国民年金の徴収強化 2 | 国家資格3(社労士、行政書士、社会福祉士)つをもて余している私の社会保障・労働問題考察

国家資格3(社労士、行政書士、社会福祉士)つをもて余している私の社会保障・労働問題考察

3つの国家試験合格者(登録をしていない)が語る社会保険や社会保障に関する考察,労働問題に加え、日々思うことを適当に語ります

 こんばんは。前回の1では、国民年金の保険料を収めている割合等には数字のマジックがあり、その数値を鵜呑みにはできず、年金財政に与える影響は大きくはないと書きました。そうすると、きちんと収めている人との公平感が問題となる訳です。

 ところで、強制的な徴収を行うのは一定の所得を超える人であると言うが、この「所得」というのがやっかいなのです。所得とは税法上の所得のことであり、収入から一定額を控除した額のことですが、仮に所得500万円あったとしても自由に使えるお金がどの程度あるかは人によるでしょう。所得500万円と所得300万円、どちらが生活に余裕があるのかは一概に判断できません。

 しかし、強制徴収するか否かの判断は上記の所得が基準であり、更に何らかの個人的事情を勘案することはありません。これまでも所得が基準というのは変わりませんが、差押えという公権力の行使をすることが増えるのです。真に支払う資力があるにも関わらずその義務を果たさないのなら、社会保険制度は被保険者が共同の負担により支えており、公平性や公正性は重んじられる必要がある以上、差押えもやむを得ず、その権利を行使しないことは逆に怠慢でしょう。

 話は少し変わりますが、厚生年金保険料を会社が滞納した場合は、差押えは義務と厚生年金保険法上となっています。一方、国民年金法では義務ではなく、「できる」規定、つまりは必ず差押えをする必要はないのです。なぜ、同じ年金法であっても規定がちがうのでしょうか。やはり、国民年金は個人を対象とし、加入はその収入等に関わらず義務であるため、前述した様に個別の事情を鑑みれば差押えに馴染まない事案も少なくないからだと思います。

 また、敢えてその様な規定となっていることは個別の事情を考慮した上で差押えするかを判断するよう法が期待しているとも読取れますが、実務的な観点からは、差押え対象者一人ひとりの事情を考慮することは困難とも想定され、このまま行けばほぼ画一的に一定以上の所得がある未納者には差押えが実行されるかもしれません。

 実務としてどのように行うのかは未知数な所もありますが、最終的には不服申立てや訴訟にて対応せざるを得ない事案も出てくるでしょう。