【軍事ワールド】元軍人に騙された韓国軍 軍用機の潤滑油にトラクター用納品 あわや大惨事 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 韓国産の安価な潤滑油を「米国産の最高級品」と偽って軍に納品し、差額の約15億ウォン(約1億5千万円)をだまし取っていた韓国の化学製品会社代表らが逮捕された。当該の潤滑油を使用していた韓国空軍の航空機は墜落などの大惨事を引き起こしかねない状態だったとして韓国内では大騒ぎとなったが、これは一民間業者の不正では済まなかった。逮捕された会社代表はかつて軍人だったのだ。元軍人が軍を騙すという、信じがたい犯罪の背景は-。(岡田敏彦)

偽物を本物に

 韓国通信社の聯合ニュースによると、不正納品が明らかになったのは5月25日。捜査当局によると、この化学薬品業者はこみ入った手口で偽物を本物に“ロンダリング”していた。

 業者はまず、韓国で農作業用トラクターや二輪車に使われる低品質の安価な潤滑油をまとめて米国に輸出。相手先は米国内の架空会社(ペーパーカンパニー)で、この段階で製品に貼り付けるブランドラベルなどを、あらかじめ偽造した米国の一流品のラベルにはり替え、米国製の高級品として韓国へ輸出していた。納品に必要な試験成績書など書類一式も巧妙に偽造し、韓国防衛事業庁に提出していたという。

 現地紙の毎日経済新聞によると、その量は2014年から昨年6月までにドラム缶489本に缶やチューブ容器3万3990個など。計43回にわたって偽物の納品を繰り返していた。その影響は、恐るべきものだった。

フェイクの危険性

 同紙などによると、当該の潤滑油を使った空軍の航空機では機体の異常振動が発生したほか、エンジンのシリンダーヘッドに亀裂が発生するなどの損傷で、墜落を避けるため飛行を中断した航空機もあった。

 海軍のヘリコプターでも機体が損傷したという。また同会社の納品したさび止め剤を用いた艦艇では「推進制御装置や電子基板が溶ける現象が発生した」(聯合ニュース)。

 たかがオイル、と軽視はできない。第二次世界大戦時、米英連合軍は欧州戦線でドイツ軍の強力な戦車や戦闘機相手に楽ではない戦いを強いられた。その結果、戦場で直接対峙する前に叩こうという発想が生まれる。前線への列車輸送時に叩けば、いや戦闘機や戦車の工場を爆撃して完成前に潰してしまえばどうか。しかし工場はドイツ各地に分散している-。この発想は最終的に、ボールベアリング工場の爆撃につながる。ボールベアリングがなければエンジンが作れない。走れない戦車や飛べない戦闘機がいくらあろうが怖くない、というわけだ。潤滑油も、このボールベアリングと同じ類いの重要な戦略物資といえる。

 さらに捜査当局が追及している余罪のなかには、火力発電所の発電タービンに使う潤滑油を同様の手口で米国産に偽造したとの疑いも浮上している。現地メディアは「発電所に納品された潤滑油は、まだ使用されていなかった」としたうえで「実際に使用した場合、火災になる危険性が高く、もし火災が起きれば(一部地域が)大規模な停電など電力不足に陥る可能性があった」と指摘した。

悪のコラボ

 国家の安全保障を預かる軍隊を騙す大胆な手口はどこでヒントを得たのか。実はこの偽ブランド品業者は、軍と密接な関わりがあった。

 逮捕された業者代表(58)は元軍人で、現役時は副士官だった。韓国では男性は基本的に全員徴兵の対象なので、徴兵期間の中心を成す20〜30歳以上はほぼ全員が「元軍人」とみなせるが、志願入隊した職業軍人と徴兵された一般兵の間には大きな違いがある。

 徴兵で最も一般的な、陸軍に入隊した場合、徴兵期間は21カ月だ。二等兵として入隊後、一等兵から上等兵へと、期間とともにほぼ自動的に昇進し、兵長となって除隊する。これ以上、つまり下士官から上の階級は職業軍人しかなれない。

 今回逮捕された会社代表は元副士官(空軍下士官)で、大量生産の徴兵された下級兵士ではなく、職業軍人だった。この“仕事中”に犯行につながる知識を得たと現地マスコミは指摘する。元副士官は現役時には総務・経理業務を担当しており、潤滑油をはじめ様々な補給品が軍に納品される際、受け取る軍側で特別な手続きや検査がなく、数量や梱包、中身の破損状態を肉眼で見る程度だという実態を知っていたというのだ。

 捜査当局は、この代表が2008年から軍の入札に参加、納品していたとして余罪を追及しているが、こうした「軍にまつわる不正」は一向になくならない。

 かつては大統領府の青瓦台を守る対空機関砲の砲身に韓国産の偽物が使われていたことが明らかに。また軍艦に搭載するソナー(音波探知機)の代わりに安価な魚群探知機を装備して大問題ともなった。

 韓国では、北朝鮮の脅威に対抗するため軍の予算確保が重視されるが、この軍事費のうまみにあずかろうとする業者と元軍人の“悪のコラボ”が後を絶たないのだ。

軍人からブローカーへ

 韓国テレビ局のJTBCはその一端を昨年9月に紹介した。韓国で従業員約10人の中小企業が腹腔鏡手術器具を開発した。軍の病院に売り込もうとしたが、人脈がないためうまくいかない。 そこでこの企業は、とある軍のOBを会長として迎え入れ、給料300万ウォン(約30万円)に加えて接待用の法人カードまで与え、「ブローカーとしての役割を任せた」という。国を守る軍事費に手を着けて懐を潤す軍OBたちの前では、北朝鮮の軍事力の脅威も「どこ吹く風」のようだ。