涼風にきゆるを雲の宿りかな

 

わが事と泥鰌の逃げし根芹かな

 

啄木鳥や枯木を探す花の中

 

精霊も出て仮りの世の旅寝かな

 

有明に振り向きがたき寒さかな

 

着て立つて夜の衾もなかりけり

 

大原や蝶の出てまふ朧月

 

うづくまる薬缶の下の寒さかな

 

飛びこんだままか都の杜鵑

 

寒き夜や思ひつくれば山のうへ

 

なき名きく春や三年の生きわかれ