[シリーズこころ]統合失調症(6)精神科入院 謎多いけが | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 今年1月3日、千葉県の精神科病院に入院していたCさん(33)が、一般病院に救急搬送された。首を骨折して神経が切れ、呼吸が困難な状態だった。精神科病院の院長は、家族に「自傷行為が原因」と説明した。
 それまでCさんは、保護室に隔離されていた。Cさんの姉は監視モニターの記録ビデオを院長らと早送りで確認し、病院職員のおかしな動きに気づいた。
 同月1日のおむつ替えの場面。過去の治療の副作用で、首が前傾したまま床に横たわるCさんの頭部を、職員が脚で踏みつけた。姉はすぐに指摘したが、院長の説明はなかった。
 搬送時、Cさんの顔には大きなあざがあった。「おむつ替えの時にできた擦過傷」と院長は言うが、救急搬送された病院の整形外科医は「打撲、挫傷」とし、首の骨折は「顔面に強い力が加わったため」とみる。
 Cさんは大学3年の時、友人関係に悩んでうつ状態になった。病院で処方された抗うつ薬を服用中、家の前で他人を突然殴り、統合失調症と診断された。
 抗精神病薬を飲み始めてすぐ、首などの筋肉が硬直して曲がるジストニアなどの副作用が強く表れた。大学病院に移っても診断は変わらず、首が前傾したまま動かなくなった。脳を刺激する電気けいれん療法も受けたが、「言語不明瞭」「会話不成立」「自力排便困難」などの状態は悪化し続けた。
 Cさんが負傷した精神科病院は、3か所目の医療機関だった。主治医は2006年の初診の際、「統合失調症ではなく、発達障害かもしれない」と診断を見直した。抗精神病薬の処方もやめた。
 発達障害の人は、周囲と円滑な関係を築きにくいのが特徴だ。薬に過敏な傾向があり、抗精神病薬は少量でも副作用が強く出る。飲み続けると、認知能力などに影響が出かねない。Cさんの認知能力は薬をやめても戻らず、11年秋から入院していた。
 院長は取材に対し、「当初は自傷行為と家族に説明したが、ビデオには自傷行為の場面はなかった。原因は不明だ。職員は脚を使ったが、頭を少し抑えた程度だ。ビデオにはCさんがその後立ち上がる場面が映っており、骨折の原因とは考えていない」と説明する。
 Cさんは現在、自発呼吸が少し戻ったが、手足はほとんど動かない。病院側の説明に納得できない姉は「弟の人生は精神科医療でめちゃくちゃにされた。同様の悲劇を繰り返さないためにも、この問題を広く社会に訴えたい」と話す。(佐藤光展)