摂食障害からの回復-回復者へのインタビュー調査に基づく社会学的考察- | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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http://kaken.nii.ac.jp/ja/p/06J08157

拒食や過食、嘔吐を主訴とする摂食障害はわが国でも若い女性を中心に蔓延している。しかし、有効な治療方法は確立されておらず、回復についての考察も極めて少ない。回復についての考察は、停滞している治療状況にも貢献しうることから、これまで、回復者を対象とした質的調査に基づき、社会学の観点から回復についての考察を行ってきた。そして、以下の知見を得た。摂食障害から回復するためには、乗り越えられるべき2つのポイントがあることがわかった。第1に、減食や絶食、嘔吐をやめ一定量の食事をすること。これは、「行動の水準」での変容であり、自然に達成されることもあれば、意識的な食事訓練によって達成されていることもあった。第2に、痩せていなければいけないという強い痩せ願望が緩和されること。これは、「認識の水準」での変容である。認識の変容の背景としては、回復過程において心身二元論的な身体観・自己観が改められている点、社会的な評価を追い求める業績主義的な基準から主観的な満足感や快適さを重視する内的基準へと、行為の準拠枠が変化している点が確認できた。以上の2つのポイントは、日常生活における様々な相互作用の積み重ねによって継起的に達成されていた。本研究では、対象者を回復者に限定したインタビュー調査を国内で初めて実施するとともに、不可視のものとされてきた回復過程を解明した。摂食障害からの回復とは、精神医学や臨床心理学の対象とされてきたことから、個人の心理的な変化、成長や成熟などの発達課題の達成、心理的なトラブルの除去、家族関係の改善などの結果として理解されている傾向がある。こうした先行諸研究対して、本研究では、回復までの一連のプロセスを、社会的相互作用の観点から把握し直した。