イメージ 1
 
↑あらすじ・クレジットはこちらを参照してください。
 
戦前~戦中。
山の手のお宅で女中をしていた、タキの昔語り(自叙伝)で進みます。

豪邸ではない“小さいおうち”なので、タキは、主一家と近い所にいて、尽くし
(坊ちゃんの足のマッサージは、良い例)
それなりに、穏やかに暮らしていました。
あるとき、主の部下の板倉青年が訪問してから、この家に変化が訪れます。
特に、奥様(=時子)に……

この作品の興味は、“タキのしたこと”が、もたらす意味もですが
映画的には、松たか子が、とても素晴らしかった!!!!!
微笑んでも、怒っても、ときめいても、すねても……
どのシーンでも、場面にたくみになじんで、引き込まれました☆

▼~▼ネタバレで雑感です。
▼▼▼

1、昔の話

タキの自伝を読む若者が、戦時中の生活が楽しいはずがない、と
タキの想い出に、チャチャを入れるシーンがあります。

当時を知らず、教育(洗脳?)されてきた者(自分含む)は、
思い込みや今の価値観で、当時を判断しがちです。

タキの今の想いが後悔?であっても、
当時のタキには、それが良心で正義だったーとしたら
そのようなギャップは、ほかのことにも、通ずるのかもしれません。
大きな戦争が、台風よりひどく荒らして過ぎていった、前と後のように……

2.奥様(時子)の思慕

奥様が、夫の部下・板倉に、特別の感情を覚えたーー
それだけで、ああ不倫か……と、軽蔑しないで下さい。
不倫という一言で片づけたくない、“心模様”と、思いたいくらいです。

家族に尽くす主婦が、他人に“好意”を感じることは、悪しきことになりますが
“好意”を自覚したとき、彼女は、自分が感情を持つ生きた人間であると
再確認したときなのかもしれないーーと、思うからです。

しかし、男と女の性(さが)なのか
“好意“は、やがて、“恋愛“の気配を、帯びてきてしまいます。
そう自覚したくない。でも、だから、イライラする。
(その辺の松たか子の微妙な感情の揺れも、絶賛です☆)

板倉に見合いを勧める、夫の使いで、
初めて、彼の下宿に行ったとき、時子は
彼の心の中の一線が、時子に破られているのを、知ったのだと思う。

そして、
時子から、再び逢いに行ったとき、その一線が、双方から越えられた可能性を
タキが、時子の帯の結び方で悟る…….この、心憎さよ……Qoo~(>_<)

けれど、「家の平穏は女中で決まる」と、かつて教えられたタキは、
噂になりそうな二人を、このままではいけないと思います。
たとえ、彼が、出征するとしても……

3.タキの守ったもの・守れなかったもの

板倉の出征前に、タキは、時子から“逢びき”の手紙を預かり、使いに出ました。
しかし、時子に逢わないまま、板倉は出征し
やがて、空襲に遭った時子ら夫婦は、亡くなってしまいます。

タキの自叙伝も、そこで終わり、老いたタキは、泣き崩れます……
タキの死後、タキが、時子の手紙を、板倉に渡さなかったことが、発覚します。

タキが、この家の平穏を守るために、
良心と正義から二人の仲を裂いたことは、よ~くわかります。

けれど、この作品の素晴らしさは、それだけじゃないこと☆

1つは、時子の旧友が、時子は女学校時代に、
同性の憧れの存在だったことを、タキに話したことです。
大好きなお宅の、素敵な奥様は、ステキなままでいて欲しい。
タキは、時子が、不倫でボロボロになるのを、見ちゃおれなかったのではないかー

もう1つは、タキだって、女の子です♪
奥様が、ほかの社員とは違うヮ☆と高く買っていた青年に、
タキも好意を感じていたかもしれません。
坊ちゃんと3人で、海に行ったらしい話が、チラッとだけ出るのも暗示的ですが
タキは、直接、付き合えなくても、
青年には、不倫関係で女性と付き合ってほしくないと思ったかもしれません。
(私の思い込みですが……^^;)

戦争で、二人が永遠に引き裂かれる前に
タキは、自分が二人を引き裂いてしまったーー

「小さいおうち」の名誉と平穏は、守ったかもしれないけれど
人が人を思い慕う、いや、この場合
戦地での無事を祈る、奥様の誠意の糸を、勝手に、切ってしまった……
タキは、その悔恨を、あとから、重荷として、ずっと抱えてきた…
「長く生き過ぎた……」
タキの言葉の意味が、2回目に聞いたとき、ずしんと心に沈みます……


▼▼▼

赤い屋根の「小さなおうち」と、彼らが、描かれた絵がありました。
そこには、平穏を乱す、事件も戦争もありません。
「小さいおうち」でさえ、一個人でさえ、
幸せに平穏に暮らすのは、むずかしいものかもしれない….
けれど、
なんやかやあっても、ささやかな幸せを、大切に生きていきたい……
そんな気持ちが、余韻になった逸品です☆





イメージ 1