大切なパートナーとの関係を公的に示す「パートナーシップ制度」。

 

導入する自治体も増え、これを利用して「ひと安心だ」と感じている方も多いかもしれません。

 

でも・・・、

 

「本当にこれで十分なのかな?」

「万が一の時、病院や施設で対応してもらえるか?」

「将来、相手の親族と揉めたら?」 

 

等々、こうした事態に対処できると自信をもって言えるでしょうか?

 

まず端的にお伝えしますが、残念ながら自治体の用意する「パートナーシップ制度」を利用する “だけ” では、それらの事に対処できない、対応してもらえないのです。

 

何故なら、自治体の用意しているパートナーシップの「制度」というものに期待する「安心」と、制度が実際に持つ「効力」との間に、決定的な“ズレ”があるからです。

 

そしてそのズレこそが、あなた(またはあなたのパートナー)が人生の危機において「対処できない、対応してもらえない」最大の原因となります。

 

今日は、なぜ制度だけでは不十分なのか、その「法的効力の限界」と、本当の意味で未来の不安を「安心と笑顔」に変える唯一の方法について、深掘りします。


 

 

【1】制度の「証明力」の正体:「制度<契約<婚姻届」

 

 

 

まず、衝撃的な事実からお伝えします。 パートナーとの関係性を示す「証明力」には、明確な序列があります。

 

端的に言って、その強さは 「制度 < 契約 < 婚姻届」 の順です。

 

「え?自治体が認めてくれるのに、私的な契約より弱いの?」 そう思われたかもしれません。

 

その通りです。なぜなら、「何を」証明しているかが根本的に違うからです。

 

 

▼制度が証明するもの =「事実」 

 

パートナーシップ制度とは、あくまでも 「その自治体が2人の主張(パートナーであるという事実)を任意で受理した」 ものに過ぎません。

 

これは、国が定めた法律(民法)ではなく、その自治体内でしか通用しないローカルルールです。 そのため、この制度によって生じる効力は、「行政サービス上の“配慮”を求める『通知書』」 の役割しかありません。

 

「配慮」ですから、強制力はありません。

 

法律婚による配偶者が持つ相続権や配偶者居住権、相互扶助の義務等々、一切発生しないのです。

 

 

▼契約が証明するもの =「法的責任」

 

一方で、「パートナーシップ契約(かつそれを公正証書にしたもの)」は、全く性質が異なります。 

 

これは、当事者2人の合意に基づき 「私たちは、法律婚に準じる形で、互いに法的責任(相互扶助の義務など)を負います」 という、法律的な「立場・権利関係」を能動的に創り出す行為です。

 

この「法的な効力」の違いが、人生のどんな場面で“効いて”くるのでしょうか?


 

 

制度では“効かない・効果がない”2つの決定的危機

 

制度が持つ「配慮を求める力」は、平時においては制度を利用した自治体内で(病院の面会や携帯の家族割など)では有効に使える“場合”があります。

 

しかし、人生の重大な危機、特に「命」と「別れ」が関わる場面では、この制度は効力を発揮しないケースが多いのです。

 

 

危機1: 🏥 病院・施設での対応(命の危機)

 

「パートナーが意識不明に。手術の同意を求められた」 

 

この緊急時に、制度の証明書だけでは、「法的な親族」の壁を超えることは極めて困難です。

 

(ただし、病院によって扱いは様々で、パートナーシップ制度の証明書があれば対応してくれる病院もありますが、現状、少数派です)

 

なぜなら、病院が最も恐れるのは「訴訟リスク」だからです。

 

親族が「なぜ血縁のない他人に同意させた!」と異議を唱えた場合「制度の証明書」には、病院を守る法的拘束力がありません。

 

ここで「任意後見契約(公正証書)」を結んでいれば、医療同意の「法律的な権限」はあります。

 

しかし、それだけでは不十分です。

 

病院は、「なぜこの人に権限が?」という論理的根拠を求めます。

 

この時、「パートナーシップ契約(基本契約)」で定めた「相互扶助の義務」こそが、

 

「私たちは単なる他人ではなく、法律婚に準じる法的責任を負った間柄である。ゆえに、この権限行使は正当だ」

 

と主張できる、強力な「論理上の盾」となるのです。

 

自治体が用意するパートナーシップ制度では、この「盾」の役割を果たせないのが現状。

 

(だからこそ、特に緊急搬送等の場面ではパートナーシップ制度だけでは、法律婚の配偶者と同じような対応をしてもらえないケースが多い訳です)

 

 

危機2: 💔 関係解消時の紛争(別れの危機)

 

「別れることになった。一緒に買った家具や、共同生活中の貢献はどうなる?」

 

あまり考えたくないかもしれませんが、これは「命」と同じくらい重大な「財産」の危機です。

 

制度利用だけの場合、関係解消時の清算ルールは「ゼロ」です。

 

法律婚のような財産分与請求権は一切ありません。話し合いがこじれれば、そこは法的なルールのない、泥沼の紛争の場となります。

 

「パートナーシップ契約(基本契約)」の重要性は、ここでも発揮できます。

 

契約によって、様々な「別れる際の清算ルール」をニーズによって諸々定めることができます。

 

これも病院対応のように「契約によって達成できる、最大限の予防」なのです。


 

 

“能動的な用意”こそが、不安を「安心と笑顔」に変える

 

あなたが抱える漠然とした不安。

 

残念ですが、それはパートナーシップ制度の利用では解消されないケースがほとんど。

 

しかし、「パートナーシップ契約」であれば、 法律婚による配偶者ができる事を、自らの意思で“能動的に用意しておく” ことが可能です。

 

勿論、現行法上の限界はあり、法律婚と全く同じ法律上の立場を作る事は出来ません。

 

2人の関係性はそれぞれです。

 

考えやニーズもそれぞれ。

 

そうした千差万別の関係性とニーズをくみ取り、 現行法の枠組みの中でできる最大限の契約を複数組み合わせ、 法律婚に準じた法的な立場と権利関係を作る事はできます。

 

そしてそれこそが、 同性カップルの方々が抱える不安を “安心と笑顔”に変えていける方法なのです。