あなたの宝物はなんですか?

少々頭の毛が残念な試験官の30代中ばの男性が聞いて来た。就職の集団面接でそんな事を聞かれると思わなかったので僕はあわあわと口ごもり何も答えられなかった。次の人へとその質問が移った時に、幼稚園の受験か!と心の中でツッコんでいた。答えられなかった時点で受かる訳ねえかと体の緊張がとけどうでもよくなり、その次の人へと質問が移った時には、幼稚園じゃないか、小学校かな?とツッコミを手直ししていた。

家に帰ってから一目散にネクタイを外しソファーへ海岸に打ちあげられたアザラシの様に寝転がった。体中の毒を抜く様に大きなため息を1度してからぼーっと考えた。あの髪の毛が残念な試験官のして来た質問だ。

あなたの宝物はなんですか?

お金かな?お金じゃないか大した貯金も無いし。子供の頃から大事にしてるヤッターマンのレコード?いやいや思い出はあるけど宝物かと聞かれたらそこまでではないな。まさか!エッチなDVD…と脳裏によぎった瞬間トルコ行進曲が鳴った。


『もしもし』

『あんた今日どうだったの?』


母親はいつでも電話のタイミングがずば抜けている。まさか僕がエッチなDVDが宝物かも?と考えている時に電話をして来たとは夢にも思わないだろう。電話の話題は今日の話からあんたはいつもそうねとうだうだ説教じみた小言へと移り僕は面倒になって話題を変えるため、俺の宝物ってなんだろう?と唐突に聞いてみた。すると母親は


『むか~しにお母さん言った事あるよ、うふふふ』


と笑いトーンを変えとりあえず頑張りなさいよと言われた同時に電話を切られた。

切るのはえーわ!と電話を投げた瞬間またトルコ行進曲が鳴った。まだ小言が言い足りないかこの人はとぶっきらぼうに電話を出た


『もしもし』

『いつもの所でいつものメンバーで飲むけど?』


母親はいつでも裏切ってくれる。電話の主は幼なじみの祐介だった。僕はあいよ~と言ういつもの気の抜けたコーラの様な返事で電話を切りノーネクタイのスーツ姿のまま家を出た。店に向かう途中でも答えのでない迷い事をずっと考えていた。出来る事なら歩いてる人皆に

あなたの宝物はなんですか?

と聞いて周りたかったけど今の格好でそんな事をしたらきっとリストラされた若いサラリーマンが気がふれたのか?思われるだろう。この質問は時と場合を間違えると怪しい質問になるんだなと言うどうでも良い答えが出た所でいつもの店に着きドアを開けた。
見渡すとそこには小学校から誰一人欠ける事も無い付き合いのいつもの7人が勢揃いして


『おいどーせダメだったんだろ?』

『お前が就職なんか出来る訳がない』

『残念会開始します!飲みますよ~』


と口々に好き放題言いながら冷えたビールを差し出して来た。
本当にいっつもそうだ。こいつらには言わなくても全部見透かされる。まるで心理学者の集団。僕がフラレた時、足の骨を折った時、そして今回も。人が失敗するとすぐ集まってお祭り騒ぎだ。
ちぇっと思ったが冷えたビールで喉を濡らすと諦めがつき安堵感に見舞われた。これもいっつもそうだ。失敗もコイツらにかかればどうでも良くなってしまう。



あなたの宝物はなんですか?

学生時代に毎晩遊びに誘いに来るコイツらを見て母親が僕に言った


『毎晩毎晩ふらふら遊んでその分の力を勉強に回したら赤点取るはめにならないんだけどね…でもあんたの宝物だから大事にしなさい』




ってか書くと言ったものの

出来上がりに不安が残るので

お手柔らかにお願いします


ぬほー




Q,FC東京好きなんですか?

まさかこの質問が来るとは…はい好きです!『トーキョー魂』って番組もやってますぜひ。