不況の回復期はマネーストックが上がる必要はない | グレッグのブログ

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マネタリーベースを増やしてもマネーストックが増えていないから、金融緩和は効果がないと聞く。

実際、アメリカのQE2でもマネーストックは増えていない。

ホントに効果がないのだろうか?

そしてやらないよりはやった方がいいレベルなのか?


中央銀行はマネーストックを直接的に上げる手段を通常持たない。

マネタリーベースに働きかけるだけである。

マネタリーベースを増やせばどういう効果があるだろう。

貨幣需要関数から考察してみる。

(M/P)d=L(r+πe , Y)である。

市中の国債を買い入れ現金を銀行の当座預金に積み上げればインフレ予想が起こる。

実際、アメリカの期待インフレ率の指標であるTIPSスプレッドは上昇している。

πeが上がれば名目利子率が上がるので貨幣需要は減少する。

貨幣供給であるマネーストックは上がっていない。

だとすれば物価は上昇せざるを得ないのである。

将来のインフレ予想が現在の物価を上げるわけだ。

これは金融緩和にしかできない。

アメリカはデフレ懸念であったので、金融緩和は必須政策であったろう。


また貨幣数量理論MV=PTから考察すると、名目利子率が上昇することによって貨幣の需要が低下するとはどういう意味合いなんだろう?

貨幣需要が低下するとは1ドルの所得のうちで貨幣で保持する割合が減るということだ。

つまり、投資が増えるということだ。

名目利子率が上がっているので当然である。

つまり、それは貨幣が動くことを意味する。貨幣の流通速度が上がるわけである。

アメリカの金融緩和による株高はこういう経路だろう。

つまり左辺がVの上昇によって増加するわけだから、右辺のPもしくはTが増加するはずだ。

アメリカはデフレ懸念なので、Pがなかなか上昇しないがTは上がっているはずである。


そもそも不況の脱出時、大型の金融緩和を行った直後は貨幣、流動性が潤沢であるのでマネーストックは増えない。だからと言って金融緩和に効果がないわけではない。貨幣需要が下がり、貨幣の流通速度の上昇によってPやTを上げることを狙った政策なのである。

今この時期に注視しなければならないのはマネーストックや信用乗数ではなく、物価および実質GDP、失業率である。失業率は遅行指数であることを考慮にいれるべきだ。

QE2は確実に効果を上げるはずだ。