貌・通刊二号 秋季号
逃げていく彼の背後にある言葉
虎二ツ草原駆けるめくらまし
奉納死朝粥喰ふて豆つくり
踊る手の真向かひの黒死館
人買ふて南蛮渡来と更けるあり
収むれば匂ふかひとり黄金百合
月あればをんな手渡し影つくり
実も皮もすべて喰はぬ林檎喰ふ
手汚れの金糸雀墜ちむ波止場まで
納屋に寝るをんなに猫は蝉捕ふ
身猛りて飛び越ふ大河消えにけり
愛撫す鷹ひとつなり綺想曲
啼犬の闇触れて逃ぐ魂遊び
雲ながる日の午睡かな罪煮つむ
喉病みし白魚とほく沈む日よ
波寄せのをのこくちよせ始むらむ
揚羽蝶殺せよ空は黒うてや
東記(後記)
切り裂かれて 喉は 白き紙 より 出血過多の 午後 となり
広場の 孤独 人生から 言の葉 が 貴方を 生む 玉子焼きの
不快が 夏 より秋 と 過ぎる 日々よ 裏切られる ことも
裏切る こともなしの 地獄 遊び が 貴方を 一個の 猥雑と
化学反応 し て も ひとたびの 意が 生かして しまう事よ
糞に 微笑んでも 灰だらけの 魔神で 在る 物 埋葬 儀式が
貴方を あらがうことだに 再生する 朝 匂いが 聴こえる 蜂
が 耳から 頭へ と 音を 飲んで 居る 横丁 通行 不能
の 密室 直線が 輪より 遥かの 彼方 心臓を 刺す 夕陽に
歩いて 居る 息切れて 終わる 影深く 剥げ 落下 の
満腹感 味噌 で在る 誌に 商売 する 栄光の 囲れ
人が 距離 計る 情事亜よ 連軸器 握る 将来など 皆
思い 入れて ない 現在が 過去も 未来も 含む 口よ 何故
なら 島が 見つめられ て 発情を 気付かぬ からだ 陸
に 海に 島に 火星に 同一地点 の 安否 を 拒絶して 情
より 離脱す 日々 の 水道管 災害 転がす 工作の 難句す
る 眼 白く 病む 青空 に 救われる 我等 苦悶 ある 蟻
の歩行が 構造する 垂直 上下 する悦び 民 告知の 予知
から 内乱 変色 して 殺す あり 手よ 進む 鴉 欠伸 の
内服液 距り 在る こと で ある 港が 暮れ の 麗人たる
ことよ 手が 汚れて 白く 燃える (善之)