「勝手に完治」もあり得る? 花粉症のウソ・ホント | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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◆ごく稀に「勝手に治る」!? 花粉症自然治癒のウソ・ホント

気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのその他のアレルギーと比べても、花粉症やアレルギー性鼻炎は、自然に治ることが非常に少ないです。

「去年、突然花粉症が治ったと思っていたのに、今年はまた目がかゆい」「出産したら花粉症が治ったみたい!」「宣伝されていたお茶を飲んだら治った!」など、個人の体験談として「花粉症が治った話」はたまに耳にします。しかし実際には、花粉症の症状は、花粉の飛散量やその時の個々人のコンディションによっても左右されるものです。たまたま運がよく花粉の飛散量が少ない年が続いたり、何かしらそのときの身体の状態が花粉症に対するアレルギー反応に抗える状態になっていた場合、自覚する辛い症状がほぼ現れず、「治った!」と思えるシーズンもあるかもしれません。

しかし、花粉の飛散量が多い年やコンディションが悪い年には、やはり症状が出てしまって、再発してしまった……と思うことでしょう。これは一度治って再発したわけではなく、たまたま運よく花粉症の症状が出なかった年があっただけにすぎない可能性があります。1~2年落ち着いていても結局身体が花粉に反応してしまっている以上、花粉症が治ったと言えないわけです。例えば、症状がなくても、スギ花粉症に対するIgEと呼ばれる数字が高いままということがあります。

では一度花粉症を発症してしまった場合、一生涯、花粉の季節のたびに辛い思いをしなくてはならないのでしょうか? 実は「花粉症が勝手に治ること」も可能性としてはあるのです。スギ花粉症の自然治癒率は報告に差があり、症状の調査になってしまうので、まとめると数%あるといわれています(鼻アレルギー診療ガイドライン2016より)。「数%」を多いと見るか低いと見るかは人によるでしょうが、実際に花粉症が治ってしまう人もいるのです。数字がはっきりしないのは、「治った」と判断できる検査方法が無く、また症状が治まった人がわざわざ治ったか確認をしに病院を訪れることはまずないため、治った割合の調査がしにくいと言われています。ただ、後述しますが高齢者の花粉症の有病率が低いことから、自然治癒している人が一定数いる可能性も考えられるわけです。

もし1~2年ではなく概ね5年間(少なくとも3年間)、全く花粉症の症状がなければ、治ったと考えてもよいかもしれません。

◆出産によって花粉症は治る? 悪化する?

花粉症は「出産すればよくなる」というほど単純ではありません。逆もしかりで、出産のせいで発症する人が多いというわけでもありません。しかし、どちらのケースも起こっています。出産しても花粉症の症状に変化のない人もいます。そもそも、花粉症の症状は非常に個人差が大きいことや、出産の時期や出産以外の要素の関与もあり、一概に言えないのです。

「出産後に花粉症が良くなった(軽くなった)」という場合に、その理由は不明ですが、可能性としてはホルモンバランスの変化や、体質の変化によって免疫の状態が変わったことも考えられます。一概によいこととも言い切れませんが、免疫反応が弱くなることで、過度なアレルギー反応も弱くなり、結果として花粉症の症状が軽くなる可能性があります。

◆高齢者になってから花粉症デビューしてしまうことはあるの?

免疫の低下に伴い、花粉症の有病率は50~59歳で33.1%、70歳以上で11.3%と低下します。そのため、一般的には「高齢になると花粉症の発症リスクは減る」といえます。しかしゼロではありません。

特に花粉飛散が多い年には、40~70歳代で花粉症の有病率が増加していますので、「これまで何のアレルギーもなく70になった。今さら花粉症なんて」と自信過剰になってはいけません。高齢者が花粉症を発症しないわけではないのです。

◆花粉症だと「がん」の発症が少ない?

また、巷の噂とは違いますが、興味深い調査結果も発表されています。群馬県で行われた疫学調査によると、「花粉症があると、ガンで死亡する危険率が52%減少する」との報告があるのです。これには免疫の関与が考えられています。つまり、アレルギーの強さと免疫の強さが関連することによるかもしれません(東京大学 小西祥子先生の論文 Clin Exp Allergy 46:1083-1086,2016)。

一方でガンだけでなく、全体的な死亡リスクも43%減少していることから、今後のさらなる検証が必要です。

◆花粉症を治癒する治療方法は「免疫療法」

自然治癒の可能性が非常に低い花粉症ですが、皮下または舌下にスギ花粉の成分を毎日継続的に投与することで、花粉に対する体のアレルギー反応を抑える治療法があります。花粉症に対するアレルギー反応が減れば、症状はよくなり、花粉の飛散量が少ない時には、症状が出なくなる可能性があります。

免疫療法が効果的な理由としては、

・アレルギーを起こす物質を毎日体内に入れることで、免疫細胞が花粉を異物と判断しなくなる可能性

・免疫細胞が産生するヒスタミンなどの物質が常にない状態になっているために症状が出なくなる可能性

・スギに反応する免疫グロブリンであるIgEを低下させる可能性

・IgEを抑えるIgGが体内で作られる可能性

などが言われていますが、まだ新しい治療法で不明な点もあります。

しかし免疫細胞が反応しなくなれば、ほぼ治癒したと考えられますので、花粉症を治す治療法の1つです。

免疫療法の中でも、比較的副作用が少ないのが、舌下免疫療法です。

この免疫療法は、花粉の飛散時期には開始できません。もし今年タイミングを逃してしまった方は、飛散時期が終わってから数カ月後、なるべく早めに開始した方が良いでしょう。遅くとも来年の花粉シーズンに備えて11月までには開始することをおすすめいたします。今年、スギ花粉症の症状がひどいと思った方は、今年の夏ぐらいから舌下免疫療法を開始すれば、スギ花粉症が治る可能性はあるでしょう。

清益 功浩