病に負けぬ うどん職人 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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より

 約5千人に1人の割合でかかるとされる難病・クローン病を患う岐阜市のうどん職人坂崎英司さん(41)が、うどん小売店を市内で始める。15年の闘病を乗り越え、たどりついた「名古屋打ち」という製法を手がける。開店は約1カ月後だ。「丹精込めためん作りで、街の身近なうどん屋になりたい」と準備に余念がない。(贄川俊)

 岐阜市の柳ケ瀬通りから梅林公園の方へ歩いて約5分。殿町2丁目の築30年以上たったアパートの1階に店はある。5年前まではブティックだったという約7坪の空き部屋を改装した。ただ、ガラス戸いっぱいに開店を知らせるチラシが張られているだけで、まだ店名看板もない。
 坂崎さんのうどん作りは1日がかりだ。小麦粉に水や岩塩を入れ、20分間こねた生地を1時間半寝かせ、30分ほど強く足で踏む。さらに寝かせること2時間。弾力が出てきた生地を手で円を描くように押し込む作業を2度繰り返す。名古屋打ち特有の「まるけ」という工程で、うどんのコシが増すという。もう一晩寝かせてようやく完成だ。
 ゆで時間は約20分。太さ約4ミリのめんはゴムのような弾力があり、かむと口の中でプチッとはじけるように広がる食感が特長だ。
 笠松町出身の坂崎さんは高校を卒業後、愛知県内の自動車工場に就職した。社会人として順調に生活をしていた25歳の時、突然激しい腹痛と下痢に襲われた。体重は1カ月で10キロも減り、すぐに入院。原因不明の腸などの炎症が続くクローン病と診断された。
 鼻からチューブで栄養をとるなどして体調は回復し、3カ月後に退院した。おかゆやじゃがいも中心の食事制限で症状を抑えていたが、仕事の疲労から3年後に再び入院。3カ月間の入院で会社からは解雇を言い渡された。その後は、アルバイトをしても体調不良で長続きせず、入退院を繰り返す日々が続いた。
 もともと、ほとんどうどんを食べない「ラーメン党」。転機は2年前、たまたま入った大垣市の讃岐うどん屋でそのおいしさに感動したことだった。「食べる喜びを思い出させてくれた。どうせなら自分で作ってみようと思った。病気も気にしないでいいし」と振り返る。
 早速このうどん屋に飛び込んで修業を頼み込み、約3カ月間うどん作りを習った。知人のつてを頼って、愛知県内のうどん職人から「名古屋打ち」も教わった。以来、毎日自宅でうどんを打ち、食べながら研究を続けた。
 開店を決めたのは今年に入ってから。家族や友人の助けもあって、7月から本格的な出店準備を始めた。アルバイトでためた約100万円も出店資金につぎ込んだ。今は毎朝5時に店に来て、仕込み作業が続く。
 整腸剤などの薬は今も欠かせない。食事制限もある。病状の不安はつきまとうものの、坂崎さんは言う。「うどん作りは今しかできない。自分みたいな病気の人でも、安心して食べられるうどんを作りたい」
 新たな挑戦の場となる「手打ち麺(めん)工房 さかざき」の開店は10月20日。店頭で1食150円前後で小売りする予定。すでに岐阜市又丸柳町の「天ぷら元(はじめ)」で扱っている。同3、4日にある同市美殿町の秋祭りでも無料で試食できる場が設けられる。問い合わせは同1日以降、「さかざき」(058・377・3119)へ。

■クローン病
 大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍(かい・よう)が起こる炎症性腸疾患の一つ。腹痛や下痢に加え、発熱や下血、体重減少、貧血などの症状も見られる。完治に至る治療法は見つかっておらず、症状緩和のための栄養療法、薬物療法、手術を組み合わせ、医師は患者の診療にあたる。病状が安定しても、繊維や脂肪などは食事制限が必要とされる。国内の患者数は約2万7千人で、男性は20代前半、女性は10代後半が発症のピークという。