二月、友達との飲み会を終えて、終電で僕は帰宅していた。

 

二月の寒い季節にとっては電車の中は暖かかく、電車の揺れが心地よく、旧友との久しぶりの再会もありお酒を飲みすぎてしまったのか、ひどく酔っ払っていたこともあり、電車に乗って3分もしないうちに眠りについてしまっていた。

 

ガタンゴトンと揺れながら心地よく眠っていたとき、一人の女性が隣に座ってきた。目を瞑りながらも、その人が女性だと分かったのは良い匂いがしたからだ、一瞬でわかった。

 

次の瞬間、その女性は僕の肩をかりて、寝始めてしまった。見ず知らずの良い匂いがする女性の温もりを感じたとき、思わずドキッとし、眠気が冷めてしまったが、そのまま、何でもないかのように目を閉じ続け寝ているふりをした(平常心を保とうとしたが、内心は穏やかではなく、心臓はバクバクだったと思う)。

 

その女性はどういう気持ちなのか、どんな顔なんだろうか、体型はどんなのか、服装はどんなのか、気になることがありすぎる、女性のことで頭がいっぱいだった。そうこう考えているうちに、僕は思わず、雰囲気に身を任せて手を握った。

 

彼女はぎゅっと握り返してくれた。

嬉しかった。

 

一段と僕の鼓動が早くなるのを感じた。

そのまま、一駅、二駅、三駅と、握り続けた。変な感じだった。側から見たら、僕らはカップルだろう。

実際は、いまさっき、知り合った?ばかり。話をしてないし、ましてや顔も見てない。今のこの瞬間はどんな関係というんだろうか。

 

これがいわゆるボディーランゲージというのだろうか。

 

そのまま、終駅まで乗り続けた(僕の最寄り駅はとっくに過ぎている)。

 

僕はそのまま、「行こっか」という一言だけ。

僕らは朝を共に迎えた。

 

身支度をそそくさと済ませ、連絡先を交換せず、別れた。名前も知らない。これといった会話もほぼしていない。彼女について何も知らない。

 

人肌の恋しい季節だからこそ、生まれた言語を用いない会話。