震災関連病(2)塩分過多、不眠 血流悪く | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 宮城県気仙沼市内に住んでいた女性(64)は、今年3月の震災で、経営していた民宿と自宅が流され、市内の親類の家に避難した。

 食糧が十分になく、近所の住民らで食材を持ち寄り、おにぎりなどを作ってしのいだ。1日1食は、支援物資として配給されたカップ麺。度々襲う余震で、眠れない日々が続いた。

 4月半ば、仙台市内に住む長女を頼って転居し、食事や睡眠も十分にとれるようになった。ところが、動悸(どうき)や目まい、吐き気などの症状が表れた。6月初めの夜には、体に力が入らず手足も動かせなくなった。

 東北大病院に救急搬送され、X線写真を撮ると、肺に水がたまっていた。心不全の典型的な状態だった。

 1995年に発生した阪神大震災の調査では、心筋梗塞など心臓病の死者が、震災後3か月間で前年同期の1・45倍、脳梗塞などの脳卒中も1・87倍と増加。不眠や運動不足、即席麺など塩分の多い食事で、血圧の上昇や、血液が固まりやすくなることなどが原因と指摘された。

 東北大病院の循環器内科で、今回の震災後1か月間に緊急入院した心不全の患者数は29人。震災直前1か月(9人)の3倍を超えた。うち28人は、避難所生活を送るか、自宅の電気や水道が止まるなど、日常生活に大きな影響を受けていた。

 女性は2007年に、同病院で「心房細動」と診断されていた。心臓上部の心房が不規則に震える不整脈だ。その後は、薬を飲んで不整脈の発作は抑えられ、元気に過ごしていた。

 1か月半の避難生活の間も薬は飲んでいた。しかしカップ麺のスープも飲み、塩味の強いスナック菓子も食べていた。今回の心不全は、こうした食生活や不眠などの疲労が蓄積して心房細動が再発、血流が悪くなって起きたと考えられた。

 「大変な時にぜいたくは言っていられない。塩分が多くても、食べられる時に食べなければと思った」

 女性は緊急入院した約2週間後、不整脈の原因となる心臓上部の筋肉を電気で焼き切る治療を受け、7月初めには退院した。

 東北大の心不全の患者は減少傾向にあるが、現在でも月3、4人はいる。足の静脈に血栓ができて肺の血管に詰まる肺塞栓症(エコノミークラス症候群)や、心筋梗塞の発症も目立つ。

 同科教授の下川宏明さんは「高血圧などの持病のある人は特に注意が必要だ。塩分を控え、適度な運動と十分な水分補給を心がけてほしい」と話している。

(2011年7月18日 読売新聞)