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より
関西医大健康科学センター(大阪府枚方市)の肥満外来で、担当する同大教授の木村穣さんが最も注目するのが、臨床心理士による初回の「性格診断」だ。
たとえば昨日紹介した大阪府内の女性(58)は「好きなことは進んでやるが、頑張り過ぎるタイプ」。そこで、好きなものの中から、プールと食事の記録(レコーディング)を選んでもらい、取り組んでいる間は、やり過ぎないよう配慮した。
頑張り過ぎる人の中には「全か無か思考」の人もいる。やる時は徹底的にやるが、少しでも食べ過ぎたり、運動を休んだりすると、とたんにやめてしまう。高い目標を立てがちなので、低めの目標を立て、続けることの大切さを理解してもらうように励ましていく。
「忙しくてできない」と思いこんでいる人は、1日の生活を一緒に振り返って時間を探す。
「通勤時に朝夕15分多く歩けば、1日100キロ・カロリー消費する。後は食事を1日140キロ・カロリー減らせば、月に1キロ・グラム減量できる」と健康運動指導士の宮内拓史さん。食事の記録が続かない人は、携帯電話で食事を撮影してメールで送ると、管理栄養士がカロリーを計算して返信するサービスもある。
そして、肥満の人に多いのが「他人の意見に合わせようとするタイプ」。人に合わせようという気持ちが強く、提示された減量計画をこなそうとするが、結局できなくてやめてしまう。
体重が100キロ・グラムあった30歳代の女性は、性格テストでこのタイプと診断された。そこで、最初は運動目標を提示せず、朝起きてから夜寝るまでの行動を細かく表に書き、何ができるか話し合った。「車で行っていた買い物を自転車にする」と提案した時、「これならできそう!」と表情が明るくなった。
自転車通いがしばらく続くと、「片道は自転車を押して行く」ようになった。やがて、自発的に歩いて買い物に行くようになり、5分遠回りするようになった。最終的に30キロ・グラム以上、減量できた。
「『こんな工夫で体重を落とせるんだ』という患者さん自身の気づきを引き出すことが大切」と木村さん。
この肥満外来での指導は半年間。週に1回程度通院し、食事か運動の指導に加え、臨床心理士によるカウンセリングを受ける。
冒頭の女性(58)は「1週間の取り組みを報告するとほめてもらえる。これで良かった、来週も続けようという気になった」と笑う。
(2010年5月21日 読売新聞)