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公式サイトです、http://mbp-movie.com/
↑あらすじ・クレジットはこちらを参照ください。
 
 
 
妻夫木君の泣きっぷりがいいと評判だったので鑑賞した。
学生運動の過激派・梅山と、彼を取材する記者・沢田の話だが、
学生運動の思い出ある人は、それなりの想いがあると思いつつ
沢田の涙には、確かに、ひとこと言いたくなるような思うところあった。

▼▼
(内容にふれています)
 
まず、梅山のこと。
東大紛争という宴のあとに登場した者たちは、どこかにその燃えカスの
くすぶる臭いを求めるかのように、活動の場を求めていたのだと思う。

白熱した議論と問答する姿は、確かに若者の血を騒がせる。
それで、一体、彼らは何をしたかったのか?という問いがついて回るのも
否めない。目的は何?と。

その答えを、梅山ははぐらかし続けるが、しいて言えば
梅山の目的は、行動か?
行動のために行動する。

象徴的なのが、ヘルメット。
彼らは、ヘルメットをかぶろうと(行動)してはいるが
実は、ヘルメットを赤く塗りたくる(思想)ことに意義があったのかもしれないと思える。

安保闘争の当時、参加学生に聞いた人がいた。
「君は、安保のどこに反対なのか?と」彼曰く
「中身は知らないが、反対することに意味がある」

連帯を求め、孤独をいとわない――
狂気に近づくほど、正気になれる
――

彼らの答え(目的?)にたどりつく前にあるのは、矛盾か?空虚か??


そして、革命のためには手段を選ばない革命家だからなのか
梅山は、偽ることをいとわなかった。
梅山と言う名も本名ではなく、所属グループも詐称し、
沢田にも、だましてカンパをせしめた。
逮捕後は、別人に責任をなすりつけ、何の後ろめたさもない様子には、
彼の自己批判とは、何ぞや?と思う。

ましてや、自衛官を殺害しておいて、
自衛隊員の前で割腹死した三島由紀夫に近づいた、と豪語する有様だ………………

この見事なまでの活動家ぶりが、虚実の境目があやういまでの、

松山ケンイチのイッちゃった感で、絶妙だった。

そして、そんな梅山を踏まえての沢田は、どうだったかと言うと……

学生運動を遠巻きに見ていたことが、これまた、くすぶっていたのか

もう1度、その生煮えの気持ちを、梅山に乗せて、焼きなおそうとしていたかの様だった。

彼には、こういう後ろめたさが、いつもつきまとうのだが
冒頭に呼応した結末が、いいものを魅せてくれたと思う。

その前に、きちんと泣ける男が好きというセリフを、
社会に出たばかりの小娘ちゃんに言わせるのが、心にくい。
これが、わけ知りのお姉サマに言わせていたら、すでに、解決済みの答えになって
若い記者の問いとして、ラストまで残らなかっただろう。

半ば、夢の続きを見るように、梅山の活動に乗っかった沢田だったが、
踊らされるように、巻き込まれ、逮捕までされるという、一連の宴のあと
ふと、居酒屋に入った。

そこの主人は、沢田が、以前、潜入取材した男・タモツだった。

社会を正直に映すジャーナリズムのために、彼は、タモツに身分を偽っていたのだが
そのことに、沢田は、後ろめたさを感じていた。
ジャーナリストである前に、一人の人間であるなら、
正直を理由に偽るとは、何なのだろう………

信念だか反権力だとかを大義名分に、堂々とウソをかたっていた梅山と、
同じではないのか………

けれど、目の前にいるタモツは、どうだろう ……

あのとき、社会の裏道にいて、こわい兄ちゃんにボコボコにされるままだったのに
それでも、金に困ったら来いよ、と沢田に言ってくれた男なのだ………………….
そして、今、うまく生きていてくれている
………………….
(それが、タモツの得た答えだったのかも?)


タモツの前では、沢田はいろんな意味で、ジャーナリストではなかった。
「俺、記者にはなれなかった」と言ったのは、後ろめたさ(ウソ)の続きではなく
ジャーナリストである前に、一人の人間でいようとしたのかもしれない。
あるいは、
再びタモツの元に迷い込んだ、一人の弟分として
タモツを前にした沢田は、わきあがる情という涙を、止められなかったのだと思う……

▼▼
 
沢田の嗚咽は、もはや、心の内を隠しきれない、後ろめたさがほどけたと言うか
偽りのない正直な男の姿だったのだと、私は思いたい。

と言うか、あの泣きざまは、ズルい。
ズルいほど、雄弁に、見る人の情を引き寄せては、かき乱される想いがする……

涙には、つきなみかもしれないが、やはり、それぞれに思うところあると思う。
 
 
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