現代うつ病Q&A【第1回】うつ病は「心の病気」?~高い再発率~ | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 近年、うつ病患者の増加が社会問題になっています。うつ病など「気分障害」の患者数はここ10年で急増し、100万人を超えています。年間3万人以上の自殺者のうち、うつ病が原因だと判明した人は2010年に7000人を超え、状況は深刻です。

 果たして、うつ病とはどんな病気なのでしょう? どうすれば再発は防げるのでしょう? 最近よく聞く「軽症うつ」とは? 治療・予防法、復職へのプロセスは?―。こうした疑問を解消しつつ、うつ病への理解を深めるため、メンタルケアの最前線に立つ専門医に具体的な事例を交えて解説してもらいます。お話は「とわたり内科・心療内科」(名古屋市)の唐渡雅行先生です。

【唐渡先生プロフィール】
唐渡雅行氏(とわたり・まさゆき)

総合内科、精神科、心療内科などの専門医。1961年、徳島県生まれ。名古屋大医学部卒。内科医として病院勤務の後、同大大学院で白血病の研究に取り組み、1992年から3年間、英国がん研究所に留学した。帰国後、名古屋大医学部第一内科で勤務したが、「うつ病患者が安心して受けられる医療の受け皿が少ない」との危機感から精神医療の世界に転じ、2004年に「とわたり内科・心療内科」を開設。内科専門医としての経験を生かし、患者の心と体を統合的に診察し続けている。著書に「うつ病診療最前線」(時事通信社)などがある。

実際には「脳の病気」
 ―最初に「うつ病」について概要の説明をお願いします。まず、うつ病の原因は何だと考えられているのでしょう。

 うつ病は「心の病気」と言われますが、実際には「脳の病気」です。原因はまだ分かっていません。「この薬を飲むとうつ病が改善される」ことが分かり、ならば「セロトニン」といった脳内ホルモンがうつ病の原因ではないか…。そんなプロセスで病気の研究が進んできました。

 ただ、セロトニンを増やせばうつ病が治るかといえば、そうではありません。がんの発生は複数の遺伝子の変異が原因になっていますが、うつ病もおそらく同じで、単一の要因だけでは説明できないのです。脳のどの辺りに異常があってこの病気になるのか、本当の意味で分かるのはずっと先のことでしょう。

 ―病気として特徴的なことはありますか。

 早期の段階で診察に来て、ありとあらゆる治療を行い、回復したから治ったのかと言えば、必ずしもそうではありません。何度も再発し、慢性化することが実に多い病気なのです。治ったと思っても、またひょこっと顔を出すので、根気強く付き合っていかなければなりません。

 一方、がんや糖尿病などの患者は、うつ病の合併がしばしば起こります。パーキンソン病の患者の3~5割はうつ状態とも言われています。このため、医師が診察するときは、うつ病だけでなく、さまざまな角度から注意深く患者と向き合う必要があるのです。
病気の客観視が必要 ―完治するのでしょうか。

 うつ病によって低下した判断力や決断力などの高度な認知機能が回復し、仕事や趣味、家族などへの興味・関心が罹患(りかん)前と比べて9割以上戻ったと感じられれば、初めて「寛解」(治癒)したと言える―。私はそう考えています。

 ただ、1年から1年半、服薬を続けても、必ずそのレベルに達するとは限りません。本当の意味で「その人らしさ」が戻ってくるまでに、2~3年かかる場合もあります。

 また、うつ病を含む「気分障害」の中でも、うつ状態と躁(そう)状態を繰り返す双極性障害はさらに時間が掛かり、年余にわたって病気と付き合わなければいけないこともあります。

 ―治療法は。

 治療としては、まず薬物療法で気分を安定させ、非薬物療法(心理療法、運動療法など)で下支えをするのが一般的です。

 私は認知療法(認知行動療法)を早くから重視し、導入しています。患者さん自身が病気や自分の状況を客観的に理解し、偏った考え方に陥りそうになったときに、自分で回避する方法を身に付けることが必要だからです。

 また、血液検査を行い、そのデータを参考にすることがあります。例えば、女性の患者さんで貧血が強い場合、貧血の治療をすれば格段に活動性が向上します。ほかにも、生活・栄養指導を行うことで、うつ病の症状が改善されることもあります。漢方薬を併用したり、アロマセラピーやリフレクソロジーなどを行ったりもして、患者さんに合うと思われるものは基本的に全部やっています。

(次回へ続く)