エコカー時代、消えた恩恵…止まらぬモータースポーツ撤退 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 【底流 ニュースの裏側】国内自動車メーカーのモータースポーツ事業の縮小が止まらない。ホンダは、F1と並ぶ世界最高峰の四輪レース「インディカー・シリーズ」の日本開催に今年で幕を下ろした。平成20年のF1撤退に続く縮小を嘆くホンダファンは少なくない。日産自動車が電気自動車(EV)レースの開催をぶち上げたが、「エキゾーストノート」の爆音がとどろかないレースにファンが集まるのか疑問視する声もある。国内メーカーは、車の魅力を伝えるレース活動への意欲をすっかり失ってしまったのか…。


 ◆ホンダのDNA

 「ホンダの元気なイメージがなくなることをすごく憂慮している」

 9月18日にツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)で行われた「インディジャパン」決勝戦。観戦に訪れた伊東孝紳社長は、苦渋の表情でこう漏らした。

 ホンダは15年からグループ会社のモビリティランドが運営するツインリンクで同レースを開催してきた。だが、事業としては一度も黒字を出せず、モビリティランドは「昨今の経済環境の中、継続して開催することは事業として極めて困難」との判断を下さざるを得なくなった。

 ホンダには、レースに情熱を燃やした創業者の本田宗一郎氏のDNAが脈々と受け継がれてきた。昭和39年に日本メーカーとしてF1に初参戦。活動休止時期はあったが、72回の優勝を果たした。

 今後もインディに参加するチームへのエンジン供給は継続する。レース事業にかかわってきた社員は「エンジンの開発を通じて参加できる。F1撤退とは違う」と話したが、寂しさは隠せない。

 ◆テストコースで十分

 レース活動からの撤退は、ホンダだけではない。平成14年にF1参戦したトヨタ自動車は、悲願の優勝を果たせないまま21年に活動を終了。市販車をベースにし販促効果が大きかった世界ラリー選手権(WRC)やダカールラリーでも撤退が相次ぎ、世界最高峰の四輪レースから日本メーカーのチームはほとんど姿を消した。

 背景には、バブル崩壊後の国内景気の長期低迷やリーマン・ショックといった厳しい経済環境がある。ただ、こうした経済的要因以外にも、メーカー各社が急速にエコカーへとシフトしたことも大きい。自動車ジャーナリストの桃田健史氏は「自前のテストコースがあれば十分で、実験場としてのレースの意義が希薄になった」と指摘する。

 メーカーはレーシングカーの開発で培った技術を市販車にフィードバックしてきた。だが、電気モーターを組み込んだハイブリッド車(HV)やEVといったエコカーに開発の中心が移るなか、レース活動で得られる技術的なメリットは小さくなっている。

 さらに消費者のニーズもエコカーが主流となり、「レースを通じてスポーツカーの販売を増やすというイメージ戦略が通用しなくなった」(桃田氏)。

 ◆“無音”EVレース?

 最高峰から撤退が相次ぐなか、日産は来年にも米国でEV「リーフ」をベースにしたレースを開催する計画だ。F1を統括する国際自動車連盟(FIA)も、EVレース開催を検討しているという。

 日産はエコカーの主役と位置づけるEVの普及に弾みをつけることを狙っており、すでにレーシング仕様の「リーフNISMO RC」も開発した。車体はカーボン製で軽量化を図り、最高速度は時速150キロ。日産の担当者は「(騒音が少ない)EVは市街地でもレースが開催できる」と、新たなモータースポーツとしての可能性を強調する。

 だが、桃田氏は「企業イメージの向上にはつながるが、レースファンをつなぎ留められるとはとても思えない」と冷ややかだ。

 自動車評論家の松下宏氏も「損得勘定だけで経済合理性ばかり追求すると、モータースポーツの文化が失われてしまう」と、危惧する。レースを通じて、車の魅力や走る楽しさを伝えることをやめてしまえば、若者の車離れに拍車をかけ、自分で自分の首を絞めることにもなりかねない。

 「ホンダがやめてしまうことは他社がやめるよりも重大だ。次世代の主力エンジンを開発する意気込みで、またレースに力を入れるべきだ」

 自動車評論家の徳大寺有恒氏は奮起を促す。

 伊東社長も「熱い戦いを繰り広げ、スポーティーなイメージを底上げすることが急務」と、再チャレンジを否定しない。

 ホンダのレーシングマシンが再びうなりをあげるのをファンは待ち望んでいる。(大坪玲央)