その日は朝から大雨洪水警報発令中であった。
呑気な僕は、電車が止まっていることを知る由もなく
9時すぎに目を覚ました。
う~ん。かなり熟睡できたな。
よし、よし。
今日はピアノコンクール。
いつになく落ち着いている。
僕は、ゆっくりと朝食をたべて会場へ向かう。
自宅から会場までは2時間は要する。
偶然にも雨が上がり、電車が動き出したばかりであった。
俗にいう「晴れ男」である。
電車の中、この3年間の様々な思いが交差する。
僕はどうしても
東京予選を突破しなければならない。
その理由は4つあって、
1つは
今年は沢山の友達がコンクールに参加している。
コンクール仲間、サークル仲間、ブログ友達、
中には僕の演奏を聴いて参加を決意した人もいる。
大分予選、福岡予選、神戸予選、名古屋予選、東京予選1stで
友達は皆、予選を突破していた。
僕だけ落ちるわけにはいかない。
2つは
僕は特別なレッスンを受けている。
常識では考えられないレッスンを受けている。
ピアノを40歳から始めて、3年そこらで「幻想即興曲」を
弾くには普通のレッスンでは不可能である。
僕の先生は、プロのピアニストであり
ウィーンと日本を行き来されている。
僕は巡り逢いのチャンスを逃さなかった。
本場のレッスンを受けているのだ。(←後日記載)
先生の看板を汚すことは許されない。
何より親身になって、レッスンしてくれた。
3つは
僕は「幻想即興曲」を愛している!
だからどうしても「幻想即興曲」を奏でたい!
中途半端な演奏をするくらいなら、最初から挑戦しない。
テクニックは10年かかるかもしれない。
でも、
心を込めて弾けば、きっと音になって返ってくる。
去年だって、審査員の先生に情熱は届いた!
絶対にできる。自分ならできる。必ずできる!
仕事以外の時間は、ほぼピアノに注いだ!
2ヶ月前からスポーツジムも辞めて、ピアノに集中した!
チャンスがあれば人前で弾いて場数を踏んだ!
どの場に行っても、周りの人達はピアノが上手い。
僕とは比較にならない。そこには圧倒的な差がある。
社会経験を積んで、常に自分と戦ってきたけど
初めて周りを意識した。
何度も挫折しそうになった。
こんな時、ブログの仲間が何度も助けてくれた。
僕にしか出せない音があるはず・・・ と、
会場ではすでにD部門の演奏が始まっていた。
僕はE部門
徐々に緊張感が増してくる。
落ち着け!
いよいよE部門
ステージ裏で肩を回す、指をほぐす!
前の人の演奏が終わった。
鼓動が高鳴る。
最初の音を頭の中で連呼する「ソの#」
ヤバい。緊張している。
深く深呼吸する。
間違えたっていい!失敗は恐れない!
いざ出陣!
前奏文が読まれる。。。
椅子の高さは、一発で合わせた。
「ソの#。。 このオクターブで合ってる?」
駄目だ。動じるな! 自分を信じればいい。
よし!
前半の走り出しが緊張で不安定になっている。
ヤバい。とにかく落ち着け!
中間部に差しかかる。
気持ちを込めろ!ここでピアノと会話ができなければ
俺にこの曲を弾く資格はない!
そう。そうだ、音をよく聴け。
ピアノからのメッセージが聴こえてきた♪
Bechsteinが奏でる、美しい旋律
何という美しい音なのだろう。
⿻⋆✩⃛*ೃ.⋆⿻
いよいよ後半に差しかかる
未完成の部分だけど、恐れるな!
失敗してもいいから駆け抜けろ!
気持ちを込めろ!
途中ミスもあったが何とか弾ききった
思いが強すぎたせいか、手足が僅かに震えていた。
納得がいく演奏はできなかったが、これが実力。
自分ができることは全てやった。
不思議と結果はどうでもよくなっていた。
予選通過者発表の時は妙に落ち着いていた。
自分の番号が呼ばれた時も落ち着いていた。
でも、
最後にオーディエンス賞(聴衆者の投票)で
自分の名前が呼ばれた。
「え? なんで?」と叫んでしまった。
こんなに嬉しいことはない。
感謝の気持ちで一杯だ
本当にありがとう。
でも、なぜあの演奏が・・・?
疑問が残る。
でも、はっきりと言えることがある。
僕はピアノをはじめて本当に良かった!
さぁ~て、全国大会に向けて頑張るぞぉ~!
あ、4つめの理由は
またあとで・・・