震災関連病(1)大量の粉じん 肺炎急増 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 宮城県石巻市に住む男性(58)は、東日本大震災の津波で自宅の1階が浸水した。避難所で生活したが、家財道具の片付けや、ヘドロまみれの部屋の掃除のために、毎日自宅に通った。

 4月半ばからは自宅で暮らし始めたが、せきやたんに悩まされた。風邪薬を飲んでも良くならない。数十メートル歩くだけでも息苦しく、5月半ばに石巻赤十字病院を受診。感染性の肺炎が疑われ緊急入院し、抗生剤を投与された。しかし息苦しさなどは治まらなかった。

 入院から10日後、内視鏡などを使って肺の組織を取り出し、顕微鏡で調べる検査を受けた。診断は、感染性の肺炎とは異なる「器質化肺炎」。この肺炎には抗生剤は効かない。

 津波が被災地に運んだヘドロには、津波がのみ込んだ車や船の油、産業廃棄物などの有害物質が含まれている可能性があり、乾燥すると大気中に粉じんとして浮遊する。男性も自宅の掃除などで、これらを吸い込んだとみられた。

 同病院呼吸器内科に、震災当日から2か月間で緊急入院した患者は316人。昨年同時期の3倍だ。このうち肺炎は190人に上り、前年の4・3倍に急増した。気管支ぜんそくの発作も3・6倍の25人だった。

 同科部長の矢内勝さんは「発症原因の詳細な分析は難しいが、患者の大幅な増加には、ヘドロやがれきの粉じんが影響しているとみていいだろう」と指摘する。

 器質化肺炎の治療には、炎症を抑えるステロイド(副腎皮質ホルモン)の飲み薬が使われる。男性もこれを飲んで徐々に回復し、近く退院する予定だ。

 同病院は5月と6月の2回、医療従事者や復興作業の関係者を対象に、マスクの装着法などを学ぶ講習会を開いた。使ったのは、粉じんを95%以上カットする「防護マスク」。コンビニエンスストアなどで販売されている不織布マスクでは粉じんを防げないからだ。防護マスクは大手ホームセンターなどで入手できる。

 今後、夏休みを利用して復興作業にあたるボランティアらが、十分な防護をせずに入るケースも想定される。北里大学助教(公衆衛生学)の太田寛さんは「大量の粉じんが発生する場所にはできるだけ近寄らないこと。がれきの撤去や片付け作業を長時間行う時は、必ず防護マスクを着用すべきだ」と話す。

 東日本大震災による生活環境の変化やストレスで、元気な人が病気になるケースが増えている。こうした「震災関連病」の現状と対策を報告する。

(2011年7月15日 読売新聞)