この頃よく眠れない。
また夜が明けようとしている。
朝だ。
俺はまた何もやり遂げることが出来ないまま朝を迎えてしまった。
明らかに無駄と分かりきった時間を過ごしていた。
俺は前から朝が好きじゃなかった。
勉強が苦手な俺は机に向かって気付くといつも空が明るくなっている。
勿論レポート用紙は綺麗なまま。
曲を書いてみようと思う時だってそうだ。何もしてないときすら。
いつも気が付くと無駄な時間が流れ朝がもうそこまで迎えに来ている。
そんな心が切なくなるような朝が嫌いだ。
しかしどうだろう。
嫌いなのはあくまで「無力な自分」であって、朝が嫌いなんてことはないのかもしれないとふと思う。
寝覚めの良い朝に散歩に出かける。
肌をかすめる心地よい風。透き通るような空気。
静かに黄色くなる空にうっすらと照らされる絹のような朝の薄雲。
楽しげな鳥のさえずり。烏の声。
大通りを寂しそうに走る一台の車の音。
嫌いなはずの朝なのに感覚が研ぎ澄まされる。
肌で、耳で、目で、鼻で。全ての感覚を使って独り占めしたような静かな街を歩く。
朝も悪くないじゃないか。
結局嫌いなのは無力な自分だったんだ。
俺は妄想を走らせる。
眠れない夜
自転車を君の家まで走らせる
家の前まで行くと、君は外で待ってた
君はどこか寂しげな表情で微笑みかけてくる
俺は胸が苦しくなった
「このまま二人で逃げよう」
俺は言った
そして君の手を強く握る
まだ暗い冬の午前四時半
二人だけの世界をひたすら走った
どことなく疲れた顔をした始発電車に乗り込む
電車に揺られながら誰も知らない街を目指す
無情にも朝日がゆっくりと昇ってくる
君の綺麗な髪が赤茶色に照らされている
そんな君の横顔にぼーっと見とれる
ゆっくりと走る無人の電車
車内に線路の音が響く
君は何も言わなかった
強く手を握ったまま
どうこう言ってるうちにまた夜が明けた。
今日もまた眠れなかった。
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