http://www.asahi.com/health/news/OSK201106080186.html
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iPS細胞(人工多能性幹細胞)を効率よく作り、がん化するおそれのある不完全な細胞の増殖を抑える遺伝子を、京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授や前川桃子助教らのグループが見つけた。山中教授が発見した従来の4遺伝子の一つと置き換えると、iPS細胞の割合がマウスは約20%からほぼ100%、ヒトの細胞では約10%から約50%と純度が5倍になった。山中教授は「魔法の遺伝子だ。臨床応用に向け大きな前進になる」と話している。
使ったのは、受精前とその直後の卵子で現れる「Glis1」という遺伝子。前川助教が、産業技術総合研究所のデータベースにある1400余りの遺伝子の働きを調べて見つけた。
iPS細胞はこれまで、体の細胞に4遺伝子を入れてつくっていた。その一つ「c―Myc」はがん遺伝子として知られ、iPS細胞の作製効率を大きく高める一方、iPS細胞になり損ねた不完全な細胞も増やしてしまい、再生医療への応用の壁になっていた。
マウスの実験で、4遺伝子を入れてできた細胞群のうち、iPS細胞の細胞群の割合は約20%だったが、c―Mycの代わりにGlis1を使うと、3回の実験いずれでもほぼ100%になった。ヒトの細胞でも、4回の平均が約10%から約50%に上がった。