シリーズこころ パニック障害③動悸への恐怖断つ治療 | 勇者親分(負けず嫌いの欲しがり屋)

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 千葉県の会社員A子さん(30)は3年前、美容室で上半身が急に熱くなった。すぐに治まったが、翌日、自宅で激しい動悸(どうき)、息苦しさなどに見舞われ、「死んでしまうのでは」と焦って救急車を呼んだ。以来、人込みなどで発作が頻発するようになった。

 心療内科でパニック障害と診断され、抗うつ薬SSRIを飲み始めた。発作を抑える作用があるが、服用をやめると再発する可能性があり、服用が長期に及ぶことが少なくない。将来、妊娠を考えるA子さんは「できれば薬を減らしたい」と考えていた。

 翌年受診した千葉大学病院で、認知行動療法に取り組むことになった。物事の受け止め方を変える心理療法で、同病院では、患者約6人を医師2人が担当し、毎週1回、1時間半の治療を計10回続ける。

 同大学神経情報統合生理学教授の清水栄司さんは「患者は、突然の体の異変に驚き、死の恐怖を募らせて、さらに大きな発作に陥っていく。認知行動療法は、この連鎖を断ち切るのが目的」と話す。

 患者の多くは、動悸が増すと恐怖を感じる。脈を速くしないため、運動を控える人もいるほどだ。

「緊張時や運動中に脈が速まるのは当然」と頭で分かっていても、激しい感情に関係する脳の扁桃(へんとう)体が、動悸が起こると反射的に恐怖心を呼び起こしてしまう。そのため、脳に焼き付いた「動悸=恐怖」のイメージを、「動悸=体の自然な反応」に戻さなければならない。

 そこで行われるのが、発作に似た状態をあえて引き起こす現実暴露だ。患者たちは病院近くの坂道を駆け上がり、「脈が速くなっても死なない」ことを繰り返し体感する。

 息苦しさにつながる過換気症候群にも、現実暴露を行う。通常の呼吸は1分間に15回前後だが、1分間に30回呼吸してもらう。すると、血液中の二酸化炭素が肺から過剰に排出され、めまいや指先のしびれなどが起こる。

 患者が、この状態でさらに呼吸を続けると息苦しさが増す。しかし、実際は肺は空気で満ち、酸素も十分取り込まれているため、今度は逆に呼吸を止めてもらう。すると、普段は20秒ほどで苦しくなる人でも、1分以上も楽に止めていられることに気付き安心する。

 バスや電車の乗車も行い、治療終了時には、半数の患者の症状が改善する。A子さんは発作がなくなり、薬も要らなくなった。

 清水さんは「認知行動療法は、薬物治療よりも再発が少ない。患者が最初から認知行動療法を選択できるように、実施施設を増やす必要がある」と話す。