『dahsyat』 = ダーシャ。
その名前を伝えた時、
あきらかに医者の表情が変わったのだ。
2015年5月。
STARMARIEが5人になって、
もうすぐ1年が経とうとしていた。
初めてのアニメ主題歌
「メクルメク勇気!」のレコーディング、ミックスが終わった頃。
インドネシア・ジャカルタにいた。
海外展開に重きを置き始めていた頃、
初めて訪れたその大都市で、最後に待っていた不運な出来事。
異文化に触れるには好奇心、
その国の食を理解するには、少しの”勇気”が必要。
メインイベントであるジャパンフェス『ENNICHISAI 2015』のステージは終了し、
ジャカルタに少しは慣れた、STARMARIE一行。
しかし、
慣れとは、時に悲劇の序章となる。
開放的なカフェ、
にこやかなインタビュアーに導かれるように、始まった取材。
脇役として、もてなされたドリンクは色彩も豊か、
いかにも南国で提供されそうなトロピカルなドリンク。
サスペンスドラマのように、にこやかな犯人。
しかしまだその時、彼の狂気を誰も想像さえしていなかった。
名前は、氷。
その少し前、STARMARIEに朗報が届いていた。
インドネシアの国民的人気番組『dahsyat』への出演が急遽決まったのだ。
出演は翌日、早朝。
インタビューは終わり、夜を迎える。
後に、何回も異国の夜を超えてきたSTARMARIEでも、この日の夜は忘れられない。
犯行に及んだのは、その日の深夜。
徐々にメンバーの体を蝕んでいく、
トロピカルなドリンク、その氷は夜を待ち、牙をむいた。
食中毒と化し、いよいよ我々の前にその正体を現したのだ。
紫乃の容態が激しく変化する。
1人では立てない。
通訳の渡辺さん(楓ではない)とともに、未明にジャカルタの病院へ。
残る4人のメンバーは支度をし、
国民的人気番組『dahsyat』のスタジオへ出発する。
4人で出演することになるのか。
それより、無事に帰国できるのか。
高谷と渡辺さん(楓ではない)は紫乃につき、
松本さん(元気かな)と木田さんは残る4人とテレビ局へ向かっていた。
高谷チーム。
病院に着くと、医師の診察が始まる。
何度も書くが、紫乃は1人では立てない状態だった。
通訳の渡辺さん(楓ではない)が居てくれて本当に良かった。
紫乃はまだ出演をあきらめていない。
何せ、千載一遇のチャンスなのだ。
しかし、思いに反して一向に症状は良くならない。
焦る気持ちを、時計の針が残酷に煽る。
渡辺さん(楓ではない)が、
『dahsyat』
その名前を伝えた時、
あきらかに医者の表情が変わったのだ。
詳しくは覚えていないが、
『dahsyat』に出るのか?
お前たちは何者だ?
それならとっておきのやつがあるぞ。
きっと、そう言ったに違いない。
いや、そう言っていない限り、
そのあとの奇跡と辻褄が合わないからだ。
そう、その医者は、
『dahsyat』に出るほどすごいやつなら、
治してやるさ、と動き出したのだ。(多分)
『dahsyat』という魔法を、
僕たち日本人は知らない。
あとで聞いたら、
日本で例えると「笑っていいとも」と「ミュージックステーション」を足したような番組だよ、ということ。
今でもその例えが合っているか分からないし、
少なくともタモリさんは居なかった。
しかし、
その名前を伝えた時、
あきらかに医者の表情が変わったのだ。
そこで施された処置により、
紫乃が、立った!
紫乃が立ったのだ。
一体、この世にはどんな選択肢が残っているんだろう、
と、不思議で少し怖くなったりもしたが、
その頃には、テレビ局へ向かうタクシーに乗っていた。
AM 7:00頃だったと思う。
しかしメガシティ・ジャカルタ。
恐ろしい渋滞だった。
このままでは、とても間に合わない。
出演時間は、刻々と迫る。
走る車のスピードと反比例し、
メクルメク輝くチャンスが、どんどん我々から離れていくようだった。
きっと、その頃4人では、
1人少ないパフォーマンスのシミュレーションに入っていたことだろう。
しかし奇跡は起きる。
車に乗らない、東京じゃない人にはさっぱり分からない話をするが、
足立区から渋谷区に向かう渋滞、
渋谷区を抜けて、世田谷区を越えたくらいで、
渋滞はなくなる。
ジャカルタでも同じ。
上りから下りに変わったのだ。
タクシードライバーの耳にはタコができていた。
『dahsyat』『dahsyat』『dahsyat』。
病院で紫乃を蘇生させたあの魔法の言葉を。
そこでも使い続けていた。
スピードは上がる(常識の範囲で)。
出演の30分前には、
STARMARIEは元どおり5人のファンタジーユニットになっていた。
そして生放送を迎える。
映像は、こちら。
https://www.youtube.com/watch?v=k6GgAjEzkp4
見終わったらもう一度思い出してほしい。
1時間前まで、紫乃は病床にいたのだ。
最高のパフォーマンスを披露した。
そして、帰国する頃には、時間差で皆、食中毒。
帰国の翌日に撮影した作品が、こちら。
https://www.youtube.com/watch?v=ynZPlFouX3U
情勢が不安定な昨今。
早く収束しますように。
苦しい時は、
『dahsyat』 = ダーシャ。と叫ぼう。
さぁ、どんな未来が待ってるんだろうね!