口の機能回復(6)「けいれん性」声が詰まる | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 携帯電話販売店の運営会社に勤める千葉県市川市の田中美穂さん(44)が、のどに異変を感じ始めたのは、十数年前のことだった。

 カラオケが歌いづらく、仕事で使う英語も話しにくい。でも、医者には「何でもない」と言われた。

 2005年、明らかに声が詰まるようになった。特に最初の音が出にくい。「いらっしゃいませ」が「…ぃ…あっあい…せ」のようになる。当時は販売店での接客業務だったが、目の前の客と話せない。

 地元の耳鼻咽喉科に通院し、「ポリープがある」と言われて薬を飲んだが、効果はない。06年、いつもと別の医師が「けいれん性かも」と都内の病院を紹介、そこで初めて「けいれん性発声障害」と診断された。

 新宿ボイスクリニック院長で東京医科大教授の渡嘉敷亮二さんによると、この病気は意に反して声帯が過剰に締まり、声が詰まったり、絞り出すような声になったりする。原因はよく分かっていない。声帯は見た目には正常で、「精神的なもの」と誤解されやすい。

 「耳鼻科医もよく知らない病気。精神的緊張も悪化の要因になるので、けいれん性かどうかの見極めは難しい」。患者は国内に約2000人。診断がついていない人を含めればその10倍いると渡嘉敷さんはみる。

 発声訓練で改善する人もいるが、有効な治療法の一つは、ボツリヌス毒素の注射。毒素により声帯の筋肉をまひさせて緩ませる。効果を保つため、約3か月おきに注射をする。1回2万~3万円程度の自費診療で、行う医療機関は少ない。

 もう一つの治療法は手術。声帯の筋肉の一部を切る方法と、声帯を広げて固定する方法がある。固定する方法は、だめなら元通りに戻せるのが長所だが、のどに傷痕が残る。

 田中さんは2年ほどボツリヌス毒素の注射を受けた。話せた喜びは大きかったが、効果が切れやすく、治療の時間や費用がかさんだ。そこで手術を決意し、09年1月、東京医大病院で声帯の筋肉を一部切除した。

 その結果、言葉に詰まることはほとんどなくなり、仕事に大きな支障はなくなった。とはいえ、「話している時は『遠泳』しているように苦しいし、疲れる。でも元々話すことは好き。会社の理解のもとで仕事は続けていきたい」と話す。

 ネット上で、この病気で恋愛も就職もできない若者が多いことを知った。09年4月に患者会「SDCP 発声障害患者会」を設立、患者同士の交流会や講演会を開いている。(藤田勝)

(2011年8月29日 読売新聞)