妊娠中の果物摂取、子供の知能向上に影響か | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 妊婦が果物を多く摂取すると、生まれてくる健康な子供の知能指数が高くなる可能性があることが、新たに発表された研究で明らかになった。

 カナダ・アルバータ大学の研究グループが同国の688人の子供を調査したところ、妊婦の果物摂取量の多さと比例して、生まれてきた子供の生後1年後の知能が高い傾向があったという。グループは新生児の発達の経年研究をする同国の機関から得られたデータを元に調査を行った。

 4月にEバイオ・メディシン誌に掲載された研究結果はあくまでも予備段階で、ほ乳類や人体での今後の研究の参考にすべき程度のものだと専門家は話す。しかし子供の知能発達に影響を与えるとされる食物はこれまで魚しかなかったことを考えると、今回の発表は大きな出来事だ。

 アルバータ大学で小児科学を研究し今回の調査も行ったピウシ・マンダネ准教授は、明確な違いが見られた実験結果に驚いたと話す。記憶力や学習能力の研究によく使われるハエを使った実験の再確認を同僚に依頼したところ、自らの調査と一致する結論が得られたという。

 ただ、マンダネ氏は「妊婦に大量の果物を摂取してもらいたいわけではない」とし、「これはあくまでも1回の研究であり、果物の摂取増加による健康への影響はまだ調査していない」と語る。

 専門家らによると、妊娠中に大量の果物を摂取すると血糖値が上がり、妊娠糖尿病や急激な体重増加などを引き起こす可能性があるという。

 今回の研究で調査対象となった妊婦の半数は、米政府が推奨する量の果物(1日当たり1.5カップから2カップ)を食べていなかったという。マンダネ氏は妊婦への助言として、「この推奨量程度は摂取すべき」と話す。 

果物以外にオメガ3脂肪酸も

 妊婦の栄養不足が胎児の発達にどう影響をするのかを調査した研究はこれまでもあり、妊娠初期に葉酸の摂取が足りないと胎児の神経管に影響が出ることや、鉄分やヨウ素を十分に摂取することが胎児の脳の発達に必要であることなどは明らかになってきている。しかし、妊婦の栄養摂取が生まれてくる子供の知能に与える影響を調査した研究は、これまでにあまりない。

 魚などに含まれるオメガ3脂肪酸は脳細胞の膜組織を作るのに必要とされ、妊娠中に多くの魚を摂取した場合、生まれた子供が認知機能テストでより高い点数を得る傾向があるとされている。しかし魚油のサプリなどを使った無作為での実験ではこの結果は実証されていない。また、魚の摂取量だけでなく、それと関連する他の条件があって初めて認知力の向上に結びつくとする意見もある。

 果物の実験に関しても「果物の摂取が大切なのかもしれないし、果物を多く摂取する女性は最初から健康を意識した生活をしているのかもしれない」と、ハーバード・メディカル・スクールなどで栄養学等を教えるエミリー・オーケン教授は指摘する。ただ、研究成果はいろいろな可能性が含まれているので「より深く調査を進める価値がある」とも同教授は話す。

目を疑うほどの研究成果

 マンダネ氏の研究は、2008年から2012年にかけてカナダの妊婦3600人を対象として行われた。世帯収入や母親の学歴、ビタミン剤の摂取、母乳で育てたかどうかなどを考慮した他、妊婦の食事に関しては内容やカロリー、そして栄養のバランスなども調査。生まれてきた子供が1歳になる時点で、妊婦の食事が知能発達にどのような影響を与えるのかを研究した。

 知能の発達レベルと栄養の項目を調べていくと、果物との関連が目についたという。「ここまで大きな違いが見られることに一番驚いた」と話すマンダネ氏は、分析官からデータを渡された時に再検査をするよう指示したという。なお実験においては、どのタイプの果物が摂取されたかについての情報はあまり含まれていなかった。

 乳児の知能発達を調べるにあたっては、広く使われているベイリー・スケールが使用された。テストではコップの下に隠されたコインを子供が覚えているかどうかや、ブロックの積み上げなどを通して検査を実施。その結果、妊娠中の母親が推奨量よりも多くの果物を摂取しているほど子供のテスト結果も高く、その傾向は果物摂取量が推奨の6倍から7倍あたりに到達するまで見られたという。

ハエを使った実証実験では

 この結果を受けてマンダネ氏は同僚のフランソワ・ボルダック准教授に実証を依頼。小児神経科を専門とするボルダック氏はハエの遺伝子を操作し、それが記憶力や嗅覚力にどのような影響を与えるかを研究している。研究室には30万匹以上のミバエを飼っているため、大学では「ハエの人」としても知られる存在だ。

 野生のミバエは台所に残された果物などを食べるが、研究室ではイースト菌、砂糖、そしてトウモロコシ粉から作られたゼリーが与えられている。しかし実験のため、今回は繁殖や排卵期間中の一部のハエと幼虫にはオレンジジュースとトマトジュースが与えられた。

 ボルダック氏はミバエに2種類の香りを嗅がせ、そのうちの一つを嗅がせたあとは軽い電気ショックを足から流した。2分後、再び同じ2種類の臭いをミバエに嗅がせてその行動を観察。また長期に渡った記憶力も確かめるため、その翌日にも同じ実験を行って反応を試している。なおミバエは寿命が一カ月程度とされる。

 実験の結果、親バエがオレンジジュースやトマトジュースを与えられたハエはテストで30%高い学習能力を見せ、長期的な記憶力では通常の餌を与えられたハエの2倍も高い数値を出したという。

 「一般的なハエの記憶力と学習能力を向上させた実験は、今回が初めてだと思う」と話すボルダック氏。「生まれた後に果物を摂取させても知能に向上は見られなかったので、脳が発達する段階での摂取が何かしら影響をしているはずだ」と同氏は言う。

 マンダネ氏は今後の研究を通じ、具体的にどの栄養素や果物が知能の向上に影響を与えているのか明らかにしてきたいとしている。また乳児が成長するにつれて母親が妊娠中の果物摂取による影響がどう変化するかも観察する予定だ。現在、同氏は妊娠中のラットに果物入りのジュースを与え、生まれてくる子供にどのような影響が生じるのかを調べているという。現時点で得られたデータは自分たちの主張に沿ったものだが、他者に検証してもらい発表するまでの段階には至ってないという。

 妊娠中にどの栄養素を取ることが神経の発達に最適なのかを調べ、知的発達障害のリスクがある子を救うような研究もしたいとマンダネ氏は言う。

 「知能指数(IQ)が100から105に上がってもあまり違いはない。しかし85から90になるのは、とても大きい違いだ」と同氏は指摘。「それが可能になれば、社会に大きな違いをもたらすことができると思う」と話している。

By DANA WECHSLER LINDEN