JBL Control1 PRO エッジ補強 | YUTAKA ProTools

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”YUTAKA ProTools”でのメンテナンス日記を公開しています。

~はじめに~

 猫の肉球って思わずプニプニしたくなりますよね。ねこちゃんによってプニプニ具合が違いますし、「それで・・なに?」という具合にちょっと嫌そうな表情もかわいいです。

 スピーカーのエッジも同様におもわずプニプニしてみたくなるものです。猫と違う所は、スキンシップをするほどに親密になれるのではなく、崩壊していくという点がその一つとして挙げられます。

 高校生の時に購入したこちらのJBL/Control1 PROですが、そろそろウレタンエッジ特有の経年劣化が表れ始める頃です。スチール製のグリルを外してプニプニ(触診)したところ、以前よりも弾力がなく加水分解による劣化が進んでいる様子でした。このまま放置したり、強くプニプニすればエッジが破ける恐れがあります。 

 さて、今回はウレタンエッジがまだ形状を保っている場合に有効な形態を保持するすることを目的とした延命方法を試してみます。

 

※この方法はゴムコートでエッジを補強する為、かろうじて形状を保っている崩壊寸前までの劣化具合に施すことができる応急処置です。エッジが崩壊して無くなってしまっている場合は、別の方法でエッジを工作するか、対応するエッジへの張替えが必要です。

 

~デザイン(設計と仕様)の紹介~

 Control1にはYAMAHA NS10シリーズの様に、見かけはほぼ同じですがいくつか種類があります。その中でもJBL PROFESSIONALが業務用向けに設計・生産しているモデルが末尾にPROが付きます。

 具体的にどこが違うかと言うと、クロスオーバーとツイーターユニットが違います。PROモデルはクロスオーバーポイントのスロープカーブが急になっており、クロスポイントも4.2kHzとなっていまます。一方で民生向けモデルはスロープカーブが穏やかな分、ツイーターとウーハーで被る帯域が広い為にクロスポイントも6kHz付近の設定になっています。ウーハーからもだいぶ高音が出ているという事になりますね。

 つまり、各ユニットにオーバーラップする帯域が少ないPROモデルの方が許容入力も高くなるという恩恵もあります。対する設定の民生向けモデルはスロープカーブが穏やかな分、より自然な繋がりで(リスニングとしては)聴きやすいと言えるのかもしれません。

 

 スペックシートを見てみましょう。耐入力は流石のプロ機という事もあり、150wです。

周波数特性は80~20kHzとなっていますが、モニターSPという事もあり、イコライジングにとても素直ですす。ブーストカットを忠実に表現してくれるので、セッティングによってはどこかにスーパーウーファーがあると錯覚するほどに迫力のある音響再現も可能です。それもこの耐入力あっての対応力と言えるでしょう。

 

~余談~

 ここでメーカー比較をするのは少々記事違いですが、同格のEV(ElectroVoice)製のS-40を使用して気づいた事です。JBL/Control1PROをしばらくテレビ用として使っていましたが、どうもセリフを聞き取ろうとするとボリュームが大きくなってしまう事に気が付きました。そこでSR用スピーカーとしてはライバル関係のメーカーでもあるEVのSPに変えてみたところ、「声が前に出てくる」印象でした。何が違うのだろう?しばらくスイッチャーで切り替えながら比較した結果、特に人間の「声」の帯域を上手く出すような特性であるように感じました。

 「記録のNikon」「記憶のCanon」。カメラに詳しい方ならピンとくるはずです。Nikonはより現実に近い色を忠実に再現できる為、ISS(国際宇宙ステーション)や警察の記録写真の撮影などにも多く用いられている様です。一方Canonは、より鮮やかで素敵な色合い、つまり脳内で再生される綺麗な記憶を表現することに長けている様で、風景からポートレートまで、正確性よりも見栄えを重視する人に好まれる様ですね。

 置き換えると「聴かせるJBL」「聞かせるEV」と言う例えがとてもしっくりきました。JBLのSPは比較的フラットで低音から高音まで非常に綺麗に、丁寧に再生してくれます。流石、元シアタースピーカーで大定番となったALTEC社の技術担当副社長ジェームスさんが創業(JBL)したメーカーなだけあります。EVはWOWエフェクトが掛かったような輪郭強調の効果を感じられます。アナウンスや音飛びが良く聞こえることからPAの現場で人気な理由もわかります。

 どちらのメーカーにも愛好家が存在し、互いを悪くいうシーンを見かけますが、一長一短ではなく適材適所なのではないかなと私は感じます。因みに我が家のTV用SPは以上の理由からHiBoxがEV製でスーパーウーファーはJBL製の構成で落ち着いています。

 

~本日の作業~

■全体の流れ

①エンクロージャーを開ける

②エッジの液ゴム塗装

③乾燥

 

※①エンクロージャーを開ける


エンクロージャー全面から六角のビスでとまっています。

 

②エッジの液ゴム塗装


 絵具用の筆でユタカメイク/液体ゴム BE-1(クリア)を使いました.。水性の為、原液のままでもウレタンエッジにスーっと染み込んでくれます。

 


 全体に薄く塗り終わりました。塗った部分は薄く緑色に見えるので見分けが付きやすいですね。クリアタイプなので後に無色となります。

 

③乾燥


 ネコが近くを歩いて毛が付着しそうだったので、JBLのスピーカーの上でファンを使って乾かしました。(少々使い方を間違えている気がしますが・・)

 

~完了


 役2時間ほどで触れる程度に乾いたので取り付けます。完全に硬化させる為には丸一日くらい見積もったほうが良いそうです。

 最初のうちはまだエッジが硬いので少しだけモコモコとした音に感じられました。2日ほど適当に作業用BGMとしてエージングすることで、特別違和感を感じることはなくなりました。

 コツは「ムラなく均一に必要最小限の薄塗り」を心掛けることで、性能低下を抑えることが出来ます。