊。しかしその一番先頭に今いるのが、小型竜(ドラゴネット)に跨ったクーロ将軍本人その人であった。クーロは兜もつけず、堂々とロボ軍騎兵たちの前に現れた。

 

「おい、真正面にいる兜をつけていない指揮官風の貴殿は、クーロ将軍で間違いないか!」

「いかにも……、指揮官風という言いぶりはいささかユニークに聞こえたが、私がこの軍の将、クーロで間違いない!」ロボの問いかけに、クーロは大きく頷き、そう叫ぶ。

「ちなみに、そう問いかけられた貴殿は、ロボ大将軍で相違ありませんか?」

「ああ!」続いてクーロが問いかけ、それにロボも即座に答える。敬語でさらに、“大将軍”という呼びかけに、ロボもまんざらではなかった。

 しかし、クーロは問いかけることをしなくても、諜報などによりロボの顔は既に認識している。それに対し、ロボはクーロの面貌を一切知らなかったが、さすがに敵に対し真っ正直に尋ねたわけではなく、クーロに問うているように思わせながら、実は味方の中にクーロの面貌を見知っている者がいないかを確認していたのであった。

 結果、ロボの家臣のうち二名ほどがロボのクーロへの問いかけに頷いていた。おそらくは、クーロがツィカーデ城に入城した際にクーロを実際に隠れ見て、その後、ツィカーデ城を脱し、ロボにクーロ軍の情報を報告した伝達兵なのであろう。しかしこれでロボもクーロ本人が目の前にいることに確信が持てたようであった。

「既に勝敗はついております!」クーロが直接ロボにこう申し渡す。

「ここはロボ大将軍の御首級(おんみしるし)のみが所望であります。それさえ、こちらにお渡しいただければ、これ以上の無用な殺生はいたしません!」

「何だと!!」このクーロの言いぶりに、ロボは顔を真っ赤にする。

「戦わずして、敵に己の首を渡せるか!」

「そう言うとは思っておりました」クーロはロボの怒りを流すかのように涼し気に言葉を続ける。

「……なので、ロボ大将軍のその意気に少しでも添えるよう、私が前面に立ちました。これは一種の一騎打ちと考えて下さい。私自身は弓兵であり、敵に真っ向から白兵戦を挑むようなタイプの将ではありません。……なので、私はここで弓に矢をつがえます。ロボ大将軍におかれましては、そのような私に相対していただければ、変わり種ではありますが一種の一騎打ちという体(てい)は保たれましょう」

 そう言うと、クーロは弓に矢をつがえた。

 二百のロボ軍に、五百のクーロ軍。数の差は歴然で、勝敗も既に決していた。

 しかしそれでもロボ軍二百の騎兵たちが、最終的にどのように動くかは不確定要素ではあった。下手に乱戦となり、敵味方に必要以上の損害を強いるのは、ここまで追い詰めたクーロ軍からすれば避けたいところであった。

 そのためクーロは将でありながら、わざわざ敵将の前に姿を晒(さら)し、あろうことか兜もつけずに一騎打ちの形での決着を提案したのであった。

 劣勢であるロボがこれを拒むということは、兵の士気を大いに落とすだけで、何らメリットはない。

 それにこれは、ロボがクーロを討ち取ることが出来るという、千載一遇の逆転のチャンス以外のなにものでもなかった。

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。狼将(ろうしょう)の別称をもつ)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 ツィカーデ城(フォルミーカ地方最東端の城)

 

(兵種名)

 最終段階(兵の習熟度の称号の一つ。一番上のランク。トップランクとも言う)

 ドラゴンナイト(最終段階の小型竜に騎乗する騎兵。竜騎兵とも言う)

 ドラゴンスナイパー(最終段階の小型竜に騎乗する重装備の弓兵。竜弓兵(りゅうきゅうへい)とも言う)

 

(竜名)

 ドラゴネット(十六竜の一種。人が神から乗用を許された竜。『小型竜』とも言う)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 ホース(馬のこと。現存する馬より巨大だと思われる)

 

 六大将軍伝説

 

 

【288 第二次西部攻略戦(二十二) ~甘い認識~】

 

 

〔本編〕

 ロボからすれば、どのような形であれ、ここで味方の歩兵大部隊と合流する心づもりでいたため、その部隊が全くいない今、彼の思案は混乱をきたし、それでもとりあえず撤退し続けている騎兵部隊に馬脚を止めるよう命を下した。

 兎にも角にも、撤退するにしても進軍するにしても、追撃する十五騎の敵ホースハンターの遠隔攻撃を受け続けることとなり、どちらにしても全滅は免れ得ない。

 しかしここにとどまっていても打開策は全く浮かんではこない。それでもここは広い平原であるため、ロボ軍の騎兵の動きも隘路の時のように制限されないので、クーロ軍のホースハンターたちも今は迂闊に近づくことが出来ず、指揮官リアンファはロボ軍から一定以上の距離をとって止まるよう命を下した。

 広い平原で対峙すれば、ロボ軍は二百弱ではあるが、ホースハンターたちはわずかに十五騎なので、その数字の差がそのまま戦力の差となる。そのためホースハンターたちは、敵から包囲されない距離を保って待機した。

 

 さて、ロボの思案はいつまでもまとまらず、とりあえず二百弱の騎兵をこの平原の真ん中付近で足を止めさせたわけであるが、少なくともそれで撤退中続いていたホースハンターの執拗な追撃からは一旦免れた形となった。

 しかし当然のことながら、いつまでもこの平原の真ん中で足を止めているわけにはいかない。

 味方の歩兵部隊が敵クーロ軍の襲撃により、この場から散り散りになって撤退したであろうと、さすがのロボも考え至っているわけであり、ここでいつまで待っても味方の歩兵部隊が戻ってくることはない。

 それどころか、いつまでもここにとどまれば、そのうちロボ軍歩兵部隊を破ったクーロ軍の別動隊がここに舞い戻り、ロボ率いる騎兵部隊は圧倒的な兵力差によって全滅させられてしまう。

“ここは二百に満たない兵力ではあるが二手に分け、一手をホースハンターへの牽制としてここに残し、俺は残りの兵を率いてこの平原から脱し、シュメッター城まで戻るべきではないか”ロボはそう思案する。

“考えてみれば、狭路から撤退する際にも、五十程度の殿(しんがり)部隊を作り、その殿部隊にホースハンターの牽制をさせるべきではなかったのかと……”

 しかしあの時は、少し撤退すればすぐにでも歩兵の大軍と合流できるつもりでいたので、そこは致し方のないことなのかもしれない。

 ロボの立場に立てば、そういった発想に至らなかったということも少しは理解できるが、それでも全体的な現状分析の甘さと、それに伴う都度の判断の遅さが今の不利な状況に陥らせているのは間違いのないことではあった。

 今も、一旦は足を止めた騎兵二百弱をすぐさま二手に分け、ロボ自身はすぐにでも撤退を始め、少なくともこの平原からどこかへ移動し、クーロ軍から大将軍である自分の位置を常に変え続けることが、ことここにおいての最善の手段であったにも関わらず、ロボはここで五分程度、二手にする際の人選や兵の配分など些末なことで悩み、貴重な時を無為に過ごしてしまったのであった。

 ロボからすれば、自分の歩兵部隊を襲撃し、かつ追撃しているクーロ軍別働部隊は自分を倒すために、すぐに戻ってこないであろうという甘い認識からであったと思われる。

 ロボ軍の歩兵部隊の数がシュメッター城の守城兵を含めた八千五百という大部隊であるということ。

 それを追い散らし、まとまった数がここに戻るのを防ぐにはある程度、クーロ軍の別働部隊もその撤退する兵たちの追撃を続けなければいけないこと。

 ロボがこの平原から狭路に進み、ここに撤退するまでの時間はそれほど長くないこと。

 平原の戦場跡からロボ軍歩兵部隊が敗れてからそんなに時は経っていないこと。

 これらの要素による見極めの正確さは、大将軍としては力不足のロボであっても、指揮官として何年も戦場で戦っている有能な兵士ではあるため、間違ってはいない。

 つまりロボの甘い認識というのは、追撃していったクーロ軍別動部隊がここに戻るのに、まだしばらく時を要するであろうという認識が甘いということではない。むしろそれは的確な判断として正しかった。

 クーロ軍のリアンファ率いる十五騎のホースハンターも、ここでロボの二百弱の騎兵を足止めさせるように距離を保って待機しているのは、味方の援軍がここに到着し、この二百弱のロボ騎兵部隊を全滅させ、ひいてはロボ大将軍の首をとる算段で待機しているのに間違いない。

 しかしながら、ここに到着することを期待している援軍とは、先ほどまでここで敵と戦い、それを追撃していった味方の部隊、つまり平原の東方向から戻ってくるクーロ軍別働部隊のことではない。

 ロボの甘い認識というのは、自分を最終的に狩るためにここに到着する敵がクーロ軍別動部隊と認識している点であった。

 今、ロボの頭の中の敵は、目の前の十五騎のホースハンター、先ほど自分たちの進撃を阻んだ重装甲の槍兵や弓兵たち少数部隊、そして残りは自分の歩兵部隊を撤退に追い込んだクーロ軍別働部隊であった。

 むろんロボが、目の前の十五騎のホースハンターを除き、自分の進軍を阻止した重装甲の槍兵と弓兵、そしてクーロ軍の別働部隊の兵数を正確に把握していたわけではないが、その総数がクーロ軍一万全軍であるとロボが認識したところが、彼の致命的に甘い認識と言わざるを得ない。

 ロボが平原に留まって五分の後、ロボが認識出来ていなかった新たな敵部隊が、この平原に到着する。

 その敵部隊はロボが想定していた東方向からではなく、ホースハンターの後を追うように西方向から、この平原に到着した。

 クーロ将軍自らが率いる主力部隊五百であった。

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 リアンファ(弓兵。新生クーロ軍先制部隊の長)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。狼将(ろうしょう)の別称をもつ)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 シュメッター城(ミュッケ地方に建っている城。フルーメス王国東部地域における重要拠点)

 

(兵種名)

 ホースハンター(第三段階のホースに騎乗する軽装備の弓兵。騎弓兵(ききゅうへい)とも言う)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 

 六大将軍伝説

 

 

【287 第二次西部攻略戦(二十一) ~新生クーロ軍Ⅳ~】

 

 

〔本編〕

 クーロ軍およそ八千がツィカーデ城からシュメッター城に続く平原に向けて進軍する。進軍しているルートは、二つあるルートのうちの、少し回り道になるが、その分隘路ルートより十倍幅の広いルート。

 このルートを進軍することにより、先行している敵ロボ軍の騎兵部隊と接触することなく、平原まで到達する。

「カニス様、敵の歩兵部隊が現れました! 数にして八千強、こちらとほぼ同数と見受けられます。当初は七千の兵数との予測でしたが、思ったより数が多いです」

「そうか」クーロ軍のカニスは頷く。

「八千以上ということは、シュメッター城の守城兵の大半も同行させている様子だな。安心しろ、八千強は想定内だ。それにこの後のシュメッター城攻略がかなり楽になるという点から鑑みれば、これは僥倖といえる。よし、騎兵一千は手筈どおり四手に分かれ、敵歩兵部隊に突入する! 同数の八千とはいえ、敵は歩兵のみ。その上、思いもよらぬ場所での襲撃は、敵にとっては寝耳に水。騎兵による突入になすすべなし! いくぞ!」

『おお!!』カニスの号令と共に、四手に分かれたクーロ軍騎兵部隊がロボ軍歩兵部隊に攻めかかった。

 

 ロボ軍歩兵部隊からすれば、ロボ将軍が先行している騎兵部隊からの少しでも遅れをなくそうという考えから、歩兵全てに全速力での行進を強いている。

 これは敵との遭遇を全く想定していない行軍であって、いずれ敵とは接触はするが、それはロボ将軍率いる騎兵部隊の方が先であり、歩兵部隊である自分たちは、その味方の騎兵部隊と戦っている敵へ、騎兵部隊の後続として接触すると部隊の全員が思っていた。

 そのため、このシュメッター城の守城兵一千五百を含めた八千五百のロボ軍の歩兵たちは、とにかく自分たちの精一杯の速度でツィカーデ城に向かった。

 同じ歩兵といっても部隊には軽装備の兵もいれば、重装備の兵もいる。それぞれがそれぞれの精一杯の速度で進軍しているため、そこには陣形という概念どころか連携すらない。

 そのような状況の中、クーロ軍騎兵による攻撃にいきなり遭遇したのである。

 敵騎兵の突進を阻む壁の役割を担うはずの重装備の槍兵などは遥か後方であるし、弓兵による接触までの間の矢の牽制をしようにも、その弓兵もバラバラに移動しているため、まとまった矢による牽制は望めず、一部の弓兵が矢を敵に射かけるのが精一杯であった。

 また、牽制しようと弓兵が矢を射かけようと立ち止まると、それを後ろから走ってくる歩兵がぶつかり、あげく弓兵を踏み倒して前進する歩兵がいたりする始末で、全てがチグハグであった。

 そこにクーロ軍カニス率いる騎兵部隊一千が四手に分かれ、それぞれ敵歩兵部隊の中に深く突撃する。

 ただ混乱している敵部隊といえども、八千以上の大部隊に真っすぐ突っ込めば、いずれ二百五十人規模の騎兵部隊では敵中に孤立してしまう。

 そのため突入は円軌道で駆け、ものの数十秒で敵部隊から抜けられるような動きとし、敵部隊から離脱した後、再び距離をとった上で突入するという攻撃を何度も何度も続けた。

 これにより千の騎兵部隊は敵中に孤立することなく、何度も何度も突入することによって敵の大部隊を思う存分かき回したのであった。

 まだ戦う準備も覚悟も出来ていないロボ軍歩兵部隊には、その敵騎兵による連続突撃で十分に混乱をきたす。最前列の兵は後方に逃げ出し、後続の兵と衝突を起こす。さらに平原であることがロボ軍の潰走を促進させた。

 後方に逃げた兵は後続の兵と衝突を起こしたが、左右に逃げた兵は、左右には誰も邪魔するものがいないので、そのまま戦場から離脱が可能である。

 実際にロボ軍歩兵部隊は左右に兵が溢れ出るかのように次々と戦場を離脱していった。

 カニス率いる騎兵部隊突入から五分後、ヤンムールが率いる歩兵部隊が敵軍と戦端を開いた頃には、既にロボ軍歩兵部隊は死傷兵と離脱兵が相次ぎ、六千程度にまで減っていた。

「カニス! ここでの戦いの勝敗は決した」クーロ軍の剣兵ヤンムールが敵軍に攻め込んでわずか十分後、騎兵のカニスに近づき言葉を投げかける。

「ヤンムール様」元々カニスはヤンムールの部下であった。

 新生クーロ軍を創設するにあたり、カニスを騎兵部隊の長として、ヤンムールの元から引き抜いたという経緯があり、カニスは、ヤンムールとは騎兵と歩兵の長として部隊と役割が変わった今でもヤンムールを慕い、今のような問いかけでも“ヤンムール様”と返すのであった。

「ここでの戦闘は、我ら歩兵が引き継ぐ。ほとんど掃討戦に近い様相ではあるが……。我らは離脱する兵は放っておく。……ただ、シュメッター城に逃げ戻られるのはちょっと面倒だ! お前の騎兵部隊は先行して、シュメッター城に逃げ戻ろうとしている敵を蹴散らし、極力シュメッター城に戻るのを阻止しろ!」

「承知しました、ヤンムール様」そう言うと、カニスは騎兵部隊を一つに取りまとめ、この戦場から離脱し、そのままシュメッター城に繋がる道を駆けた。

 これで先に進んだロボ軍騎兵部隊がこの平原に戻ってくるまでに、ロボ軍歩兵部隊は壊滅こそしていないが、この戦場からは文字通り跡形もなくいなくなったのであった。

 

 さて、ロボ将軍率いる騎兵部隊が、平原が広がる地点にまで撤退してきた。そこでロボは自分の目を疑う光景を見せつけられる。

 そこの様子から、少し前まで戦いが行われていたのは明白であったが、今は無数の兵が倒れており、そのほとんどが自分の歩兵という光景が、彼の目に飛び込んできたからであった。

 戦いは既に終わり、自軍の兵どころか敵クーロ軍の兵も一切いない。

 ロボは、ここに撤退するまでの間に合流しない歩兵部隊について、部下の言葉から、歩兵部隊は敵別動隊の襲撃に遭遇しているであろうという最悪を想定していたが、現実はロボのその最悪の想定すら、非常に甘い想定であったということを彼に知らしめていた。

 つまりロボからすれば、敵クーロ軍別動隊の襲撃を自軍の歩兵部隊が受けたとしても、それはここの戦場で互角の戦いが展開されているという想定だったからである。

 ロボはそのように想定した戦場に到着し、自分たち騎兵が合流することによって、歩兵部隊を襲撃していた敵をどのように撃退しようかと考えながらここに至っていたからである。

 既にロボの騎兵部隊は二百を割っている。撤退の際にクーロ軍のホースハンターの追撃を何度も何度も受け続けていたからである。

 ロボはこの平原まで戻り、ここで二百弱までに減った騎兵たちの足を止めさせた。

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 カニス(騎兵。新生クーロ軍騎兵部隊の長)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 ヤンムール(剣兵。新生クーロ軍歩兵(剣兵)部隊の長)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。狼将(ろうしょう)の別称をもつ)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 シュメッター城(ミュッケ地方に建っている城。フルーメス王国東部地域における重要拠点)

 ツィカーデ城(フォルミーカ地方最東端の城)

 

(兵種名)

 ホースハンター(第三段階のホースに騎乗する軽装備の弓兵。騎弓兵(ききゅうへい)とも言う)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 

 六大将軍伝説

 

 

【286 第二次西部攻略戦(二十) ~隠された道~】

 

 

〔本編〕

 さて、撤退するロボ軍騎兵部隊に、程なくしてクーロ軍リアンファ率いるホースハンター十五騎が追撃する。

 撤退するロボ軍騎兵部隊はホースハンターの矢の前になすすべなく次々と倒れていく。仮に反転して、追撃するホースハンターを追いかけようとしても、それは先ほどの進軍時と同じ状況になってしまうので、全く意味がない。

 それより後続しているロボ軍歩兵部隊と早々に合流を果たし再び進撃を始める方が良い。

 そう理解したロボは、ホースハンターの追撃を無視し、全速力で後退しているのであるが、いつまでたっても後続の歩兵部隊と合流出来ない。

 後続のロボ軍歩兵部隊は、ロボ軍の七千にシュメッター城に駐屯していた地元兵千五百を合わせて計八千五百。この後続部隊と合流さえ出来れば、改めて進撃が可能である。

 それだけを頼りにロボは後退の馬脚を速めているのであるが、一向にその後続部隊と合流出来ない。

 その間にロボ軍の騎兵は次々とホースハンターの矢によって倒され、気が付くと騎兵部隊は四百を割り込んでいる状態となっていた。

「仕方ない! 後方の百騎、反転してホースハンターを倒せ!」ロボの指示に、後方の百程度の騎兵がホースハンターの方向に反転し、十五騎のホースハンターを仕留めようとするが、素早くリアンファの指示によりホースハンターも反転しながら、先ほどと同様、後ろへ矢を射かける。

 結局、百程度の騎兵では時間にして五分程度の足止めにしかならず、再び後退するロボ軍騎兵部隊は追撃される。

「ロボ将軍、未だに本隊である歩兵部隊と合流出来ないのはおかしいです。まさかとは思いますが、歩兵部隊は既に敵の攻撃を受け、退却したのではないでしょうか?」ロボはこの言葉を放った部下を睨みつけて怒鳴る。

「そんなわけあるまい! 敵は少数でこちらの行く手を遮っているだけだ! 後続の歩兵部隊が敵に敗れたなどと、そのような戯言(ざれごと)!」

「しかし、敵はこちらを上回る一万の軍勢。敵軍の残りが歩兵部隊に攻撃を仕掛けたとすれば、こちらの歩兵が八千以上といえども退却させるだけの力はあろうかと……、仮に退却はしていないまでも、その敵によって足止めされている可能性は否定できないのでは……」

「敵クーロ軍は全部で一万かもしれないが、我が軍以外にも二つの五獣将の軍が敵に向かって進軍しているのだ。そちらにも兵を分散させているから、一万全てで攻め寄せるなど……」

「ロボ将軍! 敵が何故、必ず他の二軍へも兵を分けているとお考えですか?! 確かに三つの軍で包囲している状況下であれば、敵もそうせざるを得ないかもしれませんが、まだ我らの軍と同様に他の二軍も敵の城へ向けて進撃の途上です。まだ包囲されていない敵が全軍を我が軍に振り向けてもおかしくないのではないでしょうか、否、敵の立場にたてば、包囲される前に三つの軍を各個撃破できる状況であるならば、その手を使うのではないでしょうか」

「……馬鹿! 何故、そのことをもっと早い段階で言わないのか?!」ロボが今回の戦いにおいて、初めて自分の不利を悟った瞬間であったろう。

 

 実際のところロボの部下が言った通りのことが、後続するロボ軍歩兵部隊に起こっていたのであった。

 ロボのいたシュメッター城と、クーロ軍が駐屯しているツィカーデ城へ向かうルートは、実は途中で二つのルートに枝分かれしていた。

 シュメッター城から進軍する最初は一つの広い平原であったが、その途中から大きな森によって道が制限され、百人以上の兵が進軍するルートは二つに限定されてしまうのである。

 その一つはロボが進んだ森に両側を囲まれた隘路であり、もう一つのルートがシュメッター城側からその隘路に入る数百メートル手前に存在していた。

 そのルートはロボが進んだ隘路より少し南側に膨らんでいるため、ツィカーデ城に到達するには隘路より回り道にはなるが、その道のりは騎兵なら五分程度到着が遅くれる程度の回り道であり、代わりに隘路より五倍以上の道幅であった。

 つまり隘路が、騎兵が並んで十騎しか通れないのに対し、この道は五十騎の騎兵が並んで通れるほど広かったのである。

 クーロ軍の大半は、こちらの広いルートを使い進軍したのであった。十日前にツィカーデ城に到着したクーロは、すぐに現地を徹底調査し、このシュメッター城へ向かうルートが二つに分かれることを知る。

 クーロは即座に数百程度の兵を動員し、シュメッター城からツィカーデ城に向かうルートから、その広いルートへ抜ける入り口を偽装工作して平原側から見えないように細工したのであった。

 幸い平原からこの広いルートへ入る数百メートル手前から森が広がって木々が多く見える景色になるため、その入り口に兵を百程潜ませ、他から伐採した木々を簡易的に植えることにより、完全にそのルートを隠してしまったのであった。

 むろん急いで進軍しているとはいえ、ロボ軍の先行している騎兵が、その広いルートに入る場所の偽装に気付く可能性が全くないとはいえない。

 そのため、その入り口の数百メートル前ぐらいからリアンファ率いるホースハンターによる奇襲を仕掛けたのであった。

 リアンファのホースハンター部隊は、ロボ軍を隘路へ誘い込む役割を担ってはいたが、同時に隠蔽したルートの入り口をロボ軍騎兵に気付かせないという役割も同時に担っていたのであった。

 いずれにせよ、ロボがシュメッター城に到着した段階で、現地調査或いは地元民にこの周辺の状況を聞くなどすれば、いくらクーロ軍が道を隠蔽したとしても、それに気付かないなどという失態は起きないので、やはりロボに要因が帰するのは致し方ないことである。

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 リアンファ(弓兵。新生クーロ軍先制部隊の長)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。狼将(ろうしょう)の別称をもつ)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 シュメッター城(ミュッケ地方に建っている城。フルーメス王国東部地域における重要拠点)

 ツィカーデ城(フォルミーカ地方最東端の城)

 

(兵種名)

 ホースハンター(第三段階のホースに騎乗する軽装備の弓兵。騎弓兵(ききゅうへい)とも言う)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 

 六大将軍伝説

 

 

【285 第二次西部攻略戦(十九) ~新生クーロ軍Ⅲ~】

 

 

〔本編〕

 この馬防柵の裏にも兵が配置されていた。しかしその兵は先ほどのような弓兵ではなく、アーマーナイトである第三段階の重装甲の槍兵たちであった。

 重装甲槍兵は、馬防柵の隙間から長さ三メートル、直径二十センチメートルに及ぶ大きな槍を一斉に繰り出す。その数は十数本。

 槍は先頭を駆けていたロボ軍の騎兵の馬(ホース)の馬体を刺し貫く。先頭の騎兵は全員ホースをやられ、ホースから降りざるを得なかった。

 ロボ将軍もその例外を免れ得ず、騎乗しているホースが敵の槍によって刺し貫かれ、ホースから飛び降りた。

 先頭を駆けていた騎兵が馬防柵の前で勢いを完全に止められたことにより、後続の騎兵もそこから前に進むことが出来ず、その場で渋滞が引き起こされてしまった。

 その渋滞となった騎兵の頭上に無数の矢が降り注ぐ。

 見ると馬防柵の内側の重装甲槍兵より後方に百人程度の弓兵が控えており、彼らは一斉に、渋滞を起こして動けない敵騎兵目がけて矢を連続で射かけたのであった。

 

「ロボ将軍! このままでは我らは全滅してしまいます。すぐにこの場からの撤退を……」家臣の一人が、ロボにそう提言する。

「何だと! 大将軍の俺に、ここから引けというのか!」騎馬を失ったロボが、剣を振り回して降り注ぐ矢を打ち払いながら、そう怒鳴る。

 頭に血が昇ったロボにとって、ここで撤退するのはどうしても自分の信条(プライド)が許さなかった。

 今、己の力で馬防柵を破り、重装甲の槍兵を倒し、その後ろにいる弓兵たちを蹴散らしさえすれば、それで敵は総崩れになると信じていた。しかし、ロボはそう信じ込もうとしながら、持ち前の直感で、このような罠がまだ続くのではという思いも否定できなかった。

 ここに至るまでに、少なく見積もって三百の騎兵の損失、場合によっては半数近くである五百弱を失っているかもしれない。

 五百程度の騎兵では、さすがに敵一万に挑むのはさすがに無謀。それにここまで敵にこちらを迎え撃つ準備が用意なされているという現実。

「ロボ大将軍、これは撤退ではありません! 後方で遅れがちになっている歩兵と合流を果たすのです。歩兵と合流した後、ツィカーデ城に改めて攻め寄せようではありませんか!」

 ロボは部下のその言葉に我が意を得たと感じた。「よかろう。撤退ではなく、遅れている歩兵との合流だな。よし下がるぞ!」ロボはそう叫び、自分が率先して後退を始めた。

 その際ロボは、「寄こせ!」と言ったかと思うと、馬(ホース)にまだ騎乗している一人の部下の足を引っ張り、彼をホースから引きずり下ろすや、そのホースに乗り、そのままに後方に向けて駆けた。

 ロボのその見苦しい行動に、彼についてきた部下も皆一様に鼻白んだが、それでもこの絶体絶命の状況から逃れる方が先とばかりに、皆が我先にと後退を始めたのであった。

 

「後方の歩兵と合流する……とはうまい言い回しがあったものだな」重装甲槍兵を指揮している槍兵のスーシャにそう話しかける者がいた。

 スーシャが声する方向に目を移すと、いつの間にその場に到着したのか最初にロボ軍を翻弄していた十四騎のホースハンターと、それを指揮していたリアンファがすぐ横にいた。

「これは、お早い到着ですね」とスーシャ。

「ジャオチュウ殿の諜報機関がこの周辺地域の土地を事細かに調査してくれていたおかげで、俺は森の中の脇道を迷わず駆けてここまで短時間で到着出来た。敵が撤退……否、後退した以上、すぐに追撃戦に移るつもりだ」

「今、馬防柵を取り除きますので二、三分、お時間を下さい」そう言うと、スーシャはその場の槍兵と弓兵を指揮し、結果一分で全ての馬防柵を脇に取り払った。

「スーシャ、お前の軍運用はじつに見事なものだ。カナリーノ殿が、あらゆる作戦に最も早く対応できるのはスーシャ殿であると、いたくお前のことを感心されていたぞ」

「いえいえ、私(わたくし)はカナリーノ殿の指示に素早く対処出来るのが取り柄なだけの凡将であります。とてもとても、クーロ様やカナリーノ殿のような独自の発想力は持っておりません。さあ、リアンファ殿、時間が無駄になってしまいます。すぐに追撃を……」

「おお、もう勝敗は決まってはいるが、最後の詰めで敵に足元をすくわれないよう努めよう」そう言うと、リアンファは配下のホースハンターと共に、撤退していくロボ軍の追撃を始めたのであった。

「敵は本隊の歩兵と合流して、再び攻めるつもりでいるようだが……。その本隊が既にいないと、いつ気付くことかな」スーシャは、リアンファたちの追撃を見送りながら、そう呟く。

 そして、スーシャ自身も重装槍兵と弓兵をまとめながら、前進を始めた。

 

「スーシャ、敵軍の動きはどうなっている?」隘路を前進しているスーシャに、後ろから話しかける者がいる。

 スーシャが振り返ると、後方から小型竜(ドラゴネット)に騎乗している一団が近づいてきていた。

「クーロ様、そしてパインロ様」スーシャが応じる。

 スーシャの重装甲槍兵と弓兵の混成軍に後ろから追いついてきたのは、クーロ軍の主力部隊であった。

 クーロ本人が率いているこの主力部隊は、竜弓兵(ドラゴンスナイパー)や竜騎兵(ドラゴンナイト)といった地上戦において最も攻守において優れている部隊であって、数こそ一万のクーロ軍にあって五百人規模の部隊ではあるが、精鋭中の精鋭であった。

 クーロ本人が率いるこの部隊は、親衛隊の役割も同時に担っている。クーロ本人が率いているとはいったが、将軍であるクーロは軍全体を把握する立場から、この主力軍を直接指揮できない状況も、今後しばしば起こり得る。

 その時の実質的な指揮官はパインロであった。

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 カナリーノ(ルーラの義妹。新生クーロ軍で軍運用の役割を担う)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 ジャオチュウ(パインロの友人。新生クーロ軍諜報部門の長)

 スーシャ(重装備の槍兵。新生クーロ軍重装甲部隊の長)

 パインロ(クーロの弓の師。新生クーロ軍親衛部隊の長)

 リアンファ(弓兵。新生クーロ軍先制部隊の長)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。狼将(ろうしょう)の別称をもつ)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 ツィカーデ城(フォルミーカ地方最東端の城)

 

(兵種名)

 第三段階(兵の習熟度の称号の一つ。下から三番目のランク。サードランクとも言う)

 ドラゴンナイト(最終段階の小型竜に騎乗する騎兵。竜騎兵とも言う)

 アーマーナイト(第三段階の重装備の槍兵)

 ドラゴンスナイパー(最終段階の小型竜に騎乗する重装備の弓兵。竜弓兵(りゅうきゅうへい)とも言う)

 ホースハンター(第三段階のホースに騎乗する軽装備の弓兵。騎弓兵(ききゅうへい)とも言う)

 

(竜名)

 ドラゴネット(十六竜の一種。人が神から乗用を許された竜。『小型竜』とも言う)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 ホース(馬のこと。現存する馬より巨大だと思われる)

 

 六大将軍伝説

 

 

【284 第二次西部攻略戦(十八) ~新生クーロ軍Ⅱ~】

 

 

〔本編〕

「ロボ将軍、これは敵の罠です! すぐに全騎兵に追撃中止の命令を出して下さい!!」ロボの隣を駆けている現状分析が正確にできる冷静な兵が、将軍に大声でそう告げる。

「追撃を中止しろだと! ……ロボ大将軍と呼ばないか!」

 ロボが、その言葉に反駁した刹那、その兵の左の胸に矢が深々と突き刺さり、その兵はそれ以上何も語ることなく、ホースから転げ落ちた。リアンファの矢であった。

 追撃してくる敵の様子をつぶさに見聞きしていたリアンファは、こちらの作戦を妨げようとする優秀な敵騎兵を狙い、見事に射殺したのであった。

「おのれ! 一気に追いついて全滅させろ!!」ロボが大声で叫ぶ。

 ロボ軍の騎兵たちは、騎乗しているホースにさらに鞭をくれ、追撃の馬脚を強める。

 リアンファ率いる十五騎のホースハンター。新生クーロ軍において、先制攻撃に特化した騎弓兵部隊であった。

 彼らは、火薬と魔力量を飽和状態に押し籠めた砂利を、矢のお尻に当たる矢筈(やはず)に仕込んだクーロ軍専用の矢を用い、敵の想定外にあたる二百メートルという通常の弓兵の倍の射程距離から敵を射抜く。

 その上、厳しい訓練の賜物として、連射技能、さらに瞬時に方向転換が出来る程の高度な馬術、また身体を捻った状態から馬上で片足を抜くことにより、真後ろに矢を射かけるという達人並みの馬術も含めた高等な弓術などを身につけた。

 これらの技能(スキル)により、十五騎でありながら都合百近くの敵騎兵を屠(ほふ)り、さらにそのまま残りの敵騎兵を作戦通り、こちらの有利な地に誘導させることに成功したのであった。

 十五騎のホースハンターが最初の三連射を仕掛けてより約五分後、道幅にして騎馬が十騎ぐらいしか並走できない隘路(あいろ)へと、いつしかロボ軍は巧みに誘導されていったのである。

 

 さて、リアンファ率いるホースハンター部隊の行先に、あるものが用意されていた。

 城や砦の内側に設置することにより、侵入してくる騎馬の動きを封じることが出来る馬防柵であった。

 高さが二メートルを超えるこのような柵は、急ごしらえで用意が出来るものではない。既にクーロがこの地域一帯を調べ上げ、その場所の適正に応じ前もって用意させたものに間違いなかった。

 そこから分かるのは、クーロが十日前の五月二〇日にフォルミーカ地方のツィカーデ城を占拠してから漫然と時を費やしていたわけではないということである。

 むろんそれはロボが入城したシュメッター城を攻略する術が見出せなかったための停滞ではない。むしろ、無策ゆえに時を費やしていると思わせて、ロボをシュメッター城からツィカーデ城襲撃に動かすのが真の狙いであった。

 その敵の手に全く気付くことが出来なかったロボは、八千で入城したシュメッター城からわざわざ出陣しただけでなく、二千程駐屯していたシュメッター城地方軍のうち、一千五百を七千のロボ軍の歩兵と共にツィカーデ城に向かわせたのであった。

 フルーメス王国の西側にあたるフォルミーカ地方、ミュッケ地方、そしてエフェメロプララ地方の要(かなめ)に位置する堅城シュメッター城。まだ二千の兵が城内に籠っていれば、一万のクーロ軍を数か月はそこに足止め出来る。

 仮にクーロ軍がシュメッター城を落とさずに進軍する場合には、少なくとも三千程度の兵はそのシュメッター城を封じるために配置しなければいけなかった。

 そのような重要な拠点シュメッター城から兵を千五百も動かし、五百という小勢力にしてしまったのである。

 

 さて、十五騎のホースハンターは馬防柵が見えるや、一気にホースの速力を上げそのまま一列になるや、一番右側の馬防柵が配備されていない隙間から、馬防柵の内側へと走り去ったのであった。

 敵ホースハンターに一気に振り切られたロボ軍の騎兵は、前方の馬防柵に気付く。その馬防柵の内側に配備されていた弓兵がロボ軍目がけて一斉に矢を射かけたのであった。

 兵の数は四十人程。この弓兵を指揮していたのは、弓兵の指揮官の一人ソキウスであった。

 ソキウスは、先のホースハンターを指揮していたリアンファ同様、龍王暦二〇一年のエーレ城奪還戦の折、当時小隊長であったクーロに協力した、弓の小隊長四人のうちの一人であった。

 四人の弓の小隊長はその後、クーロの隊に正式に入隊するわけであるが、龍王暦二〇三年のバルナート帝國とのバクラの地での戦いにおいて、二人の弓の指揮官であるバンディレインブとヤキンソシュが戦死する。四人のうち、生き残った二人がリアンファとソキウスであった。

 ソキウスの指揮している弓兵は、ハンターやアーチャーといった弓兵のうちでも第二段階の兵種に相当する、まだそれほど戦いに精通していない下級の兵たちであった。

 それでもソキウスによって指揮されたハンターやアーチャーたちは、四十という数も手伝い、ロボ軍の騎兵に少なからず損害を与えた。

「馬防柵など一気に蹴散らせ! 馬防柵の内側の弓兵の攻撃はさほどのものではない。一気に柵と共に蹂躙しろ!」ロボが大声を張り上げ、一気に馬防柵へと突撃した。

 

 ロボ将軍率いる敵騎兵は馬防柵に突撃するや即座に柵を破壊した。

 しかし、敵が馬防柵を破壊する間に、四十人のソキウス率いる弓兵隊は、道の両脇にある木々の間に逃げ込んだのであった。逃げ込んだ場所は木が鬱蒼(うっそう)と茂っている森であったため、騎馬で歩兵を追いかけるのは非常に難しかった。

 それよりロボ軍はその場の馬防柵を徹底的に破壊した上で先へ進んだ。

 この馬防柵の破壊に十数分の時が費やされたが、後からここに到着する歩兵の大部隊のためにも、このルートを完全に確保しておくのは重要なことであった。

 しかし、前進したロボ軍の行く手にさらに馬防柵が設置されている。

「おのれ!」ロボは顔を真っ赤にして呻(うめ)いた。敵の足止めに心底うんざりしてきている様子であった。早くしないと、他の五獣将が先に敵の籠っているツィカーデ城に到達してしまう。

 ロボは味方にその馬防柵に突進することを命じる。彼はこの状況でも、まだ別の味方の将軍に先を越されることを一番恐れていたのであった。

 

 

 

〔参考 用語集〕

(人名)

 クーロ(主人公。マデギリーク大将軍の養子。将軍)

 ソキウス(弓兵。新生クーロ軍弓兵部隊の長)

 バンディレインブ(クーロ隊の一員。弓兵。故人)

 ヤキンソシュ(クーロ隊の一員。弓兵。故人)

 リアンファ(弓兵。新生クーロ軍先制部隊の長)

 ロボ(フルーメス王国五獣将の一人。狼将(ろうしょう)の別称をもつ)

 

(国名)

 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)

 ソルトルムンク聖王国(ヴェルト八國の一つ。大陸中央部に位置する)

 フルーメス王国(ヴェルト八國の一つ。南の国)

 

(地名)

 エフェメロプララ地方(フルーメス王国領)

 シュメッター城(ミュッケ地方に建っている城。フルーメス王国東部地域における重要拠点)

 ツィカーデ城(フォルミーカ地方最東端の城)

 フォルミーカ地方(フルーメス王国領)

 ミュッケ地方(フルーメス王国領)

 

(兵種名)

 第二段階(兵の習熟度の称号の一つ。下から二番目のランク。この称号を与える権限は町や村の長或いは地方領主以上の者が持つ。セカンドランクとも言う)

 アーチャー(第二段階の重装備の弓兵)

 ハンター(第二段階の軽装備の弓兵)

 ホースハンター(第三段階のホースに騎乗する軽装備の弓兵。騎弓兵(ききゅうへい)とも言う)

 

(その他)

 五獣将(フルーメス王国で最も優れた五人の大将軍のこと)

 小隊長(小隊は十人規模の隊で、それを率いる隊長)

 ホース(馬のこと。現存する馬より巨大だと思われる)

 

(顛末)

 エーレ地方の戦い(ミケルクスド國からエーレ城を奪還する戦い。【039】~【062】を参照)

 バルナート帝國との戦い(バルナート帝國がバクラ地方に攻め込んだことによる防衛戦。【117】~【125】を参照)