おかずを増やしたら、子供が賢くなる!(前編) | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 川島教授が研究を重ねてきた「朝食と脳の働き」において、新たな事実がわかってきました。その結果が物語るのは、子供の将来に責任を負う親たちへの警告なのです。

 朝食はただ食べればいいわけではなく、おかずが重要で、品目が多いほど、子供の脳はよく働き、よく成長する。朝食の主食もパンより、お米のごはんを食べている子供のほうが知能指数が高く、脳の神経細胞層の量も多い。

 小学生のころから平日のほぼ毎日、朝食をとる習慣を身につけていた大学生は、そうでない大学生と比べ、偏差値65以上の大学に第1志望で現役合格している割合が高い。

 こうお話しすると、読者の皆さんの中には「明日から朝食を変えなければ」と思われる方もいるでしょう。ただ、私がこの稿で訴えたいのは、朝食の向こうにある親の意識の問題です。日々勉強に励む子供たちが、本人の努力以外の要因で報われないようなことがあるとすれば、第一の原因は生活習慣にある。それが最も表れるのは朝食の習慣であり、子供の生活習慣に関しては、すべて親の責任であると自覚できるか。私の訴えに耳を貸していただけるのであれば、この稿を読み進めることを心からお勧めします。

 子供たちの脳や心の働きについて研究を続けてきた私が、なぜ朝食に注目したのか。子供の生活習慣が端的に表れる食習慣を見ると、小中学生の場合、昼食はおおむね給食があり、学校のコントロール下にあります。夕食は日本ではむしろ食べ過ぎが危惧されるほどで、おおかた心配はないでしょう。これに対し、家庭によってばらつきが生まれるのが朝食です。これは家庭の経済環境の違いには関係ない。親の意識の差によるものです。朝食の習慣の違いが子供の脳や心の働き、すなわち、認知機能にどんな影響を及ぼすか。まさに注目すべきテーマでした。

 認知機能を点数化できるテストを用い、朝食を食べたときと食べないときとを比べると、同じ人でも午前中の脳の働きに1~2割の得点差が表れます。ただ、これは想定の範囲内です。予想外だったのは、おかずの重要性でした。

 それは偶然の発見でした。2007年、私は共同研究の相手である製薬会社の研究員が書いた論文のデータを見て、目を疑いました。おにぎりだけ、つまり、炭水化物だけの朝食と、主食、主菜、副菜が揃った朝食をそれぞれ食べたときを比べると、同じ人でも午前中の認知機能テストで得点差が生じ、おにぎりだけのときには低い成績が出ていたのです。

 脳のエネルギー源はブドウ糖であり、デンプンや糖類など、消化されてブドウ糖になる炭水化物を摂取すれば、脳は働く。それが従来の常識だったため、そのデータが信じられませんでした。ただ、私も気になるデータを持っていました。文部科学省と共同で全国の小中学生の認知機能を検査した際、生活習慣も調べたところ、朝食でおかずをとっていない子供が約4割もいたのです。典型はパン1枚か菓子パン1個でしょう。もし、製薬会社のデータが本当なら、憂慮すべき事態です。私は独自に検証を始めました。

 脳の活動を調べるのに、脳の中の血流の速さから、活発に活動している場所を画像にして映す脳機能イメージング研究という方法があります。これを使い、大学生たちに協力してもらい、朝食として栄養バランスのとれた流動食と、同量同カロリーの砂糖水をそれぞれ摂取したときの認知機能テストの結果を比べてみました。確かに、流動食をとったときのほうが、脳は活発に働いていました。

 文科省との先の共同調査の結果も再解析してみると、やはりおかずの重要性が浮かび上がりました。小中学生1400人を対象にした調査では、「朝食でおかずを食べていない人」は各種の認知機能テストのいずれも成績が悪かった(調査1)。また、1年後に同じテストを再度受けてもらった調査で、「朝食でおかずを食べている人」は品数が多ければ多いほど1年間で点数が伸びていました(調査2)

 保護者の意識調査も行いました。「朝食の栄養バランスが大事であると知っているか」との問いに対し、「知っている」と「おおむね知っている」を合わせても、6割にしか達しませんでした。これは、子供たちの生活習慣の調査結果と見事に符合しました。つまり、朝食はエネルギーさえとればいいと考えている親が確実に約4割いて、ほぼ同じ割合の子供たちが、朝食でおかずを食べていない。これが日本のまぎれもない現実だったのです。

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川島隆太 
東北大学加齢医学研究所教授。1959年千葉県生まれ。東北大学医学部卒業。同大学院医学系研究科修了。スウェーデン王国カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学講師などを経て現職。研究テーマは、脳機能イメージング、脳機能開発。近著に『元気な脳が君たちの未来をひらく』(くもん出版)。